膝が痛いときにやってはいけないことは?膝の痛みの原因やおすすめの対処法を解説
公開日:2025.05.16
文:内藤 かいせい(理学療法士)
膝の痛みが生じているときに、やってはいけないことについて知りたい方はいませんか。この時期に不適切な動作を行うと、膝の痛みを悪化させる原因となります。
今回の記事では、膝の痛みがあるときに避けるべきことや、対処法をご紹介します。
痛みを避ける方法を知ることで、膝の治療を効率的に進められるでしょう。
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膝が痛いときにやってはいけないことは?
膝が痛いときにやってはいけないことには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは具体的な内容をご紹介します。
膝を大きく曲げる動作
膝を大きく曲げる動作は、関節に過度な負担をかけ、痛みを悪化させる恐れがあります。
とくに日本の生活様式では、正座やしゃがみ込みなど、膝を深く曲げる場面が多くあります。
膝を大きく曲げる動作を繰り返し行うことで、後述する疾患の発症につながることもあるでしょう。
激しい運動
激しい運動も膝関節に大きな負担をかけ、痛みを悪化させる原因です。ジャンプやランニングなどの衝撃の強い運動を行うと、関節の組織をさらに痛める可能性があります。
これは高齢者だけでなく、若い方にとっても注意が必要です。
身体が丈夫でも、過度な運動を続けるとオーバーワークによって膝のケガにつながる恐れがあります。
重い物を持った状態での移動
重い物を持った状態で移動すると、膝関節への負担が増加し、痛みを悪化させてしまいます。これは、仕事で重いものをよく持つ方によくみられる問題といえます。
重い物を持つことは膝の負担増加だけでなく、腰痛を発症する原因にもなるでしょう。膝の負担を軽減するためには、カートや台車を利用する、多人数で持ち上げるなどの工夫が必要です。
階段の上り下りの繰り返し
階段の上り下りは、膝に大きな負荷をかける動作です。膝に痛みがある状態でこの動作を繰り返すと、症状が悪化する恐れがあります。
日常生活で階段の使用を完全に避けることは難しいかもしれませんが、可能な限り回数を減らす工夫が大切です。エレベーターやエスカレーターが利用できる場所では、それらを積極的に活用しましょう。
膝が痛む原因
膝が痛む原因として、なにかしらの疾患を発症している可能性があります。ここでは、代表的な疾患をご紹介します。
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、膝の軟骨がすり減っている状態のことです。
膝の軟骨には、関節の動きをスムーズにする、衝撃を吸収するなどの機能があります。軟骨がすり減ることで本来の機能が低下し、痛みや関節の変形などの症状が現れやすくなるのです。
発症初期では立ち上がりや歩きはじめなど、動作の開始時に痛みを感じやすくなります。
症状が進行すると膝の変形が強くなり、正座や階段の昇降が困難になり、さらに安静時にも痛みが続くようになります。
この疾患の原因として多いとされているのが、加齢による軟骨の衰えです。そのほかにも、肥満や遺伝的要因が関与していることもあります。
半月板損傷
半月板(はんげつばん)損傷とは、膝関節内にある半月板が損傷した状態のことです。
半月板は膝関節内にある半月型をした組織で、内側と外側にそれぞれ1つずつついています。
半月板には体重の負荷を分散させる機能や、関節の位置を安定させる機能があります。半月板損傷の症状は、以下のとおりです。
● 膝関節の腫れ
● 関節の引っかかり感
● 膝の曲げ伸ばしの困難さ(ロッキング)
この疾患はサッカーやバスケットボールなど、膝に負担がかかるスポーツがきっかけで発症することがあります。
膝靭帯損傷
膝靭帯損傷とは、膝の動きを安定させる役割のある靭帯が損傷する疾患です。膝関節には、以下のような靭帯がついています。
● 後十字(こうじゅうじ)靭帯
● 内側側副(ないそくそくふく)靱帯
● 外側側副(がいそくそくふく)靱帯
前・後十字靭帯は関節内についている靭帯で、膝の前後の動きを制御しています。
内側・外側側副靱帯は膝の左右についている靭帯で、側方へのグラつきを防ぐ役割があるのです。
これらの靭帯が損傷することで、痛みだけでなく関節の不安定性が現れる原因となります。
膝靭帯損傷の原因は、スポーツ外傷や交通事故などで膝に大きな力が加わることです。靭帯が損傷した状態を放置すると、膝にかかる負担が増えて、半月板損傷や変形性膝関節症につながる恐れもあります。
膝が痛い場合の対処法
膝の痛みが出ている場合、どのような対処をすればよいのでしょうか。ここでは、具体的な対処法をご紹介します。
安静にする
外傷や過度な運動によって膝の痛みが出ている場合、まずは安静にすることが大切です。膝が痛みはじめた時期は、関節内で炎症が起きている可能性があります。
このような状態で無理に膝を動かすと、症状を悪化させる恐れがあります。安静になりつつ、腫れがみられている場合はアイシングを行うこともおすすめです。
ただし、長時間の安静は筋力低下を招く可能性があるため、痛みがやわらいできたら徐々に動かしはじめることが重要です。
適度に運動をする
膝の痛みが落ち着いたタイミングで、適度な運動を習慣にしましょう。長期間の安静は筋肉が衰え、かえって膝への負担が増して痛みが悪化する原因となります。
運動で膝まわりの筋肉を強化すれば、関節の安定性が高まって痛みの軽減が期待できます。
おすすめの運動としては、スクワットや膝伸ばしなどの筋トレ、ウォーキングをはじめとした有酸素運動です。いずれも無理のない範囲で習慣にしてみましょう。
自宅環境を整える
自宅環境を整えることも、膝の痛みの改善や悪化防止につながります。とくに和式の生活様式だと膝を深く曲げる動作が多くなりがちなので、環境の見直しが重要です。
環境調整の例としては、床での生活からイスとテーブルを使った洋式の生活様式への変更です。適度な高さのイスを選ぶことで、立ち上がる際の膝への負担を軽減できます。
また、自宅に階段がある場合は手すりを設置する、段差の多い住環境ではスロープを設置するなどの工夫も考えられます。
このような環境整備で膝の負担を減らせば、痛みの軽減や悪化防止につながるでしょう。
医療機関を受診する
上記の対処をしても膝の痛みが改善しない、または悪化している場合は、整形外科のある医療機関の受診を検討しましょう。
この場合、なにかしらの疾患を発症している恐れがあります。
受診時はいつから痛みが出たのか、どのような動作で痛みが強くなるのかなど、症状について詳しく伝えることが重要です。
早期から適切な治療を受けることで、膝の痛みの改善が期待できるでしょう。膝の症状が気になる場合は、迷わずに受診することをおすすめします。
膝が痛いときにやってはいけないことを知っておこう
膝に痛みが出ている場合は、関節を大きく曲げる、激しい運動をするなどの行動は避けましょう。
また膝の痛みの原因として、変形性膝関節症や半月板損傷などの疾患が関係している可能性があります。
膝の痛みを軽減させるためには、定期的な運動や環境整備が重要です。それでも痛みが続く場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けることをおすすめします。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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