下腿三頭筋の役割や鍛えるメリットは?具体的なトレーニング方法も解説
公開日:2025.05.07
文:内藤 かいせい(理学療法士)
ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋は、どのような働きがあるのか詳しく知りたい方はいませんか?
この筋肉は腓腹筋とヒラメ筋から構成されており、それぞれ役割が異なります。
運動のパフォーマンスやバランス能力を向上させるためには、下腿三頭筋のトレーニングが重要です。
この記事では、下腿三頭筋の解剖学的な知識や効率的な鍛え方をご紹介します。下腿三頭筋について知ることで、適切なトレーニングを実施できるでしょう。
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下腿三頭筋とはどんな筋肉?
下腿三頭筋とはどのような筋肉なのでしょうか。ここでは、下腿三頭筋の特徴を詳しく解説します。
腓腹筋とヒラメ筋を総称したもの
下腿三頭筋は、「腓腹筋」と「ヒラメ筋」の2つの筋肉を総称したものです。どちらも下腿後面につく筋肉ですが、起始・停止や作用が異なります。腓腹筋とヒラメ筋の概要を、以下の表にまとめました。
【腓腹筋】
起始 | ● 外側頭:大腿骨外側上顆 ● 内側頭:大腿骨内側上顆 |
---|---|
停止 | 踵骨腱(アキレス腱)となり、踵骨隆起後面の中部に付着 |
作用 | 足関節の底屈(かかとの挙上) 膝関節屈曲 |
支配神経 | 脛骨神経(S1、S2) |
【ヒラメ筋】
起始 | 腓骨頭、腓骨後面 脛骨のヒラメ筋線、内側縁 腓骨・脛骨間のヒラメ筋腱弓 |
---|---|
停止 | 途中で踵骨腱(アキレス腱)となり、踵骨隆起後面の中部に付着 |
作用 | 足関節の底屈(かかとの挙上) |
支配神経 | 脛骨神経(L2〜S2) |
どちらも足関節の底屈に働く筋肉で、ジャンプやダッシュなどの動作で使用しています。腓腹筋は大腿骨が起始となるため、膝関節屈曲の作用もあります。
腓腹筋とヒラメ筋の特徴の違い
腓腹筋とヒラメ筋の起始・停止や作用のほかに、筋線維にも違いがあります。
腓腹筋は、白筋(速筋)線維と赤筋(遅筋)線維がほぼ半々の割合とされているのが特徴です。そのため、瞬発的な動きと持続的な動きの両方に対応しています。
一方で、ヒラメ筋に多く含まれているとされているのが、赤筋線維です。
赤筋線維は持久力に優れているため、立位姿勢の保持や歩行時の姿勢制御などに関係しています。
このように、腓腹筋とヒラメ筋はそれぞれ異なる特徴があるため、下腿三頭筋としてさまざまな動作に関わっているのです。
下腿三頭筋を鍛える3つのメリット
下腿三頭筋を鍛えるメリットは、おもに以下の3つです。
2. バランスの改善
3. むくみの予防
ここでは、それぞれのメリットを解説します。
1. 運動のパフォーマンス向上
1つ目が、運動のパフォーマンス向上です。下腿三頭筋は足関節の底屈に働く筋肉で、スポーツではダッシュやジャンプなどの動きに関わります。
下腿三頭筋がうまく働くことで、蹴り出しが強くなり、瞬発的な動きをしやすくなるのです。
とくに、陸上競技やバスケットボールなど、素早い動きが求められるスポーツでは下腿三頭筋が重要となります。普段から運動している方は、下腿三頭筋のトレーニングを定期的に行ってみましょう。
2. バランス能力の改善
2つ目は、バランス能力の改善です。下腿三頭筋は、足関節をコントロールして立位姿勢を維持するための重要な筋肉です。
この筋肉が衰えると、バランス能力が低下して転倒やふらつきのリスクが高まる恐れがあります。
とくに高齢者の転倒の原因には、下腿三頭筋の筋力低下が関係しているとされています。
高齢者が転倒すると、骨折をはじめとした重大なケガにつながる可能性もあるでしょう。
下腿三頭筋を鍛えることで、立位時の安定性が高まり、バランス能力の改善が期待できます。
3. むくみの予防
3つ目は、むくみの予防です。下腿三頭筋には、下肢の血液循環を助ける「筋ポンプ作用」があります。
下腿三頭筋が働くことで血管が収縮・弛緩して、ポンプのように血液が循環しやすくなるとされています。
この作用がうまく機能することで、下半身に水分が溜まりにくくなり、むくみの予防につながるのです。
座り仕事が多い方は下腿三頭筋の働きが低下しやすいため、水分が足にたまってむくみやすくなります。
むくみが生じやすい方は、下腿三頭筋のトレーニングがおすすめです。かかとの上げ下げの運動は座った状態でも気軽に行えるので、ぜひ試してみましょう。
下腿三頭筋を鍛える筋トレ方法
運動のパフォーマンス向上やむくみ予防のためには、下腿三頭筋を鍛えることが重要です。
ここでは、下腿三頭筋の筋トレ方法をご紹介します。
カーフレイズ
下腿三頭筋は足関節底屈に働くため、かかと上げによるトレーニングがおすすめです。
カーフレイズのやり方
2. 手すりやイスに軽く手を添える
3. つま先を前向きにして、かかとをゆっくり上げる
4. かかとを上げきったらゆっくりと下ろす
5. 3〜4の手順を15〜20回×2〜3セット行う
かかとを上げる際は重心を前に移動しすぎないように注意してください。
シーテッドカーフレイズ
シーテッドカーフレイズとは、座った状態で行うかかと上げのことです。このトレーニングでは腓腹筋が弛緩しやすいため、ヒラメ筋を中心に鍛えられます。
シーテッドカーフレイズのやり方
2. できるだけかかとを上げる
3. ゆっくりかかとを下ろす
4. 2〜3の手順を20回×2〜3セット行う
気軽に行えるトレーニングなので、仕事中や休憩中に定期的に行うのもおすすめです。
アンクルホップ
アンクルホップとは、かかとを上げつつジャンプをするトレーニングです。瞬発的に力を入れる必要があるので、腓腹筋が優位に刺激を入れられます。
アンクルホップのやり方
2. 足を肩幅程度に広げてかかとを上げる
3. 膝を軽く曲げてジャンプする
4. かかとを浮かせながら着地する
5. 3〜4の手順を10〜15回×2〜3セット行う
トレーニング中は、かかとを床につけないように行いましょう。
下腿三頭筋のストレッチ方法
下腿三頭筋の柔軟性を高めるために、ストレッチも継続して行いましょう。ここでは腓腹筋とヒラメ筋のストレッチ方法をご紹介します。
腓腹筋のストレッチ方法
ここでは、腓腹筋のストレッチの方法についてみていきましょう。
腓腹筋のストレッチのやり方
2. 片足を後ろに引く
3. 重心を前方に移動して引いた側のアキレス腱を伸ばす
4. 20秒ほどアキレス腱を伸ばしたら反対の足で行う
膝を曲げると腓腹筋がゆるみやすくなるため、引いた足は伸ばした状態をキープしましょう。
ヒラメ筋のストレッチ方法
ここでは、ヒラメ筋のストレッチ方法についてみていきましょう。
ヒラメ筋のストレッチのやり方
2. 立てた側の足裏全体を床につける
3. 少しずつ重心を前方に移動させて、立てた側の足を背屈させる
4. できるだけ背屈させた状態を20秒ほどキープする
5. 反対の足で行う
足を背屈させる際は、かかとを浮かさないように注意してください。
下腿三頭筋の特徴をおさえておこう
下腿三頭筋は腓腹筋とヒラメ筋からなる筋肉で、足関節の底屈に働きます。下腿三頭筋を鍛えることで、スポーツのパフォーマンスやバランス能力の向上、むくみ予防につながります。
これらの筋肉のトレーニングやストレッチをする際は、腓腹筋とヒラメ筋の特徴をおさえたうえで実施することが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、下腿三頭筋を効率的に鍛えてみましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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