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オーラルフレイルの予防方法は?チェックリストと評価で事前の対策を

公開日:2021.03.22 更新日:2021.03.31

オーラルフレイルの予防方法は?チェックリストと評価で事前の対策を

文/新家 尚子
(東京都言語聴覚士会 理事・保険局局長)

国立長寿医療研究センターが行った調査によると、感染症の拡大前後で1週間当たりの身体活動時間は約60分(約3割)減少していることがわかり、コロナ禍での自粛生活による健康への悪影響が懸念されています。

そこで今回は、口腔の機能が低下する「オーラルフレイル(口腔機能低下症)」についてお話します。

オーラルフレイル(口腔機能低下症)とは
噛んだり飲み込んだり、話したりするための口腔機能が衰えること。

高齢者の身体活動や社会参加の場が制限されるなかで健康を維持するには、身体を動かして筋力を維持するだけでなく、「口の動きを維持する」ことも重要な要素です。

オーラルフレイルとは?と「フレイル」の密接な関係

身体や心の機能が低下した状態を「フレイル(虚弱)」といいます。このフレイルが進むと身体の回復力や免疫力が低下し、いわゆる要介護状態へと進みます。

健康と要介護状態の間に位置するフレイルの予防は、より早期からの介護予防を意味しており、コロナ禍において感染症への対策を施しつつ活動を継続することが、地域リハビリテーションの課題となります。

早めにフレイルに気付き適切な対応をとることで、より健康に近づくことができるでしょう。「フレイル」の状態は、要介護状態になるのを未然に防げる可能性があるということです。

フレイルの最初の入り口は、社会とのつながりを失うことだと指摘されています。社会性の低下に栄養状態や身体活動の低下が加わると、負の連鎖によりドミノ倒しのようにフレイル、要介護状態への進むおそれがあります。このような流れを「フレイル・ドミノ」といいます。

フレイルドミノ(東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢「フレイル予防ハンドブック」から引用)
出典:東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢「フレイル予防ハンドブック」から引用

コロナ禍における地域リハビリテーションは、「フレイル予防」そのものです。ここ1年、そしてこれから先も、当面は「フレイル予防」が私たちリハビリセラピストにとって重要なテーマになるでしょう。

健康維持に必要なことというと、まず「運動」に目が向きがちですが、運動だけでは健康は維持できません。身体機能面だけでなく、精神機能や口腔機能面を評価し働きかけることは重要な要素です。

オーラルフレイルのチェックリストを活用し、口腔機能を高めよう

フレイルは複合的な要素の悪循環によるものであり、オーラルフレイルもその一因です。オーラルフレイル予防の大切さについて、具体的に紹介します。

●口腔機能の健康への影響

齲歯や歯周病の治療中や、症状が進行して歯を失うと、以下のような状態になります。

<オーラルフレイルチェックリスト>
①咀嚼能力の低下
②硬いものが噛めない
③軟らかいものを食べる

この3つが悪循環となって続き、さらに進むと口腔機能の低下を招きます。

オーラルフレイルにより口腔機能が低下すると、食べ物の種類や調理方法が制限されるため、栄養が偏り、エネルギー不足になりがちです。その結果、筋力や免疫力が低下するだけでなく、食べる楽しみの喪失にもつながります。

また、口には、「食べる」以外にも、「話す」「呼吸する」「表情をつくる」など、様々な役割があります。おいしく楽しく安全に食べることは、栄養を摂るためだけでなく、生活そのものを楽しむことでもあるのです。

食事や会話に支障をきたすと、外出や社会との交流、人との付き合いが面倒になり、コミュニケーション機会や意欲の減退につながります。不活発な生活が続くと、体力だけでなく認知機能の低下を招く原因にもなり、フレイルがどんどん進行していく「負の連鎖」が続くのです。

●摂食嚥下障害の予防

オーラルフレイルにより、口腔機能の中でも摂食・嚥下機能が低下すると、食べ物を誤嚥して「誤嚥性肺炎」を発症するリスクも高まります。

摂食・嚥下とは、食べ物を認知することから口腔内に取り込み飲み込むまでの過程であり、「嚥下=飲み込む」ことだけではなく、様々な要素が連動しています。

嚥下障害が起こる原因のひとつである「加齢」による変化としては、嚥下にかかわる筋群の筋力低下、舌骨・喉頭の下垂、歯が減少することによる不安定性増加や咀嚼力の低下、食道入口部の開大不全、唾液の分泌が減少する、などがあります。

これらは日々の口腔体操や口腔ケアで予防・改善することが可能ですので、オーラルフレイルを放置しないことが大切です。

オーラルフレイルの兆候は?口腔機能を評価するポイント

オーラルフレイルの兆候は?口腔機能を評価するポイント
おいしく、安全に食べるためには、口腔内や嚥下の状態が良好であることが欠かせません。

オーラルフレイルの兆候を見逃さないよう、対象者に次のような点が見られないか、注意して観察することが必要です。

<オーラルフレイルの兆候>
(1)奥歯でしっかりと噛めない
(2)噛むと痛んだり不快感がある
(3)食べこぼしがある
(4)むせやすい
(5)口が乾燥しやすい
(6)滑舌が悪くなっている

対象者にこれらの自覚症状がある場合は、口腔ケアや口腔リハビリを行い、口腔機能の低下を予防します。

ただし、口腔機能の評価の際、口だけを見れば充分というわけではありません。口は身体の一部であり、口腔機能が低下するには様々な要因が関与しています。

例えば、姿勢保持が困難な方であれば、飲食時の誤嚥のリスクは自ずと高まるし、口腔ケアが充分に行えない可能性があります。

<口腔機能を評価するポイント>
・病状や全身状態
・服薬の状況
・その日の体調や認知機能
・呼吸や発声
・栄養の状態など

オーラルフレイルは口腔機能だけではなく、全身状態にも評価の視点が必要です。

オーラルフレイル対策で免疫力アップにつなげよう

コロナ禍において、オーラルフレイル予防のひとつとして口腔衛生を保つことは、感染症対策の役割も担っています。

口の中には細菌がたくさんいます。身体を守る働きをするもの、悪さをするものなど、様々です。口の中にあるプラーク(歯垢)や舌の表面についた舌苔、歯周病原因菌などは悪さをする細菌であり、口腔内の免疫の働きを阻害することがわかっています。

口腔ケアにより口腔内の衛生を保ち、悪さをする細菌を減らすことで、免疫が充分に働くようにしておくことが大切です。

また、現在の生活ではマスクを常時しているため、口腔内が乾燥しやすい傾向があります。唾液には口腔内を清潔に保つ自浄作用があります。口腔ケアと共に、唾液腺を刺激して分泌を促すことも、口腔衛生に役立ちます。

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参考文献

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
日本歯科医師会
一般社団法人 日本訪問歯科協会
e-ヘルスネット(厚生労働省)
「住み慣れた街でいつまでも-最期まで自分らしく暮らせるまち東京-」東京都福祉保健局

新家 尚子(東京都言語聴覚士会 理事・保険局局長)
大学を卒業後一般の企業で5年間社会人を経験した後専門学校に入学し、卒業後は急性期、回復期病院への勤務を経て、現在は訪問看護ステーションに勤務。

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