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第2回生活に活かす作業~洗濯物を干す・畳む~

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家事動作の中でも、対象者の状態や作業療法の目的によって様々なアレンジが可能な作業の一つとして挙げられる「洗濯」。今回は、第1回で取り上げた洗濯物を「干す」作業から「畳む」作業へと場面を移し、作業療法評価のポイントや介入時の注意点について考えてみたいと思います。

洗濯物を干す際の注意点

関節可動域制限や関節痛のある対象者の場合は、洗濯物の大きさや種類にも配慮しなければなりません。洗濯物を広げ、物干し竿にかけようとする際には肩関節の上方挙上のほか、水平外転、外旋など複雑な関節運動を伴います。鎖骨をはじめ、胸部、体幹へと連鎖する運動となるため、対象者に対しては関節可動域と疼痛のチェックが必須です。
例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 対象者が肩幅より大きなバスタオルを両手でピンと張りながら物干し竿にかける作業で、体幹の側屈などの代償運動が生じる→作業療法士は、対象者の肩関節に有痛性の可動域制限があることや、内臓、視覚、意欲などに問題がないかを疑う
  • 立位で、より高所または遠方に洗濯物をかけようとすると、対象者の肩関節や肩甲骨周囲に疼痛が出現する→作業療法士は対象者に、広背筋の柔軟性低下、体幹の伸展制限、股関節の支持性の可能性があることを疑う

乾いた洗濯物を畳む

私たち作業療法士は、目に見える「身体の動き」だけではなく、対象者の動きを多角的に評価する必要があります。過去の経験に基づき実際の行動を「予測」したり、手指の形や動きを「調整」したり、目的の動きができるように「計画」する段階も含めて考えましょう。

洗濯物を畳もうとする場面では、日差しを浴びてふんわりと仕上がった衣類に触れようとする手がどのような軌跡を描き、対象者がどのような感触を持って操作しようとしているかを観察するでしょう。きっと、脱水したばかりの洗濯物を触れる手とは異なり、衣類に新たなシワをつけまいと丁寧に手腕が動いているはずです。
もし、これから畳む洗濯物をシワができるよう強く掴むなど、目的に沿わない動きが観察されたら、他の場面も確認してみましょう。

例えば、ティッシュペーパーを取ろうとする手は、ティッシュペーパーがぐちゃぐちゃにならない手指の形を準備できているでしょうか。消しゴムを使って文字を消そうとする場面では、紙が破れないよう無意識のうちに力を加減しているでしょうか。
もし、湯気の立つ熱いお茶が入った湯呑みを躊躇せず掴むなど、これから触れようとする物・操作しようとする物が何であろうと乱暴に手を伸ばしたり、あるいは、過度に恐る恐る手を伸ばそうとしているのなら、協調運動や視知覚認知、注意機能全般を精査しましょう。
その日に限って家族といざこざがあってイライラしていたり、よく眠れていなかったりと、メンタル面の問題が影響している場合もありますから、多角的に判断することが望ましいです。
もちろん、単に椅子座位(または立位)が安定せず、上肢をうまくリーチできないために目的に沿わない動きになってしまった、という理由も考えられます。上に挙げたように、洗濯物を取り込む手つきや熱い湯呑を持つ手の動きに違和感をおぼえたら、他職種のスタッフにも事象を具体的に共有し、相談しましょう。

「洗濯」は、単に筋力や関節可動域が確保されていることだけではなく、さまざまな技能を幅広く必要とする作業であることは言うまでもありません。緩やかな作業に見えても内容によっては、庭仕事や軽いサイクリング(4~5METS)と同等の運動強度に及ぶこともあるため、身体への負担や栄養状態に配慮し段階的に導入するようにしましょう。
また同じ「洗濯」という作業でもそれぞれの方の生活習慣によって、洗い方、干し方、畳み方などのルールが異なることもよくあります。作業療法士側からの「押しつけ」にならないよう、対象者とよく相談をしながら作業を進めることが大切です。

中山 奈保子(なかやま なおこ)

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士。
1998年作業療法士免許取得後、宮城県・福島県内の病院および施設、作業療法士養成校の専任教員等を歴任。
2011年、東日本大震災で被災したことを期に災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足後、二児の母・作業療法士として「病気や障害、災害に負けない心と身体を」をテーマに執筆・講演活動などを行っている。2018年より、学校法人 葵会学園「千葉・柏リハビリテーション学院」作業療法学科教員。


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