言語聴覚士の仕事にやりがいが見出せない|セラピストのお悩み相談室
公開日:2025.07.08

文:鈴木康峻(理学療法士)
日常生活や仕事で、心の中にモヤモヤや不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。友人や家族には話しづらい悩みも、専門家に相談することで新たな気づきや解決策が見つかることがあります。
「セラピストのお悩み相談室」では豊富な経験を持つセラピストが、あなたの悩みに真摯に向き合い、具体的なアドバイスをお届けします。
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お悩み|言語聴覚士の仕事にやりがいが見出せない
言語聴覚士(ST)の仕事は、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)のように目に見える変化が小さく、地味だと感じています。そのため、仕事にやりがいを見いだせなくなってしまいました。
お悩みの詳細
回復期病院で働いて5年目のSTです。
現在は主に嚥下障害、失語症、高次脳機能障害のある患者さんを担当しています。
PTやOTが関わり「歩けるようになった!」「自分で排泄できるようになった!」と喜び、自信を取り戻す患者さんの姿を見ると、自分の仕事の成果が見えにくいことに焦りを感じてしまいます。
「この仕事は本当に意味があるのかな」「もっとダイナミックな変化を起こせる仕事のほうがよかったのでは」と考えてしまい、モチベーションの維持が難しくなってきました。
どうすればやりがいを見つけられるのか、アドバイスをいただきたいです。
回答|PTの立場から、STがいない環境を経験してその重要性を痛感しています。ご自身の仕事の価値を見直してみましょう。

PTやOTのリハビリは、「歩けるようになった」「トイレに行けた」など成果が目に見えやすいため、質問者さんがSTの仕事を「地味」だと感じる気持ちは理解できます。
私は病院でSTと一緒に仕事をしてきましたが、現在勤務する老健にはSTがいません。
STがいた環境と、いない環境の両方を経験したからこそ、その仕事がどれほど重要でほかの職種では代替が難しいものか、強く実感しています。
私が思うSTの仕事の価値について、お伝えさせてください。
1.STは「食べる喜び」と「安全性」を両立させられる
病院勤務時代、ペースト食からきざみ食へと食形態が上がり、涙を流して喜ぶ患者さんの姿を何度も目にしてきました。
これはSTの詳細な評価と専門的な訓練があってこそ実現できたことです。
現在の勤務先はSTがいないため、食形態を上げる判断が難しく、食べる喜びよりも安全性を重視せざるを得ません。
現状の食形態で嚥下が難しそうであれば、「どうやって食べ続けるか」を考えるよりも、安全性を考えて食形態を下げる選択が優先されがちなのです。
この選択が利用者さんに与える影響は小さくありません。食事の楽しみが奪われることで生活意欲が低下し、栄養状態の悪化によってリハビリの効果が思うように出ないケースをしばしば経験します。
STがいない環境で働いてみてわかったのは、その専門性が「食べる喜び」と「安全性」を両立させ、リハビリ全体の土台を支える重要な役割を果たしているということでした。
2.STは根拠をもったコミュニケーション支援ができる
以前協働していたSTは、ある失語症の方の言葉の出にくさについて「疾患の要素」に加え「廃用の要素」があることを理論的に説明してくれました。
PTやOTが訓練中にどう関わるべきかというコツも教えてくれ、本当に心強く感じたものです。
しかし、STのいない今は、「言語でのやりとりが難しいから、絵カードのようなコミュニケーションツールを使うべきでは」といった単純な判断しかできません。
専門的な評価と訓練方法を理論立てて教えてくれる専門家がいないため、「本当にこの関わり方でよいのだろうか」と、手探り状態が続いています。
この状況を改善するには、やはりSTの存在が必要だと強く感じています。
STがいればコミュニケーションがもっと円滑になり、たとえば面会に来られるご家族とも会話が弾み、利用者さんとご家族が喜びを共有できる場面が増えるはずです。
STの仕事は目に見える変化が小さく、時に地味だと感じられるかもしれません。しかし、笑顔で食事を楽しめることや、家族と会話を交わせるようになることは、人間の尊厳や生活の質に直結する大きな変化です。
PTの立場から見ると、STがいない環境では、こうした「生きる喜び」につながるリハビリが十分に提供できないことを痛感しています。
ぜひご自身の仕事の価値を再認識し、自信とやりがいをもって取り組んでください。
STだからこそできる、患者さんの生きる喜びを支える仕事の素晴らしさを、誇りにしていただきたいと思っています。

鈴木康峻(理学療法士)
2008年に理学療法士の免許を取得。介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。リハビリテーション業務のかたわら、医療・介護ライターとして高齢者の疾患や制度などのさまざまな記事を執筆している。理学療法士の現場で働いているからこそ得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆を心がけている。
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