寝ながらできる仙腸関節ストレッチ&トレーニング7選
公開日:2025.07.05
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
「仙腸関節を整えたいけどどんなストレッチがオススメなの?」「ベッド上でできる、寝ながら仙腸関節を整える方法はあるの?」と言った悩みはありませんか。
仙腸関節は腰の後ろ側にある関節で、わずかに動くと言われています。普段の姿勢などが影響し、左右差が出ていることも多々あります。左右差があることがすべて悪いわけではありませんが、もし痛みなど症状がある場合には、対処していくことが重要です。また予防のために、仙腸関節を整えて、安定させていくことをオススメします。
そこで当記事では、寝ながらできる仙腸関節を整えるためのストレッチ&トレーニングを紹介します。あなたのお悩みを解決するためにお役立ていただければ幸いです。
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仙腸関節の基本を簡単に解説!
骨盤は、寛骨(腸骨、恥骨、坐骨)、仙骨、尾骨から構成されます。それぞれの骨の間に関節があり、仙骨と腸骨の間にある関節を仙腸関節と言います。
仙腸関節は、とても可動域の小さい関節です。実際に研究結果より、約1~4°の前後回転、1~2mmの並進運動が正常な方の平均値だと言われています。1) この可動域が大きすぎても、小さすぎても障害を引き起こす可能性があるため、適切な可動域の範囲内で動くことが重要です。
仙腸関節は歪むの?整っていないとダメ?
骨盤の「歪み」や「ズレ」といった言葉は、一般の方にも理解しやすい一方で、誤解を招いているケースも散見します。仙腸関節は先述したように数ミリ単位で変位することもありますが、強靭な靭帯によって守られているため、構造的な「ズレ」が生じることは極めて稀です。
しかし仙腸関節に関係する筋肉のバランスや体の使い方の認識がずれることで、骨盤の位置関係や傾きなどに左右差やねじれが生じることがあります。通常であれば少しの左右差で痛みなどの症状が出ることは少ないですが、産前産後、生理中などにホルモンバランスが変化したり、出産時などに症状が出るケースはあります。
また骨盤の位置が左右で異なることで、重心位置の乱れや筋肉のアンバランスさを生み出し、将来的に背骨や肋骨のねじれや歪み、股関節や大腿骨への影響を引き起こす可能性は否定できません。
そのため仙腸関節を含む骨盤帯のアライメント(高さや傾き)を修正することと、機能を調整していくことの両方にアプローチをしていく必要があるのではないでしょうか。
【寝ながらできる】仙腸関節を整えるストレッチ&トレーニング7選
それでは、実際に仙腸関節を整えるストレッチ&トレーニングを紹介していきます。ここで紹介している方法は、一般的に骨盤の左右差の要因になりやすい筋肉に対してのアプローチ方法です。もしすでに症状があったり歪みを感じている場合は、一度、専門家に骨格を見てもらい、状態に合わせて行うことを推奨します。
仙腸関節ストレッチ
仙腸関節を整えるために、股関節外旋六筋や大腿筋膜張筋をストレッチしていきます。症状がある方はこのストレッチを行うと仙腸関節に痛みが出る場合もあります。その場合は、骨盤を適切な位置で安定させるインナーユニットが機能低下し、仙腸関節が不安定な状態になっている可能性なども考えられます。痛みが出現した状態でストレッチを継続すると、痛みが長引くことがあるため、無理せず専門家に相談しましょう。

⒉両足を同時に横に倒していきます。
⒊肩が床から浮かないようにしましょう。
ハムストリングスストレッチ
ハムストリングスは、腿裏の筋肉です。寛骨を後ろに傾ける(骨盤後傾させる)働きがあります。そのためハムストリングスが硬くなると、仙腸関節が不安定な位置(カウンターニューテーション)になりやすいです。股関節を引き込むように腸腰筋を使いながら、ハムストリングスの長さを確保していきましょう。
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⒊ゆっくりと膝を伸ばし、腿裏が伸びるのを感じましょう。
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多裂筋トレーニング
仙骨を前傾位とし、仙腸関節が安定する位置(ニューテーション)で維持できるように、多裂筋のトレーニングを行なっていきます。

⒉右手、左足を伸ばします。
⒊身体が倒れないように維持しましょう。
腹横筋トレーニング
腹横筋は、お腹のインナーマッスルです。コルセットのような筋肉で、体幹部を安定させるために重要な働きを持ちます。仙腸関節を安定させるために重要な筋肉です。息を吐きながら、お腹の奥の方を使うような感覚で行いましょう。

⒉遠くにあるろうそくの火を吹き消すように、細く長く息を吐きます。この時、お腹が薄くなるように意識します。
⒊感覚が入りにくい方は、息を吐くのと同時に骨盤底筋を引き上げるように意識してみてください。
お尻(大殿筋・中殿筋)ストレッチ
大殿筋と中殿筋は、お尻の表側にある大きな筋肉です。特に普段からデスクワークなどで長時間に渡り座っている方では、大殿筋と中殿筋が硬くなっているケースを散見します。骨盤のアライメントに影響を与える筋肉ですので、調整をしていきましょう。
⒊両足の間に右手を入れて、左膝下に当てましょう。その上に、右手を重ねます。
⒋両足を床から浮かせ、膝を胸に近づけます。
⒌お尻の伸びを感じましょう。
クラムシェル
股関節の外旋筋群(梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋など)の滑走性向上、緊張緩和、仙腸関節の安定性向上を目指す運動を行なっていきましょう。股関節の角度により筋肉の動員数が変わりますので、スタートポジション(下記の手順1)を股関節屈曲0度、45度、90度にそれぞれ分けて行なっていくとより効果的です。

⒉上側の腰を下に下げ、左右の骨盤の位置を揃えましょう。
⒊踵同士はつけたまま、膝を開き股関節を外旋していきます。
⒋骨盤が開かないように注意しながら行いましょう。
シングルレッグストレッチ
インナーユニットを安定させ、動作時に骨盤での代償を防ぐことで、体の適切な使い方を認識しましょう。

⒊右足を遠くへ伸ばしましょう。左右の腰(ASIS)の位置がズレないように意識します。
⒋足を入れ替え、反対側も同様に行います。
まとめ
今回は、仙腸関節を整える重要性やストレッチ・トレーニング方法について解説していきました。仙腸関節は可動性としてはわずかではあるものの、アライメント不良や周囲の筋のアンバランスなどにより不調に繋がることも多い関節です。
特に女性は、構造上やライフステージの変化によって、骨盤の安定性が低下したり、左右差が現れやすい特徴があります。そのため、解剖学を理解しながら適切に対処していきたい部位です。ぜひ当記事を参考にして仙骨関節周辺のストレッチやトレーニングを行い、症状やお悩みの改善に繋がれば幸いです。
参考文献
1)D.A.Nenmann原著:筋骨格筋のキネシオロジー原著第2版,2016Hungereard b gilleard,1996

服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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