お尻の痛みは筋肉痛だけじゃない?おもな原因や対策、予防法を解説
公開日:2025.05.15
文:内藤 かいせい(理学療法士)
お尻の筋肉に痛みが現れるようになり、どんな原因があるのか気になる方もいるのではないでしょうかお尻の筋肉の痛みは筋肉痛だけでなく、神経の問題や病気によって生じることもあります。
この記事では、お尻の痛みが現れる原因や対処法をご紹介します。原因と対策を知ることで、お尻の痛みの改善につながるでしょう。
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お尻の痛みは筋肉によるもの?おもな原因とは
お尻が痛むきっかけは筋肉だけでなく、さまざまな要因が考えられます。ここでは、お尻の痛みの具体的な原因について解説します。
お尻の筋肉痛
お尻の痛みが生じる原因の一つに、筋肉痛があげられます。筋肉痛とは、筋肉に負荷がかかって傷ついた状態のことです。
お尻には「大殿筋(だいでんきん)」と呼ばれる大きな筋肉があり、歩行時やジャンプなどのさまざまな動作で活用しています。
お尻に筋肉痛が起こる原因として、運動不足の方が急に運動をはじめたときや、普段以上の強度で運動したときなどがあげられます。
とくにスクワットやランニングなど、下半身に負荷のかかる運動をした後に痛みを感じることが多いでしょう。
梨状筋症候群
梨状筋(りじょうきん)症候群とは、お尻の深部にある「梨状筋」という筋肉が硬くなることで起こる症状です。
梨状筋は、骨盤から大腿骨に向かって走る小さな筋肉のことです。梨状筋の下には坐骨神経(ざこつしんけい)と呼ばれる神経が通っています。
梨状筋が硬くなると坐骨神経が圧迫され、お尻や足に痛み・しびれなどの症状が現れやすくなるのです。
梨状筋症候群を発症する原因として、長時間のデスクワークや不良姿勢によって梨状筋への負担が強まることがあげられます。
背骨の病気
お尻の痛みの原因は、背骨の病気によって発症することもあります。ここでは、お尻の痛みと関連する背骨の病気について解説します。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨の間にあるクッションの役割をする椎間板(ついかんばん)が突出する病気です。
突出した椎間板が神経を圧迫することで、お尻から足にかけて痛みやしびれが生じることがあります。
腰椎ヘルニアは、腰に負担がかかるような動作・姿勢が原因で発症しやすくなります。とくに、以下のような方は注意が必要です。
● 猫背になりがちな方
● 重いものをよく持つ方
● 前屈みの姿勢をよくする方
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管(せきちゅうかん)という背骨の神経の通り道が狭くなる病気です。
脊柱管が狭くなると、その中を通る神経が圧迫され、お尻から足にかけての痛みやしびれが生じるのです。
歩くとお尻や足が徐々に痛くなり、休むと楽になることが特徴で、この症状を間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。
腰部脊柱管狭窄症は、以下のような原因で腰に負担がかかり、脊柱管内の靭帯が厚くなることで発症するとされています。
● 肥満による体重の増加
● 加齢による変性
腰椎すべり症
腰椎すべり症とは、腰の背骨がずれてしまう病気です。背骨のずれによって神経が圧迫され、お尻に痛みが生じることがあります。
この病気も腰部脊柱管狭窄症と同じように、歩くとお尻や足が痛くなる症状が現れるのが特徴です。
背骨のずれが進行すると神経がさらに圧迫され、症状が悪化する可能性もあります。腰椎すべり症の原因は、以下のとおりです。
● スポーツや事故による外傷
● 遺伝的要因
お尻の痛みの対処法
お尻の痛みが現れた場合、どのような対処をすればよいのでしょうか。ここでは、原因にあわせた対処法を解説します。
安静にする
筋肉痛によってお尻の痛みがある場合、まずは安静にすることが大切です。無理な運動を控え、痛みのある部分を休ませることで、筋肉は少しずつ回復します。
痛みの程度にもよりますが、2〜3日安静にすると筋肉痛も落ち着くでしょう。
このときに負荷をかけると、筋肉の回復が遅れるだけでなく、症状が悪化する恐れがあります。
また、痛みが強い場合は炎症が強くなっているので、アイスパックで冷やすことも効果的です。
ストレッチをする
ストレッチもお尻の痛みを軽減する方法の一つです。とくに、梨状筋が硬くなって起こる梨状筋症候群にはストレッチがおすすめです。
ストレッチによって梨状筋の柔軟性を高めることで、神経にかかる負担が軽減されて痛みの改善が期待できます。また背骨の筋肉をほぐすことで腰の負担がやわらぎ、病気の発症予防にもなるでしょう。
梨状筋や背中の筋肉のストレッチ方法は、以下のとおりです。
梨状筋のストレッチ方法
2. 片足をもう片方の膝に乗せて足を組む
3. 足を組んだ状態で上半身をゆっくり前に倒す
4. 倒した状態を20秒ほどキープする
5. 反対の足で行う
背中の筋肉のストレッチ方法
2. おへそを見るように背中を丸める
3. お腹に力を入れつつ、できる限り丸めた状態をキープする
4. 20秒ほどキープしたら力を抜く
医療機関を受診する
お尻の痛みが1〜2週間以上続く場合や、上記の対処法を行っても改善がみられない場合は、整形外科のある医療機関の受診をおすすめします。
この場合、なにかしらの病気を発症している可能性があります。とくに、痛みに加えて足のしびれや感覚障害などの症状がある場合は、早めの受診が必要です。
医療機関へ受診したら、いつから痛みが出ているのか、どのくらいの期間痛みが続いているのかを医師に伝えましょう。
お尻の痛みがあり、自己判断での対処が難しい場合は、ためらわずに医療機関を受診することが重要です。
お尻の痛みを予防するポイント
お尻の痛みを予防するためには、どのような点を意識すべきなのでしょうか。ここでは、痛みを予防するポイントを解説します。
筋肉の使いすぎに注意する
スポーツやトレーニングをよくする方は、お尻の筋肉の使いすぎに注意しましょう。筋肉の使いすぎを防ぐためには、運動量の調整が大切です。
運動をはじめたばかりの方は、いきなり高強度の運動を行うのではなく、軽い負荷から実施してみてください。
運動中は定期的に休憩をとり、適度に筋肉を休めることも重要です。運動やトレーニング中に違和感や痛みを感じたら、すぐに中止して様子をみましょう。
正しい姿勢を意識する
正しい姿勢を保つことは、お尻の痛みを予防する方法の一つです。猫背や反り腰などの不適切な姿勢が続くと、お尻や腰の筋肉に過度な負担がかかり、痛みの原因となります。
とくに長時間のデスクワークやスマートフォンの使用は、姿勢の崩れを引き起こしやすくなります。
姿勢を正しく保つためには、背筋をまっすぐに伸ばし、お尻と腰を適切な位置に保つことが大切です。
イスに座るときは、両足を床にしっかりとつけ、骨盤を立てた状態を維持しましょう。長時間同じ姿勢を続けることを避け、1時間に1回程度は立ち上がって軽く身体を動かすことをおすすめします。
このような姿勢の意識づけは、お尻の痛みを防ぐだけでなく、腰痛や肩こりの予防にもなります。
お尻の痛みは筋肉以外の可能性も
お尻の痛みは筋肉によるものだけでなく、神経も関係している可能性があります。お尻の痛みを改善するためには、その原因を明確にしつつ、それにあわせた対策をとることが重要です。
普段から運動量の調整や正しい姿勢をとることなどを意識することで、痛みの予防につながります。ぜひ今回の記事を参考にして、お尻の痛みの改善を目指しましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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