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未経験の領域への転職に対する不安|セラピストのお悩み相談室

公開日:2025.05.27

未経験の領域への転職に対する不安|セラピストのお悩み相談室

文:鈴木 康峻(理学療法士)
イラスト:山本 香里

日常生活や仕事の中で、心の中にモヤモヤや不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?友人や家族には話しづらい悩みも、専門家に相談することで新たな気づきや解決策が見つかることがあります。

「セラピストのお悩み相談室」では豊富な経験を持つセラピストが、あなたの悩みに真摯に向き合い、具体的なアドバイスをお届けします。

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お悩み|未経験の領域への転職に対する不安

精神科病院に勤務する作業療法士です。老人保健施設への転職を検討していますが、身体障害領域での勤務経験がないため、業務が行えるか不安です。精神科領域での仕事を続けたほうがよいでしょうか?

お悩みの詳細

精神科病院で働いて5年目の作業療法士です。主に統合失調症やうつ病の患者さんのリハビリを担当してきました。

集団活動やSST(社会生活技能訓練)、作業活動などを中心に行ってきましたが、身体機能へのアプローチの経験がほとんどありません。

老人保健施設では脳卒中後遺症や骨折後の方などと関わることが多いと思いますが、機能訓練が実施できるか不安です。

具体的にどのような準備をすればよいのか、また転職後どのように業務に慣れていけばよいのか、教えてください。

回答|足りない部分は実際の業務と先輩からの指導で補い、得意な分野は専門性を活かしていきましょう。

足りない部分は実際の業務と先輩からの指導で補い、得意な分野は専門性を活かしていきましょう。

以前、精神科病院から老人保健施設へ転職した作業療法士と働いた経験があります。

その職員も質問者さんと同じような不安を抱えていましたが、精神科での経験を活かしながら活躍していました。

まずは「精神科領域の経験はあるが、身体障害領域の経験はない」ことを素直に伝え、新人と同程度の教育体制をお願いしましょう。

そのうえで、以下のような方法で業務に取り組んでいくことをおすすめします。

1.身体機能に関する学習はトップダウンで行う

解剖学や生理学、運動学などの基礎的な学問は、機能やADLを評価するうえで必要です。

しかし、ボトムアップ的に学習を進めるのではなく、利用者さんの基本動作やADLを見ていくなかで、トップダウン的に学習していきましょう。

臨床では、「実際の動作から問題となる機能を推測する」トップダウンアプローチのほうが、必要な学習を短期間で効率的に進められるからです。

具体的には、初めは「なんとなくの違和感」を見つけることから始めます。たとえば「下肢の骨折の方が骨折側にあまり体重をかけられていない」「立つときに手すりに過剰に頼っている」といった気づきでかまいません。

違和感を見つけたら、その原因について「臀部の筋力低下」「膝の痛み」など、いくつかの仮説を立てて対応方法を検討します。その際は先輩セラピストに考えを伝え、一緒に確認しながら進めていきましょう。

質問者さんは、精神科領域で仮説・検証作業を繰り返してこられたはずです。この経験は身体機能へのアプローチにも必ず役立つはずです。

2.精神科での経験は存分に活かす

以下の2点は質問者さんの大きな強みと考えられますので、存分に活かすとよいでしょう。

①多職種連携におけるコミュニケーション

老人保健では、1日の活動すべてがリハビリという考え方で利用者さんを支援します。そのため、介護職員や看護師との連携が不可欠です。

人の心理面を専門に扱ってきた経験は、職員一人ひとりの考え方や性格に合わせたコミュニケーションに活きてきます。

場の雰囲気を読み取る力は、多職種連携を円滑に進める際にとても役立つでしょう。

②認知症ケア

認知症の方のBPSD(行動・心理症状)には、うつ状態や不眠、妄想などの精神症状があり、精神科領域で経験した患者さんの症状と共通する部分が多くあります。

もし転職先にBPSDの対応に不慣れなスタッフが多いようであれば、質問者さんの得意分野を活かせるチャンスであるとも考えられます。

コミュニケーションや作業活動などを活用しながら、積極的に取り組んでみましょう。

異なる領域への転職は戸惑うことも多いでしょうが、基本的な業務には3か月程度で慣れてきます。

わからないことを素直に質問できる謙虚さをもちつつ、精神科での経験を活かせる場面では積極的に行動していきましょう。

きっと精神科と身体領域、両方の視点をもつセラピストとして、独自の強みを発揮できるようになるはずです。

 

鈴木康峻(理学療法士)

鈴木康峻(理学療法士)

2008年に理学療法士の免許を取得。介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。リハビリテーション業務のかたわら、医療・介護ライターとして高齢者の疾患や制度などのさまざまな記事を執筆している。理学療法士の現場で働いているからこそ得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆を心がけている。

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