棘上筋の起始・停止や作用とは?腱板の働きや関連した疾患もご紹介
公開日:2025.06.17

文:内藤 かいせい(理学療法士)
肩の動きに関係している棘上筋とはどんな筋肉なのか、詳しく知りたい方はいませんか?棘上筋は肩の運動だけでなく、関節の安定性にも関わっている重要な筋肉の一つです。
この記事では、棘上筋の起始・停止や作用、関連した疾患をご紹介します。棘上筋の知識を深めることで、実際の臨床に役立てられるでしょう。
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棘上筋とはどんな筋肉?

棘上筋とは、肩甲骨から上腕骨にかけてついている筋肉です。棘上筋の起始・停止や支配神経について、以下の表にまとめました。
| 起床 | 肩甲骨の棘上窩 棘上筋膜の内面 |
| 停止 | 上腕骨大結節の上部 |
| 作用 | 肩関節の外転 |
| 支配神経 | 肩甲上神経(C5,C6) |
棘上筋の触診方法として、まずは座位になった被検者の棘上窩を触れます。その後、わずかに肩関節を外転方向に運動してもらうと筋腹の触知が可能です。
棘上筋の作用
棘上筋にはどのような作用があるのでしょうか。ここでは、具体的な作用についてみていきましょう。
肩関節の運動
棘上筋の中心となる作用が、肩関節の外転運動です。同じ作用がある筋肉には三角筋があげられますが、棘上筋は肩関節を安定させて腕を上げる役割もあります。肩関節の外転運動は、日常生活では以下のような場面で行われています。
● 洗濯物を干すとき
● 髪をとかすとき
● 腕を横に広げるとき
また、野球の投球動作や水泳の腕を回す動きなど、スポーツ場面でも棘上筋を使う機会も多いでしょう。
「腱板」の形成による肩関節の安定性の向上
棘上筋は「腱板」を形成し、肩関節の安定性にも大きく貢献しています。腱板とは、肩甲骨から上腕骨に付着する筋腱の集まりのことです。腱板は以下の4つの筋腱から構成されており、「ローテーターカフ」とも呼ばれています。
● 棘下筋
● 小円筋
● 肩甲下筋
肩関節は人体のなかでも可動域が広い関節ですが、その分、構造的に不安定になりやすい側面があります。腱板は、この肩関節の不安定さを補う役割があるのです。
このように、棘上筋は単に腕を上げる筋肉としてだけでなく、腱板の一部として肩関節の安定性を維持する役割を担っています。
棘上筋の問題によって起こる疾患
棘上筋の問題によって引き起こされる疾患には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的な疾患を解説します。
腱板断裂
腱板断裂とは、肩の腱板が断裂した状態のことです。前述したように、腱板は肩を安定させる役割があり、棘上筋はその構成要素の一つです。腱板断裂を発症すると、肩の痛みや腕の上げにくさなどの症状が現れます。
夜間痛もみられ、横になると痛みが増し、睡眠の妨げとなることもあるでしょう。腱板断裂は、おもに以下のような原因で腱板が傷つくことで発症します。
● 肩の使いすぎ
● 肩の外傷
小さな断裂の場合、まずはリハビリや薬物療法などの保存療法が選択されることが多いです。一方、大きく断裂している場合は、手術による修復が必要となるケースもあります。
肩関節周囲炎(五十肩)
肩関節周囲炎とは、肩関節とその周囲の組織に炎症が生じる疾患のことです。50歳代の方に多く発症することから、「五十肩」と呼ぶこともあります。五十肩の症状は、経過によって「疼痛期」と「拘縮期」の2種類に大きく分類できます。
疼痛期では激しい痛みをともない、夜間時に症状が強くなる点が特徴です。拘縮期になると痛みは徐々にやわらぎますが、関節周囲の組織が癒着して肩が動かしにくくなります。
腱板断裂と症状が似ていますが、五十肩は「どうやっても腕が上がらない」という状態になりやすいです。五十肩は時間はかかるものの、多くの場合自然回復しやすいとされています。
石灰沈着性腱板炎
石灰沈着性腱板炎は、棘上筋をはじめとした腱板内に石灰(カルシウムの結晶)がたまり、炎症を起こす疾患です。この疾患の症状は、急性期と慢性期によって異なります。
夜間に突然発症することが多く、急性期では肩の強い痛みが現れます。痛みが強く、肩を動かせなくなる場合もあるでしょう。慢性期では比較的軽度の痛みが続き、肩を動かしたときにひっかかり感を覚えやすくなります。
石灰沈着性腱板炎の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因が関係していると考えられています。この疾患は40〜50歳代に好発し、とくに女性に多くみられる点が特徴です。
肩の痛みが続く、または悪化している場合は、これらの疾患の可能性も考えられます。痛みによって普段の生活に支障をきたしている方は、一度整形外科のある医療機関を受診することをおすすめします。
棘上筋のおすすめの筋トレ方法

棘上筋の衰えを防ぐためには、適度な運動が重要です。ここでは、棘上筋を鍛えるためのおすすめの筋トレ方法をご紹介します。
【棘上筋の筋トレ:その1】
2. 片方の手で反対側の肩をおさえる
3. 反対の腕は伸ばし、手のひらは正面を向ける
4. おさえていない側の腕をゆっくり真横に広げる
5. 30度ほど広げたらゆっくりもとに戻る
6. 4〜5の手順を左右で10〜15回×2〜3セットを目安に行う
【棘上筋の筋トレ:その2】
2. 片方の手でゴムチューブを持ち、同じ側の足で固定する
3. 肩関節を45度程度外転した状態で、ゆっくり腕を真上に上げる
4. 肩の高さまで腕を上げたらゆっくりともとに戻る
5. 3〜4の手順を左右で10〜15回×2〜3セットを目安に行う
棘上筋のストレッチ方法
棘上筋をうまく働かせるためには、柔軟性を高めることが重要です。ここでは、棘上筋のストレッチ方法をご紹介します。
【棘上筋のストレッチ方法:その1】
2. 肩の力を抜いた状態で、反対の手で棘上筋に触れる
3. 棘上筋をストレッチするイメージで、筋腹を圧迫する
4. 痛みの出ない範囲で左右で行う
【棘上筋のストレッチ方法:その2】
2. 肩の力を抜いた状態で、反対の手で棘上筋に触れる
3. 棘上筋を圧迫した状態で肩関節を内転しながら外旋させる
4. 痛みの出ない範囲で外旋させた状態を15秒ほどキープする
5. もとに戻る
6. 反対の腕で行う
棘上筋の特徴を把握しておこう
棘上筋は肩関節の外転の作用があり、さまざまな動作で使用する筋肉です。棘上筋は腱板を構成する要素の一つで、関節の安定性を高める役割もあります。
棘上筋をはじめとした腱板に問題が起こると、腱板断裂や五十肩などの疾患を発症する恐れもあります。ぜひ今回の記事を参考にして、棘上筋に対するアプローチをしていきましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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