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【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

公開日:2025.06.10

【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)

あなたは「呼吸が浅く、寝つきも悪い」「猫背で見た目が気になる」そんなお悩みはありませんか。これは胸椎(きょうつい)と呼ばれる胸の背骨が硬いことが原因で起こっている可能性があります。

胸椎が硬くなると、自律神経の乱れに繋がったり、腰や肩の痛みを引き起こすこともあるのです。何か対策をした方がよさそうだけど、どうやってストレッチをしたら良いのかわからず、悩んでしまうこともありますよね。

また専門家の方の中には、胸椎のストレッチを指導したいけど、なかなかうまく行かずに悩んでいるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなあなたに向けて当記事では、胸椎の硬さを解消するためのストレッチを紹介します。あなたのお悩みを解決するためにお役立ていただければ幸いです。

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胸椎とは?

胸椎(きょうつい)とは、簡単に説明をすると胸の背骨のことを指し、通常は12個の椎体で構成されています。

また、胸骨や肋骨と合わさり胸郭とも呼ばれます。胸郭の中には、肺や心臓などの重要な臓器が含まれ、それらを外部から守る働きを持っているのです。

胸椎を柔らかくするメリット3選

胸椎の柔軟性を高めることは、心身ともにとても良い効果があります。その効果について下記で詳しく解説していきます。

姿勢がよくなる

胸椎の柔軟性を高めると、姿勢を改善することができます。もちろん柔軟性を高めるだけで姿勢がよくなるわけではありませんが、猫背などの不良姿勢で胸椎の可動性が低下している場合、筋トレをするだけでは改善しないケースが多いです。

胸椎の柔軟性を高め、胸郭のアライメント(位置)を整えることで、最短ルートで姿勢を改善することができます。トレーニングをしていてもなかなか姿勢がよくならないという方は、ぜひ胸椎を含む胸郭の柔軟性に着目してみてくさださい。

呼吸が深まる

胸椎の柔軟性を高めると、呼吸を深めることができます。本来、肋骨は息を吸う時に広がり、息を吐く時に閉じます。この時、「肋椎関節(ろくついかんせつ)」と「胸肋関節(きょうろくかんせつ)」の可動性が確保されていることが重要です。肋椎関節は、肋骨と胸椎の間の関節なので、胸椎の柔軟性が大きく関わります。

また胸椎の柔軟性を向上させ、胸郭のアライメントを整えることで、横隔膜が機能しやすい状況をつくることができるので、呼吸が深まりやすくなります。

腰や肩の痛み予防になる

胸椎の可動性が乏しくなると、その上下の関節である頚椎や腰椎の負荷が高まります。過剰に負荷が掛かるため、痛めやすくなるのです。腰椎・頚椎椎間板ヘルニアの方は、胸椎の可動性も低下している場合が多い印象です。

さらに肩を動かす際には、胸椎も連動して動く必要があります。例えば、肩屈曲90度以上では、胸椎が伸展方向に動きます。さらに肩外転では初期より、胸椎は伸展方向に動くのです。つまり胸椎の伸展方向の動きが制限されると、肩関節の動きにも影響を及ぼし、痛みに繋がる可能性があります。

胸椎の可動域チェック方法

胸椎は、屈曲(丸める)、伸展(前に反らす)、側屈(横に反らす)、回旋(ねじる)という四方向への動きがあります。それぞれの動きが、参考可動域まで動くことが理想的です。胸椎は客観的な評価がとても難しい部位ですが、下記を参考に胸椎が動いているのかチェックしてみてください。

【丸める】屈曲

胸椎の屈曲は、胸を丸める動きです。普段、猫背の方は丸めるのは、得意だと思っている方も多いと思いますが、胸椎の中でも丸めるのが苦手な部位があるケースも散見します。満遍なく丸くなっているか、硬くなっている場所はないか確認してみましょう。

方法

⒈座った状態で骨盤をまっすぐ立てます。(ニュートラルポジション)
⒉両手をクロスにして肩に添えます。
⒊胸を丸めていきましょう。

チェックポイント

・背骨が満遍なく丸まっているか
・首や腰で代償していないか

参考可動域:30〜40°

【前に反らす】伸展

胸椎の伸展は、背骨を反らす動きです。胸椎の伸展は、特に硬くなっていることが多い動きです。また硬くなっているだけでなく、胸椎を伸展させる筋肉が十分に機能していないケースも多いので、柔軟性を出すとともに筋力をつけていきたい動きです。

方法

⒈椅子に座り、頭の後ろで手を組みます。
⒉胸をそらしていきましょう。
⒊脇が開かないように意識しながら行います。

チェック方法

・背骨が満遍なく丸まっているか
・首や腰で代償していないか

参考可動域:20〜25°

【横に反らす】側屈

胸椎の側屈は、体を横に反らす動きです。普段から体の使い方に左右差がある場合は、側屈の角度にも左右差が現れるケースも多いので、角度の大きさだけでなくどれくらい左右で差が出ているのかも合わせて確認してみましょう。

方法

⒈椅子に座りましょう。
⒉左手は頭の後ろに添え、右手を持ち上げます。
⒊体を右へ倒しましょう。

チェック方法

・骨盤が傾き、お尻が浮いてこないか
・腰で代償していないか
・体の軸が横にずれていないか

参考可動域:25°

【ねじる】回旋

胸椎の回旋は、体をねじる動きです。回旋動作も、左右差がある方が多い動きです。

方法

⒈椅子に座りましょう。
⒉胸の前で手を合わせます。胸骨に両側の親指が触れるようにセットします。
⒊体をねじりましょう。

チェック方法

・膝の位置がずれていないか
・両手の親指が胸骨からずれていないか
・骨盤と胸郭がずれていないか
・体の中心軸がずれていないか

参考可動域:30°

しなやかな胸椎をつくるストレッチ方法を解説!

胸椎は、デスクワークなどの生活習慣や構造上の問題で、可動性が低下しやすい部位です。しかり本来は、腰や首よりもしっかり動かしていきたい関節ですので、ぜひストレッチを行い可動域を確保していきましょう。

胸椎屈曲ストレッチ

常に胸を張っている姿勢の方は、胸椎屈曲(丸める動き)が苦手な方が多いです。首や腰ではなく、胸の骨(肩甲骨の間の辺り)を動かすように行いましょう。

⒈足を前に投げ出し、長座の姿勢で座りましょう。腕を持ち上げ、前習えをします。【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

⒉上の背骨から一つずつ丸めるように、手を前に伸ばします。特に、肩甲骨の間に圧を感じる意識で行いましょう。

【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

⒊次に、下から順番に戻っていきます。

⒋繰り返し行いましょう。

胸椎伸展ストレッチ

猫背、巻き肩の方は、胸椎が過度に丸くなって(屈曲して)いて、伸びれない(伸展できない)方がほとんどです。まずは胸椎を反らせるように動かしていきましょう。

⒈正座の姿勢になりましょう。【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

⒉手で床を押しながら、胸を前に向けます。

【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

※肩甲骨の間の背骨周りに刺激を感じながら行いましょう。

胸椎側屈ストレッチ

胸椎の中でも特に上部胸椎の側屈動作が硬くなっているケースが多いので、脇の辺りを意識して側屈するようにしましょう。

⒈右足を前に出し、左足を横にして、横座りをしましょう。この座り方が難しい場合は、あぐらや正座でも構いません。【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

⒉左手を持ち上げて、体を右に倒します。

【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

⒊腰ではなく胸から反らす意識で行いましょう。

⒋反対側も同様に行います。

胸椎回旋ストレッチ

胸椎回旋動作を行うと、一緒に骨盤を回旋させてしまい、胸椎が十分に回旋できていないケースが多発します。そのため、骨盤を安定させて、胸椎を動かせるようなポジションを取ることがポイントです。

⒈四つ這いの姿勢になりましょう。肩の下に手首、股関節の下に膝がくるようにします。【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

⒉右手を頭の後ろに添え、左手はしっかりと床を押します。肩甲骨の間にくぼみができないように、左手で床を押すようにしましょう。

【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

⒊右肘を天井に向けるように、体を右へひねりましょう。肩甲骨の間をねじるように意識します。

【解剖学から読み解く】胸椎を柔らかくするストレッチ

まとめ

今回は、姿勢や呼吸、痛みとも関連の大きい胸椎について解説していきました。現代の生活では、長時間のデスクワークや運動不足などが影響し、胸椎が硬くなっている方がかなり多い印象です。また姿勢が悪いことを気にして良い姿勢を取ろうとするものの、勘違いをしているために、かえって悪影響を及ぼしているということもあります。

そのため、適切に胸椎の柔軟性を高め、ご自身の体の使い方や姿勢を理解していくことが重要です。

さらに胸椎が硬くなっている方は、いざストレッチをしようとしても、なかなか上手にストレッチをすることができなかったり、腰や肩に負担を掛けてしまっているケースも散見します。

胸椎の柔軟性を高めるためには、解剖学を理解して負担のない順番で行うことや、腰が動きにくい環境を設定していくことがポイントです。ぜひ当記事を参考にして胸椎のストレッチを行い、症状やお悩みの改善に繋がれば幸いです。

服部恵実

服部 恵実

大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_

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