SAMさんが挑むシニアダンス- 「医療・介護」とダンスの接点2016.12.14
「ワン、ツー、スリー、フォー、斜め、斜め。オープン、オープン、クロス、クロス。いいですね。皆さん、できてますね」―。
初冬のある日の午後。東京都内のホテルの宴会場の一室で、ダンスを中心とした音楽グループTRFのメンバーの一人でダンサーのSAM(サム)さんが、イベント来場者にダンスの手ほどきをしていた。【君塚靖】
会場は満員で、熱気にあふれていた。来場者はSAMさんの丁寧な説明に聞き入っていた。まずは手首などのストレッチに始まり、続いて両手、両足を上下に動かす手順、その後には足を前後・左右に移動させるステップを教わっていた。約1時間のレッスンの最後には、音楽に合わせてダンスプログラムを通しで踊った。上手にできる人もいれば、何となくステップが怪しい人もいたが、皆笑みがこぼれていた。
SAMさんがプロデュースしたダンスプログラム「ダレデモダンス」は、医師や理学療法士の監修の下、安全性と運動性を兼ね備えていることを売りにしている。高齢でも趣味やさまざまな活動に活発で元気な、いわゆるアクティブシニア層を対象として、プログラムを指導するレッスン会を全国で開催していく予定だ。
SAMさんにインタビューした。
CBnewsの取材に応じるSAMさん
Q、アクティブシニア層向け「ダレデモダンス」をつくったきっかけを教えてください。
今から4年前、TRFの20周年の時に、ファンの皆さんにダンスで還元できないかと考えて、「TRF イージー・ドゥ・ダンササイズ」というDVDを出しました。このダンササイズは、ダンスの経験がない人向けに、シェイプアップや健康増進のためにつくりました。対象年齢は30-40歳代にしていて、プログラムには少し激しい動きも盛り込んでいます。
そのダンササイズの評判がよかったので、もっとダンスの可能性を広げようと、「ダレデモダンス」という一般社団法人を立ち上げました。タイミングとしても、2020年に東京オリンピック・パラリンピックがあるので、それに向けて僕たちの大先輩である高齢の方々に元気になってもらおうと思い、「ダレデモダンス」をつくりました。
自分の母も高齢になっていますし、私の実家は病院なので、高齢者の健康維持には、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)やメタボリックシンドロームなどへの対応が重要との話はよく聞いており、ダンスが有効ではないかと以前から考えていました。いとこに心臓リハビリテーションを専門とする医師がいて、心臓リハビリにはダンスがすごくいいというアドバイスもくれました。
Q、シニア向けダンスということで、プログラムをつくる上で注意した点はありますか。
これについては、だいぶ勉強しました。ダンスプログラムは、医師のほかに、理学療法士と協力して考えました。高齢の方もいろいろで、基本的には“元気”な高齢者を対象にしています。健康寿命を延ばすというのが趣旨ですので、何歳になっても自分の足でしっかり歩けることを目標にしています。
大事なのは足腰です。腿上げやキックをすることによって、筋肉が付きます。それにジャンプをすることによって、ふくらはぎを鍛えることができます。プログラムでは、どちらかというと上半身より、下半身に重点を置いています。
また、プログラムの中にはバウンドする動きがあるのですが、理学療法士のアドバイスを参考にして、ひざの悪い人には、ジャンプをする動きに代えてできる別の動きをお勧めしたりしています。そのような注意点も盛り込んでいます。
Q、今後、どのような展開にしたいと思っていますか。
僕は、ストリートダンス出身で、それにこだわってストリートダンスをベースに、「ダレデモダンス」のプログラムをつくりました。日本には、ラジオ体操があります。この体操は、全身運動が盛り込まれていて、素晴らしいプログラムです。「ダレデモダンス」が今後、発展していって、“ラジオダンス”のようなものになって、全国に普及すればうれしいですね。
出典:医療介護CBニュース
セラピストプラス編集部からのコメント
1990年代を席巻した元TRFのメンバーで、ダンサーとしても有名なSAM(サム)さんが医師や理学療法士の監修のもと、プロデュースしたダンスプログラム『ダレデモダンス』が安全性と運動性を兼ね備え、高齢者でも楽しめるプログラムとして注目を集めています。4年前、初心者やダンス未経験者向けにDVD「TRF イージー・ドゥ・ダンササイズ」を出したSAMさんは、さらにダンスの可能性を広げるべく『ダレデモダンス』なる一般社団法人を立ち上げ、高齢者を元気にするダンスを考案しました。ラジオ体操のように、このダンスを誰でも気軽に楽しめるよう、全国各地でレッスン会を開催していく予定です。