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第3回「掃除」と日本の文化

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自分で身の回りをキレイに整える「掃除」。学校の教室を雑巾がけする子どもたちの姿や、大晦日を前に家族揃って本格的に大掃除をする習慣は、私たち日本人ならではの文化と言っても過言ではありません。最近では高性能のお掃除ロボットが普及しつつあり、今後、さらにあらゆる作業が「自動化」される可能性もなきにしもあらずですが、私たち日本人の「生活」や「四季の移ろい」を実感できる作業の一つとして、ぜひとも一部は継承し続けたい作業と言えるのではないでしょうか。

作業療法場面における「掃除」

作業療法では、身体機能障害の回復や日常生活動作の獲得、生活リズムの改善などを目的に、テーブル拭きや雑巾がけ、掃除機、窓拭き作業などが用いられます。手順や道具の選択などに個性が表れやすい作業であるため、これまでの習慣に十分配慮した形で導入することが望ましいでしょう。導入の際は、掃除という作業の目的や身体的・精神的効果をご本人、場合によってはご家族に事前にお伝えするのは言うまでもありません。「患者にリハビリ室の掃除をさせるなんて!」と誤解してしまう方もいることを考え、こちらの価値観だけで作業を行ってもらうのは避けましょう。また、対象者の年齢や障害の内容、程度にかかわらず、作業療法場面で掃除の作業を導入する際は、身体機能や認知機能全般を把握しなければなりません。導入しやすい課題として、以下の3例について評価のポイントや注意点について考えてみましょう。

 

1)窓拭き

立位バランスやスムーズな上肢運動、視野の確保や注意力など、様々な身体・認知機能を複合的に用いる作業の一つ。少しずつ拭く高さや範囲を広めていき、適時汚れた雑巾を洗って絞る工程をはさむなどの段階づけも可能です。つい遠くまで手を伸ばしてしまうため、関節可動域や痛みの有無、立位バランスの状態を把握しておく必要があります。

2)床のモップがけ

ある程度の可動域を必要とする窓拭きに比べ、筋力の回復途上にある方や立位バランスが不完全な方にも導入しやすい作業です。電気掃除機など、道具を変えてスキルを高めるのもアイデアの一つ。両手でしっかり把持すれば立位バランスを取りやすくなりますが、例えば、体幹の回旋動作が不十分であったりすると、一方向にしかモップを動かせない方も多いでしょう。部屋の大きさ・形、家具の位置に対して、うまく進路を設定できない方もしばしば見られます。このような場合は、病前の生活様式に近い環境を設定し、馴染みのある道具を準備するなど工夫することで、対象者のモチベーションを維持・向上させる可能性があります。

3)居室の整理整頓

身の回りの整理整頓は、安全な自立生活を送る上で欠かせない作業です。いるもの・いらないものを分け、カテゴリー別に小物を分類するだけでも気持ちがスッキリ。もちろん、障害の内容や程度によりますが、気分転換を目的とした作業としてもピッタリではないでしょうか。ただし、対象者さんの中には、他者にパーソナルスペースへ入られることや、作業に手を加えるよう指示されることに抵抗を示す方もいるかもしれませんので注意が必要です。

訓練から役割、日課へ

はじめは、筋力向上や関節可動域拡大を名目、受身な態度で作業を進める対象者さんも多いでしょう。「部屋の掃除なんてしたことがない」「お役に立てるのならやります」というモチベーションの方も見受けられますが、次第に「自分から作業に取り組み始めた」などの変化を表す方にも、たびたび遭遇します。
掃除は、身近な作業の中でもより「生活」を実感できる作業です。作業を通じ、病前の暮らしを思い出す方も少なくないかもしれませんが、同時に、近い将来の、自分の能力が向上したときの生活イメージを描き始める方も多いはずです。やりがいが実感できればできるほど、新たな日課として、身の回りの掃除整理整頓が習慣化していきます。例えば、これまで「家の掃除は妻任せ」としてきた方が、自立して生活するためのスキルとして前向きに取り組むことや、主夫としての役割をイメージし始めるきっかけになることもあるのです。

中山 奈保子(なかやま なおこ)

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士。
1998年作業療法士免許取得後、宮城県・福島県内の病院および施設、作業療法士養成校の専任教員等を歴任。
2011年、東日本大震災で被災したことを期に災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足後、二児の母・作業療法士として「病気や障害、災害に負けない心と身体を」をテーマに執筆・講演活動などを行っている。2018年より、学校法人 葵会学園「千葉・柏リハビリテーション学院」作業療法学科教員。


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