その背中の痛みは「ぎっくり背中」かも?発症原因や改善方法をご紹介
公開日:2025.05.11
文:内藤 かいせい(理学療法士)
なにかの拍子で、突然背中に強い痛みを感じる方もいるのではないでしょうか。
その痛みは、もしかしたら「ぎっくり背中」かもしれません。ぎっくり背中はぎっくり腰と同じように、急に痛みが現れるものです。
この記事では、ぎっくり背中の原因や発症時の対応、予防法をご紹介します。
どのような点に注意すべきかを知ることで、ぎっくり背中の早期の改善や予防が期待できるでしょう。
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ぎっくり背中とは?
ぎっくり背中とは、突然背中に激しい痛みが現れる状態のことです。
ぎっくり背中は、急な動作によって背中の筋肉や筋膜(筋肉を包む膜のこと)が損傷し、炎症が起こることで痛みが生じます。
症状の程度には個人差があり、軽い痛みで済むこともあれば、立ち上がれないほどの激痛をともなうこともあります。
発症後は身体を動かすごとに鋭い痛みが走るため、日常生活の動作にも支障をきたすことも少なくありません。
ぎっくり背中による痛みは一過性で、1〜2週間程度で軽快しますが、場合によっては長引くケースもあります。
ぎっくり背中が起こりやすい4つの原因
ぎっくり背中は、どのようなことがきっかけで発症するのでしょうか。ここでは、おもな原因について解説します。
1. 重いものを持つ
1つ目は、重いものを持つことです。
重い荷物を持ち上げる際、背中の筋肉に大きな負担がかかるため、筋肉や筋膜が傷ついてぎっくり背中を発症しやすくなります。
急いで引っ越しの荷物を運んだり、重たい買い物袋を一度に持とうとしたりするときには注意が必要です。
2. 身体を急にひねる
2つ目は、身体を急にひねることです。身体を勢いよくひねると、背中の筋肉や筋膜が引き伸ばされて損傷する原因となります。
普段の生活でみられる、身体をひねる動作としては、以下のとおりです。
● 後ろから声をかけられて、上半身だけで振り向く
このような動作によって瞬間的に背中に負担がかかり、ぎっくり背中の発症につながります。
3. 運動不足
3つ目は、運動不足によるものです。運動不足の状態が続くと背中の筋肉の血行が悪くなり、少しずつ柔軟性が低下してしまいます。
筋肉が硬くなると、急に引き伸ばされたときに傷つきやすくなり、ぎっくり背中を引き起こします。
このような問題を解消するためには、運動習慣をつける、ストレッチで背中の筋肉の柔軟性を高めるなどの対策が重要です。
4. 姿勢の悪さ
4つ目は、姿勢の悪さによるものです。人の背骨は緩やかなS字カーブを描いており、筋肉に余分な負荷をかけずに頭や上半身の重さをバランスよく支えています。
しかし、猫背やストレートネックなどの不良姿勢が続くと、背骨のS字カーブが崩れて背中の筋肉に負担がかかりやすくなります。
この姿勢が長時間続くと、背中の筋肉は常に緊張して凝り固まった状態になるのです。その結果、ふとした動作で背中の筋肉が損傷しやすくなり、ぎっくり背中の発症につながります。
ぎっくり背中とぎっくり腰の違い
ぎっくり背中とぎっくり腰は、どちらも突然起こる激しい痛みが特徴で、大きな違いとしては痛みの部位が異なる点です。
ぎっくり背中は、おもに背中の筋肉や筋膜が損傷することで起こる症状です。
一方で、ぎっくり腰は腰や骨盤周辺に痛みが集中します。発症原因もぎっくり背中と同じように、重いものを持ったり、急にひねったりすることで腰の筋肉が損傷することがあげられます。
とくに腰は負荷がかかりやすい部分なので、ぎっくり背中を発症した方はぎっくり腰にも注意が必要です。
ぎっくり背中が起きたときの対応
ぎっくり背中が発症した直後は、まず安静にして炎症をおさえることが重要です。
激しい動きは避け、背中に負担がかからないようにしましょう。炎症や痛みが強い場合は、タオルで包んだ保冷剤や氷嚢(ひょうのう)で患部を冷やすことがおすすめです。
痛みが軽減してきたら、無理のない範囲で少しずつ身体を動かしましょう。ただし、以下のような症状がある場合は、医療機関の受診を検討してください。
● 手足のしびれや力の低下がある
● 痛みで眠れないほど症状が重い
これらの症状がある方は、別の病気を発症している可能性もあるので、医療機関を受診して医師に相談してみましょう。
ぎっくり背中の発症・再発の予防法
ぎっくり背中の発症や再発を予防するためには、どのような対策が効果的なのでしょうか。
ここでは、具体的な予防策について解説します。
ストレッチ
まず、ストレッチで背中の筋肉の柔軟性を高める方法があげられます。背中の筋肉の柔軟性が高まれば、急な動作による損傷を防ぎやすくなります。
おすすめの背中のストレッチ方法は、以下のとおりです。
肩甲骨まわりのストレッチ
2. 反対の手で曲げた腕を引き寄せる
3. できるだけ腕を引き寄せ、肩甲骨まわりの筋肉を伸ばす
4. 伸ばした状態を20秒ほどキープする
5. 反対の腕で行う
背中のストレッチ
2. 両手を横に広げる
3. 両膝をつけた状態で、右方向に傾ける
4. できるだけ傾けたら、左方向に傾ける
5. 3〜4の手順を繰り返し行う
適度な運動
適度な運動を行うことは、ぎっくり背中の発症予防につながります。運動不足によって筋肉が凝り固まると、ふとした動作で背中を動かした際にぎっくり背中を引き起こしやすくなります。
このような状態を防ぐためにも、適度な運動によって血流を促進し、筋肉の柔軟性低下を予防することが重要です。
おすすめの運動は、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動です。有酸素運動は全身の血行を促進し、筋肉の柔軟性を高める効果が期待できます。
運動は軽い負荷でもよいので、まずは自分が継続できるペースで行ってみましょう。
姿勢の改善
普段の姿勢を意識することも、ぎっくり背中を予防するポイントです。
猫背をはじめとした不良姿勢が続くと、背中の筋肉に余計な負担がかかり、ぎっくり背中を引き起こしやすくなります。
できるだけ正しい姿勢を意識して、背中の筋肉に負担がかからないようにしましょう。
パソコンやスマートフォンを見る機会が多い方は、以下のポイントが重要です。
● できるだけ画面を目線に近づけて、顔を下に向けすぎない
● イスや机の高さを調整する
● 背もたれに背中をつける
このようなポイントを意識することで、少しずつ姿勢の改善につながります。
ぎっくり背中を引き起こさないように対策しよう
ぎっくり背中は筋肉や筋膜の損傷によって起こる症状で、重いものを持つ、急に身体をひねるなどがきっかけで発症します。
ぎっくり背中を発症すると、激しい痛みが現れやすく、生活に支障をきたしやすくなります。
ぎっくり背中を予防するためには、筋トレやストレッチなどを習慣にしつつ、普段の姿勢を見直すことが大切です。
ぜひ今回の記事を参考にして、発症予防のために対策に努めましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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