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第14回ボールを使った精神科作業療法~統合失調症の場合

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精神科領域の作業療法では、対象者との面接や行動観察を中心とした作業療法評価に基づき、多職種連携のもと、対象者の回復段階に応じた目標の設定・介入が行われます。今回は統合失調症の作業療法を例に、一つの活動をどのようにアレンジしていったらよいか考えていきたいと思います。


精神科作業療法における対象者の評価

精神科作業療法は、対象者の心身機能、精神・心理機能、対人関係技能、ADL・APDL技能、環境といった生活機能全般を把握し、作業療法士と関連する多職種の連携により、対象者らしい社会生活に近づけるよう介入計画を行います。この流れは、他領域の作業療法と大きな違いはないかもしれません。
例えば、身体障害領域と比較すると、精神科作業療法の場合、観察と面接を中心に評価を進めていくことになります。観察と面接の手法は下表のように分類されます。
精神科作業療法では、特性の異なるさまざまな作業場面において観察や面接を重ね、比較・検討することにより対象者の個性や利点、問題点を見い出し、目標や介入内容を選択していきます。

表1:主な観察・面接方法

観察 参与観察:OTが集団の一員となって対象者を観察する
非参与観察:OTが第三者として対象者を観察する
統制的観察:あらかじめ決められた行為を観察する
面接 構造化面接:あらかじめ決められた質問項目に従って面接する
半構造化面接:面接の一部分のみあらかじめ決められた質問項目を用いる
非構造化面接:対象者の状況に応じ臨機応変に質問項目を変えながら面接を進める
フォーカス・グループ・インタビュー:対象者を含む小集団において、OTが司会者となり
自由な語り合いの中から対象者の声をひろう

統合失調症の回復段階と作業療法の目的~急性期・回復期・維持期~

急性期
病気や環境変化による強いストレスにさらされる急性期においては、心身のリラクゼーション(ストレス反応の軽減・適度な休養)を図る活動から、対象者に負担の少ない個別の作業活動(非言語的活動~言語的活動)、集団活動(平行集団)へと徐々に導きつつ、現実感や安心感をもってもらえるようにしていきます。対象者が心地よいと感じる作業や環境を設定するのが、私たちの主な役割です。それらの活動を通じ、少しずつ基本的な生活リズムを回復させていきます。

回復期
回復期では、社会生活(退院準備)を視野にいれつつ、他患者との交流を楽しみ、自分自身の興味や関心に目を向けていきます。体力づくりを目的とした集団活動も効果的ですが、活動範囲が広くなるぶん、新たなストレスや挫折、喪失感を体験する対象者も少なくありません。自己能力や現実に向き合う時期ともいえるため、その都度、リラクゼーション方法を自分で取り入れてみたり、悩みや問題を解決する方法を具体的に学んだりする機会を取り入れるのも大切です。

維持期
維持期では、活動性を維持し、それぞれの居場所で閉じこもらないようにしましょう。身近な社会や仲間とのつながりを築くことが大切です。また、加齢とともに心配される生活習慣病や介護を予防するための運動や、食生活の改善を目的とした活動を通し、自分自身の健康や生き方に目を向けてもらうための介入も行うとよいです。

「ボール」を使った活動アイデア

では、統合失調症の回復段階に沿った作業療法の一例として、「ボール」を使った活動を考えてみましょう。
急性期では、リラクゼーションと心地よさ、ストレスの軽減を重視します。はじめは、比較的簡単なキャッチボールでさえ、動きがぎこちなく、身体がこわばって見えるかもしれません。身体の使い方を忘れてしまったかのようにぎこちない動きをする場合は、上肢と体幹のストレッチを行い、筋の柔軟性や感覚の活性化、自律神経系の調整を取り入れるとよいでしょう。十分な粗大運動がこなせるようになるまでは、転倒にも要注意です。

回復期、維持期に入ると、体力回復や仲間づくりといった一つの目的のもとに集まった集団での活動も増えるでしょう。バレーボールやソフトボールなど、本格的な球技を取り入れる施設も多くみられ、競争心や責任感、役割感をもって活動に参加できる方も増えるかもしれません。
一方で、まだまだ激しい運動は避けたい方、高齢の方にとっては、集団内でボールを受け渡しながら会話をするだけでも、この時期に大切な他者との交流を楽しむことができるのではないでしょうか。ボールがない時はボールがあるかのように、「次は大きくて硬いボールをまわしますよ」「次はとっても小さな、ガラスのボールです」など、ボールの大きさや素材を指定しキャッチボールをすることで、大変盛り上がります。

以上のように、ボールを使った活動一つをとってみても、たくさんのアイデアが挙げられます。
私が作業療法士養成校に入学して間もない頃、恩師から「ハンカチ1枚で10以上の遊びを考えられるようになりなさい」と言われたことがありました。ハンカチを手にする度、折ったりまるめたりしてアイデアを出そうとしていたことを思い出します。
臨床家は、単にアイデアを出すだけではなく、対象者の病気や障害の内容、回復過程、生活機能、個性に見合った作業を検討しなければなりません。しかしその時間こそが、作業療法士が最も仕事を楽しいと感じられる瞬間なのではないでしょうか。

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中山 奈保子(なかやま なおこ)

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士。
1998年作業療法士免許取得後、宮城県・福島県内の病院および施設、作業療法士養成校の専任教員等を歴任。
2011年、東日本大震災で被災したことを期に災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足後、二児の母・作業療法士として「病気や障害、災害に負けない心と身体を」をテーマに執筆・講演活動などを行っている。2018年より、学校法人医療創生大学「千葉・柏リハビリテーション学院」作業療法学科教員。


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