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転倒=靴のせい?責任を押し付けられて困っています|セラピストのお悩み相談室

公開日:2025.08.04

転倒=靴のせい?責任を押し付けられて困っています|セラピストのお悩み相談室

文:鈴木康峻(理学療法士)

日常生活や仕事の中で、心の中にモヤモヤや不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?友人や家族には話しづらい悩みも、専門家に相談することで新たな気づきや解決策が見つかることがあります。

「セラピストのお悩み相談室」では豊富な経験を持つセラピストが、あなたの悩みに真摯に向き合い、具体的なアドバイスをお届けします。

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お悩み|転倒=靴のせい?責任を押し付けられて困っています

患者さんの転倒に対して病棟スタッフが深く要因分析をせず、「靴のせいでしょ」と決めつけてきます。それどころか「理学療法士さん、滑らない靴を選んであげて」と、私に責任を押し付けてきて困っています。

お悩みの詳細

回復期病院で働く2年目の理学療法士です。担当の患者さんがポータブルトイレを使用中に、ベッドサイドで転倒してしまいました。

カンファレンスでは「靴が滑ったから新しいものに買い替える」という話に。

この方は認知症があり、離床センサーが反応したら見守りで排泄することになっていますが、今回は病棟の対応が間に合わず、単独で動いてしまいました。

靴も一因かもしれませんが「見守りしていれば防げたのでは」とモヤモヤしています。
本質的な対策を講じるためには、病棟スタッフへどう働きかけるとよいでしょうか。

回答|感情的に返さず、事実に基づいて冷静に働きかけてみましょう。

回答|感情的に返さず、事実に基づいて冷静に働きかけてみましょう

転倒の原因を深く考えず「靴のせい」と決めつけられると、モヤモヤするのも当然ですよね。しかし、ここで感情的に反論してしまうと関係がぎくしゃくしてしまい、本質的な改善にはつながりません。

大切なのは「見守りの必要性」を事実に基づいて丁寧に伝え、建設的な話し合いにつなげることです。以下の4つのポイントを意識して、落ち着いて対話してみてください。

①「見守りが必要」という前提をあらためて共有する

まずは、「この患者さんには見守りが必要」というケア方針が、評価に基づいて立てられていたことをチームで再確認しましょう。

以下のような情報を客観的な事実として整理し、共有するのがおすすめです。

【例】
・下肢筋力の低下により、一人で立位動作を行うとふらつきが見られる
・認知症の影響で判断力や空間認知が低下している
・以前にも、便器だと思って何もない場所に腰を下ろそうとする行動があった
・離床センサー作動時には即座に対応するというルールがある

このように、感情ではなく事実ベースで見守りの必要性を再確認してみてください。

②「靴だけが原因とは言い切れない」ことを丁寧に伝える

確かに靴が滑りやすかった可能性は否定できませんが、それだけを原因とするのは短絡的です。

今回のように「見守りが必要な状況で、それが機能していなかった」のであれば、たとえ靴を替えても再発リスクは残ります。以下のように伝えてみるのはいかがでしょうか。

【例】
「靴の見直しも大切ですが、今回は『見守りの必要な方が単独で動いてしまった』という点も見逃せないと思うんです。靴だけでなく他の要因も一緒に考えられたら、より安心できる対策がとれると思います」

このように相手の考えを一度受けとめたうえで、視点を少し広げるように伝えると、対立を避けながら本質に近づけるのではないでしょうか。

③靴のせいにしたくなる気持ちにも理解を示す

一方で、病棟スタッフが「滑らない靴なら安心」と感じる気持ちも理解できます。実際にヒヤリとした場面があったのかもしれませんし、そうした不安から靴の見直しを提案することもあるでしょう。

だからこそ「実際に滑ってヒヤッとしたことがありましたか?」と、現場での体験を聞いてみてください。そうしたやりとりの中から、単なる決めつけではなく、靴のせいだと主張する理由が見えてくることもあります。

④「靴の見直し」と「見守り体制」は別問題として整理する

もし滑りやすかったという具体的なエピソードがあれば、靴の見直しは一つの対策として前向きに検討すべきです。ただし、その場合でも「靴を替えたから見守りは不要」ということにはなりません。

逆に滑ったことが特にないという場合は、靴を原因とするのは難しく、見守りが機能していなかったことが、転倒の直接的な原因と考えられます。

いずれにせよ、結論は「やはり見守り体制の確保が不可欠だ」という点に落ち着くはずです。

モヤモヤするのはあなたが真剣に向き合っている証拠です。

責任を押し付けられたように感じると、やるせない気持ちになるのも無理はありません。しかし、そのモヤモヤは「どうすれば再発を防げるか」を真剣に考えているからこそ生まれるものだと思います。

相手の声にも耳を傾けつつ、全体の状況を一緒に整理していくと、少しずつ信頼関係が生まれより良いケアへとつながっていくはずです。ぜひ参考にしてください。

鈴木康峻(理学療法士)

鈴木康峻(理学療法士)

2008年に理学療法士の免許を取得。介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。介護認定調査員、介護認定審査員、自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。リハビリテーション業務のかたわら、医療・介護ライターとして高齢者の疾患や制度などのさまざまな記事を執筆している。理学療法士の現場で働いているからこそ得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆を心がけている。

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