第56回患者さんと信頼関係を結ぶコミュニケーション術~本音を引き出す声掛け~
公開日:2021.05.31
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
施術に必要な情報を患者さんからうまく引き出せると、セラピストとして身に着けてきた技術や知識をフル活用して、患者さんと良好な関係を築くことが可能になります。今回は、患者さんの思いを引き出すコミュニケーションについて考えてみましょう。
患者さんには「おしゃべりが好きな人」「自分から症状や困ったことなどについて話してくれる人」がいる一方で「雑談が苦手な人」「ただ黙って聴くだけの人」「質問しても答えてくれない人」などいろいろなタイプがいます。
いずれの場合でも大切なのは、患者さんから話し出すのを待つのではなく、セラピストの側から積極的に声をかけることです。
患者さんが話したくなる”雰囲気作り”を心がけよう
「調子はいかがですか」「体調で変わったことはないですか」など、最初は当たり障りのない声掛けから始めましょう。治療に関することにこだわらず、世間話や地域のたわいない話題をはさみながら、何でも気軽に話ができる関係をつくっていきます。共通の話題を見つけるのが、話をスムーズに進めるコツです。
声掛けのポイントは「○○さん、お加減はいかがですか」のように意識して患者さんの名前を呼ぶこと。そうすることで、患者さんは自分のことを大切にしてくれていると感じ、セラピストへの信頼感が増します。常に自分のことを尊重してくれるセラピストに声を掛けられたら、嬉しくなって自分の思いも伝えたくなるものです。
時にはセラピスト自身の経験談や失敗談を伝えると、人間味が感じられ、患者さんもより親近感を感じやすくなります。小さな対話を積み重ねることで、少しずつコミュニケーションを増やしていきましょう。
一方で、声掛けだけではなく「患者さんが話しかけたくなるような雰囲気ときっかけ」を提供することも大切です。
人は親しみを感じたり信頼感を抱いたりすると、困ったときや何か質問したいと思ったとき、自分から相談したいと思うもの。一方で、他人行儀で親しみを感じないセラピストに、自分からなんでも話すという患者さんは少ないと思います。
あまり話したがらない患者さんが話をしてくれた時は、「お話してくださりありがとうございます」「〇〇さんのお話を聞けてうれしいです」などと感謝の気持ちを伝えましょう。患者さんの話に興味や関心を示して共感を伝えると、患者さんは「また話したい」「もっと話したい」と思うようになります。
笑顔とアイコンタクトで親しみやすい雰囲気を
患者さんとのコミュニケーションでは、笑顔で接することが大前提です。笑顔には、患者さんに信頼や好意、安心感、リラックスを伝える効果のほかに、セラピストとしての自信を伝える効果もあります。「自信がありそう」と感じるセラピストには、患者さんも安心して話すことができます。
患者さんとのアイコンタクトも重要です。ずっと目を見続けると、お互いに気恥ずかしくなったり居心地が悪くなったりするため、ときどき目を合わせれば十分です。患者さんの横に座るなど、目線の高さを合わせるのも効果的。目には気持ちがあらわれるため、目を見ることで患者さんの気持ちを推察しやすくなります。
病院で診察するのは医師ですが、セラピストと接する時間の方が長いという患者さんは少なくありません。施術を受けて少しでも症状が楽になればもちろん嬉しいことですが、セラピストとの対話を楽しみにしている患者さんもいるのです。
「あのセラピストさんに会いたい」と言ってもらえるように、病院の顔となる聴き上手・引き出し上手のセラピストを目指してほしいと思います。
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村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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