小胸筋の起始・停止は?おもな作用やストレッチ・筋トレ方法もご紹介
公開日:2025.06.22

文:内藤 かいせい(理学療法士)
小胸筋とはどんな筋肉なのか、どのような作用があるのか知りたい方はいませんか?小胸筋は前胸部についており、肩甲骨や肋骨の運動に関与している筋肉です。類似した筋肉には大胸筋がありますが、それぞれ役割が異なります。
この記事では、小胸筋のおもな作用やストレッチ・筋トレ方法をご紹介します。小胸筋の知識を深めることで、適切なアプローチが可能となるでしょう。
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小胸筋とはどんな筋肉?

小胸筋とはどんな筋肉なのでしょうか。ここでは、小胸筋の起始・停止や作用についてみていきましょう。
小胸筋の起始・停止
小胸筋とは、肩甲骨から前胸部の肋骨に向かってついている小さな筋肉のことです。小胸筋の起始・停止や支配神経について、以下の表にまとめました。
| 起始 | 第2〜5肋骨の表面 |
|---|---|
| 停止 | 肩甲骨の烏口突起 |
| 作用 | 肩甲骨を前下方に引く(外転・下方回旋・下制) 肩甲骨の固定によって肋骨が引き上がる |
| 支配神経 | 内側および外側胸筋神経(C7,C8,T1) |
触診の方法として、まず被検者にあお向けになってもらい、肩関節を軽度伸展、肘関節を90度ほど屈曲します。上肢を支え、烏口突起から第2〜5肋骨方面に指を深く滑り込ませ、肩関節を前方に出してもらうと小胸筋の触知が可能です。
小胸筋の作用
小胸筋はおもに肩の動きに関わる筋肉で、以下の作用によって肩甲骨を前下方に引く働きがあります。
● 下方回旋
● 下制
肩甲骨の外転は腕を前に伸ばす、物を押すなどの動作で働きます。肩甲骨の下方回旋は腕を下げるときに、肩甲骨の下制は下にあるものを取るときに働くのが特徴です。このように、小胸筋は小さい筋肉でありながら、さまざまな動作に関わっています。
小胸筋と大胸筋の違い
小胸筋と大胸筋は同じ胸部に位置する筋肉ですが、その構造や機能には大きな違いがあります。まず大きな違いは、大胸筋が表層にあるのに対し、小胸筋は深層に位置している点です。大胸筋は胸の表面を覆う扇状の大きな筋肉で、具体的な起始・停止や作用は以下のとおりです。
| 起始 | 鎖骨部:鎖骨内側1/2〜2/3 胸肋部:胸骨前面と肋軟骨 腹部:腹直筋鞘前葉の表面 |
|---|---|
| 停止 | 上腕骨の大結節稜 |
| 作用 | 肩関節の内転・内旋
鎖骨部:肩関節の屈曲 |
| 支配神経 | 内側および外側胸筋神経(C5〜T1) |
このように、小胸筋とは作用が異なることがわかるでしょう。
一方で、両方の筋肉が協力して働くこともあります。具体的には、腕を動かす際に大胸筋が中心に働き、小胸筋が肩甲骨を安定させるという役割分担をしています。大胸筋と小胸筋は異なる役割を持ちますが、それぞれ連携して上半身の動きをスムーズにしているのです。
小胸筋の問題によって生じる身体への影響

小胸筋に問題が生じることで、身体にさまざまな悪影響が現れる場合があります。ここでは、どのような影響が出てくるのかを解説します。
巻き肩
巻き肩とは、肩甲骨が外側前方に寄って、胸部が縮んでいる状態のことです。巻き肩になるおもな原因は、デスクワークやスマートフォンの使用など、前かがみの姿勢を長く続けることです。
このような姿勢が続くと小胸筋や大胸筋が硬くなり、短縮することで肩甲骨が外転した状態となります。巻き肩を放置すると、以下のような症状が現れやすくなります。
● 疲労感や頭痛
● 肩こりや首こり
巻き肩の状態をセルフチェックする方法としては、まず鏡の前で横向きに立ち、自然な姿勢をとってみましょう。耳が肩よりも前に出ている場合、巻き肩の可能性があります。
小胸筋症候群(胸郭出口症候群)
小胸筋症候群とは、小胸筋の近くにある血管や神経が圧迫され、神経症状が現れる状態のことです。これは「胸郭出口症候群」の一種で、腕や手のしびれや痛み、感覚異常などの症状を引き起こします。胸郭出口症候群とは、腕に向かう神経や血管が胸郭付近で圧迫されることで生じる症候群です。そのなかでも小胸筋症候群は、小胸筋が原因で神経や血管が圧迫されるタイプの疾患です。
小胸筋症候群の症状は徐々に現れることが多く、初期は軽い肩こりからはじまります。さらに進行すると、以下のような症状が現れるようになります。
● だるさ
● 冷え
● 感覚異常
● 脱力感
小胸筋症候群の原因として、小胸筋の過度な緊張があげられます。とくにパソコンやスマートフォンの長時間の使用は、小胸筋を緊張させる原因の一つです。上記の症状がある方は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
小胸筋のストレッチ方法
小胸筋の緊張をやわらげるためには、ストレッチを行うことが重要です。ストレッチによって小胸筋の柔軟性が改善し、巻き肩や小胸筋症候群の予防・解消につながります。小胸筋の具体的なやり方についてみていきましょう。
【ストレッチのやり方:その1】
2. 右肩を90度外転、肘を90度屈曲させて床につける
3. 左の手で床を押し、上半身を回旋させる
4. 右手を床につけたまま、できる限り上半身を回旋させた状態をキープする
5. 20秒程度キープしたら反対の手で行う
【ストレッチのやり方:その2】
2. 右手を支えにして上半身を起こす
3. 左足を前に倒す
4. 重力に従って、右肩をゆっくり引き下げる
5. できるだけ引き下げた状態を20秒ほどキープする
6. 反対の手で行う
小胸筋のおすすめの筋トレ方法
小胸筋の衰えを防ぐためにも、ストレッチだけでなく筋トレを行うことも大切です。小胸筋を鍛えることで肩甲骨の動きが安定し、姿勢改善につながります。ここでは、小胸筋を鍛えられるおすすめの筋トレ方法をご紹介します。
プッシュアップ
プッシュアップ(腕立て伏せ)は、小胸筋や大胸筋、上腕の筋肉を鍛えられるトレーニングです。
【プッシュアップのやり方】
2. 両腕を肩幅程度に広げる
3. 身体をまっすぐにして、肘を曲げてゆっくり上体を下げる
4. 床につく直前まで上体を下げたら肘を伸ばす
5. 3〜4の手順を10〜15回×2〜3セットを目安に行う
ベンチディップス
ベンチディップスは、ベンチやイスに寄りかかって行うトレーニングです。このトレーニングでは、小胸筋や腕の筋肉を鍛えられます。
【ベンチディップスのやり方】
2. お尻を前に移動させて、ベンチやイスから離す
3. 手だけで身体を支えつつ、両膝を伸ばす
4. 肘を曲げてゆっくりと身体を下げる
5. できるだけ下げたら肘を伸ばす
6. 4〜5の手順を10〜15回×2〜3セットを目安に行う
ダンベルプルオーバー
ダンベルプルオーバーとは、あお向けの状態でダンベルを持ち上げるトレーニングです。ダンベルがない場合は、水の入ったペットボトルでも代用可能です。
【ダンベルプルオーバーのやり方】
2. 両手でダンベルを持ち、頭の後ろに持ってくる
3. 肩を支点にしつつ、ダンベルを天井に向かって持ち上げる
4. ダンベルをゆっくりと下ろす
5. 3〜4の手順を10〜15回×2〜3セットを目安に行う
小胸筋の作用を把握してアプローチしてみよう
小胸筋は肩甲骨の外転や下方回旋、下制など、肩関節のさまざまな運動に関わっている筋肉です。肩甲骨の固定に関わる筋肉でもあり、大胸筋と連携して働くことでスムーズに肩を動かす役割もあります。
小胸筋の短縮や衰えは巻き肩や小胸筋症候群などの原因となるので、ストレッチや筋トレを習慣づけることが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、小胸筋のアプローチをしてみましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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