【仙腸関節を整える】仙骨ストレッチ&トレーニング方法を解説!
公開日:2025.06.09
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
「整骨院に行ったら骨盤が歪んでいると言われたけど、どうしたら良いのかわからない」「産後、骨盤の緩みが気になる」と言った悩みはありませんか。このお悩みを解決するには、仙腸関節(せんちょうかんせつ)に着目することがポイントです。
仙腸関節は腰の後ろ側にある関節で、わずかに動くと言われています。普段の姿勢などが影響し、左右差が出ていることも多々あります。
左右差があることがすべて悪いわけではありませんが、もし痛みなど症状がある場合には、対処していくことが重要です。また予防のために、仙腸関節を整えて、安定させていくことをオススメします。
そこで当記事では、仙腸関節を整えるためのストレッチ&トレーニングを紹介します。あなたのお悩みを解決するためにお役立ていただければ幸いです。
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仙腸関節の基本を簡単に解説!
骨盤は、寛骨(腸骨、恥骨、坐骨)、仙骨、尾骨から構成されます。それぞれの骨の間に関節があり、仙骨と腸骨の間にある関節を仙腸関節と言います。
仙腸関節は、とても可動域の小さい関節です。実際に研究結果より、約1~4°の前後回転、1~2mmの並進運動が正常な方の平均値だと言われています。1) この可動域が大きすぎても、小さすぎても障害を引き起こす可能性があるため、適切な可動域の範囲内で動くことが重要です。
女性の方が骨盤の歪みや緩みは起こりやすいの?
結論から述べると、女性の方が緩みやすいケースが多いです。歪みに関しては、個人差があるので一概には言えませんが、緩んだ際に左右差が起こるケースが多いので、確率としては高いでしょう。理由は主に、下記の三つです。
構造上の性差
仙腸関節は、男女で構造に差があるとも言われています。女性は骨盤が横に長い構造をしており、関節面は小さいです。一方、男性は縦長の構造をしており、関節面が大きいという特徴があります。そのため、構造上の問題からも女性の方が仙腸関節の安定性は低いことがわかります。
ホルモンバランスの変化
女性は、妊娠すると出産に向けて体の変化が起こります。特に、ホルモンバランスが大きく変化し、「リラキシン」と呼ばれるホルモンの分泌が増加します。リラキシンは筋肉や靭帯を緩めるホルモンなので、それに伴い骨盤周辺の安定性が低下しやすくなります。
分娩による影響
ホルモンの変化だけでなく、純粋に分娩による影響もあります。胎児は頭を下にして、回旋をしながら産まれてきます。そのように回旋することで、狭い骨盤内を上手に潜りながら通って、産まれてくることができるのです。そのため、その回旋の影響などから母親の骨盤の関節がわずかに動き、左右差が起こる可能性は十分にあります。
しかし産後に骨盤の左右差があるからと言って、骨盤矯正を必ずしないといけないかと言われると、そうではありません。また、産後すぐに妊娠前のズボンが履けないのは普通のことなので、焦ってダイエットをしたりしないようにしましょう。産後1ヶ月はまず安静に過ごすことが重要です。もし痛みがある場合は、無理をせず理学療法士など体の専門家に見てもらうことをオススメします。
骨盤の傾きや左右差について詳しく解説!
それでは、どのような状態になっていると骨盤が傾いていたり、左右差があるというのか、どういったパターンがあるのかというところを詳しく解説していきます。
ニューテーション・カウンターニューテーション
骨盤は、寛骨と仙骨が組み合わさっている状態です。寛骨と仙骨が安定しているポジションにあることをニューテーションと言い、不安定なポジションをカウンターニューテーションと言います。
● カウンターニューテーション:仙骨が後方に倒れ、寛骨が前傾する状態。骨盤が不安定になるため、仙腸関節に負担が掛かる姿勢です。
チェック方法
2. 骨盤の前後傾のうち、どちらかの動きが悪いか、仙骨の角度はどうかなどを確認します。
どちらが良い悪いという訳ではなく、どちらもコントロールできることが重要です。しかし、現代人の多くは、仙骨が後傾しニューテーションをとることができない方が多い印象です。その結果、仙腸関節に負担が掛かっていたり、姿勢の悪さに繋がっているケースを散見します。
アウトフレア・インフレア
具体的な基準値がある訳ではありませんが、腸骨が開いている状態をアウトフレア、内側に閉じている状態をインフレアと言います。
● インフレア:腸骨が内旋し、前方に閉じている状態。腰の横幅が狭く見える場合があります。
チェック方法:
2. ASISが外に開いている場合はアウトフレア、内側に入っている場合はインフレアの可能性があります。
この場合もどちらが良いかということではなく、骨盤の傾きを把握して、そこから筋肉のバランスを考察します。その結果、症状や筋肉のアンバランスに繋がっているのか、アプローチしていくべきなのかを考えていけると良いでしょう。
アップスリップ・ダウンスリップ
こちらも具体的な基準値がある訳ではなく、相対的に腸骨の高さの差を評価する方法です。
● ダウンスリップ:腸骨が下方にずれている状態。脚長差や足関節の不安定性やアライメント不良が関連していることもあります。
チェック方法:
● 明らかな高低差がある場合、仙腸関節のズレや筋緊張の左右差を疑います。
仙骨のねじれ
最後に、仙骨自体のねじれを評価します。仙骨が左右にねじれることで、左右の仙腸関節の動きに影響を及ぼす可能性があります。
チェック方法
● 臨床では、股関節の屈曲・外転時の制限や、腰部の回旋可動域にも影響を与えることがあります。
仙腸関節を整えるストレッチ&トレーニングを解説!
それでは、実際に仙腸関節を整えるストレッチ&トレーニングを紹介していきます。一般的に骨盤の左右差の要因になりやすい筋肉に対してのアプローチ方法を紹介していますので、もしご自身で行う場合には、一度、専門家に骨格を見てもらい、状態に合わせて行うことを推奨します。
ハムストリングスストレッチ
ハムストリングスは、腿裏の筋肉です。寛骨を後ろに傾ける(骨盤後傾させる)働きがあります。そのためハムストリングスが硬くなると、カウンターニューテーションとなりやすく、仙腸関節が緩みのポジションになっていしまいます。
股関節を引き込むように腸腰筋を使いながら、ハムストリングスの長さを確保していきましょう。

⒉ゆっくりと膝を伸ばし、腿裏が伸びるのを感じましょう。
⒊腿裏が伸びるのを感じましょう。
多裂筋トレーニング
仙骨を前傾位とし、ニューテーションを維持できるように、多裂筋のトレーニングを行なっていきます。

⒉右手、左足を伸ばします。
⒊身体が倒れないように維持しましょう。
腹横筋トレーニング
腹横筋は、お腹のインナーマッスルです。コルセットのような筋肉で、体幹部を安定させるために重要な働きを持ちます。息を吐きながら、お腹の奥の方を使うような感覚で行いましょう。

⒉遠くにあるろうそくの火を吹き消すように、細く長く息を吐きます。この時、お腹が薄くなるように意識します。
⒊感覚が入りにくい方は、息を吐くのと同時に骨盤底筋を引き上げるように意識してみてください。
クラムシェル
次に股関節の外旋筋群(梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋など)の滑走性向上、緊張緩和を目指す運動を行なっていきましょう。股関節の角度により筋肉の動員数が変わりますので、スタートポジション(下記の手順1)を股関節屈曲0度、45度、90度にそれぞれ分けて行なっていくとより効果的です。

⒉上側の腰を下に下げ、左右の骨盤の位置を揃えましょう。
⒊踵同士はつけたまま、膝を開き股関節を外旋していきます。
⒋骨盤が開かないように注意しながら行いましょう。
まとめ
今回は、仙腸関節を整える重要性やストレッチ・トレーニング方法について解説していきました。
特に女性は、構造上やライフステージの変化によって、骨盤の安定性が低下したり、左右差が現れやすい特徴があります。そのため、適切に対処していくことで、体への負担を軽減できると良いですね。
仙腸関節には、さまざまな筋肉が関係しています。可動域もとても小さいので、わかりにくい関節でもありますが、ぜひ丁寧にアプローチをしていきたい重要な部位です。ぜひ当記事を参考にして仙骨関節周辺のストレッチを行い、症状やお悩みの改善に繋がれば幸いです。
参考文献
1)D.A.Nenmann原著:筋骨格筋のキネシオロジー原著第2版,2016Hungereard b gilleard,1996

服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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