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医療 介護業界のトレンドを体感する、第5回 医療と介護の総合展(大阪)2019.02.25

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第5回、医療と介護の総合展(大阪)が2月20日から22日まで、インテックス大阪で開催されました。
日本最大級の総合展では、6つの展示会場がヘルスケア・医療機器開発展、医療IT EXPO、病院運営支援EXPO、医療機器・設備EXPO、地域包括ケアEXPO、介護&看護EXPOに分かれており、併催展示会としては再生医療 産業化展、インター フェックス大阪。
介護甲子園も行われています。
後援は厚生労働省・三師会・四病協を含む医療介護関連107団体。
参加企業は日本・海外合わせて780社です。

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アメリカ、中国を始めヨーロッパ各国・パキスタンなどイスラム圏まで、海外から出展した企業は大小さまざま。企業同士の商談が弾むブースあり、じっとロボット介護やリハビリ、最新医療器具に見入る来場者あり。医療介護業界のリーダーシップをとる著名な講演者のセミナー会場には聴講希望者が詰めかけ、真剣にメモを取りながら頷く姿も見られました。各会場の基調講演には外国からの来場者も混じり、巨大展示会場は医療介護関係者の熱気に包まれていました。

会期中、全会場合わせて約200の講演が行われましたが、20日に開催された日本病院会 相澤 孝夫氏・日本総合研究所 寺島 実郎氏それぞれによる基調講演や、財務省 宇波 弘貴氏、経済産業省・厚生労働省・内閣官房の江崎 禎英氏による特別講演は満員でパイプ椅子を増設し、立ち見が出るほどの賑わいを見せました。
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編集部が注目した基調講演・特別講演4つを下記にまとめます。

病院運営支援 EXPO/医療機器・設備 EXPO基調講演では、日本病院会 相澤 孝夫氏と日本総合研究所 寺島 実郎氏が「関わる人が幸福な医療の実現に向けて」というテーマについてそれぞれの立場から講演。医療と介護の総合展(メディカルジャパン)特別講演では「どう守る?国民皆保険」というテーマで財務省 宇波 弘貴氏と経済産業省・厚生労働省・内閣官房の江崎 禎英氏が講演しました。

1. 病院に勤める人々の「やりがい」をどう作るか
(一社)日本病院会 相澤 孝夫氏

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病院は、病院として目指す医療が実現できるように、組織として実践する医療の質(医療の質)と医療サービスの質(病院の質)の継続的向上を図るマネジメントを行う。
それと共に、病院が目指す医療や医療サービスを継続して希求できるように組織・ヒト・設備・機器・情報・資金など、資源のマネジメントを行うことで付加価値を創造し、社会に貢献する。それが病院の本質です。
そのためにまず必要となるのは、自分の病院がどんな医療をするのかビジョンを決めることです。文化・規範・ミッションや、行っている医療の実績とその推移、また、病院を取り巻く環境の変化(時代の要請)からこのビジョンは決められます。
目的は何か、何を提供するかを決めた後は、以下のフローで考えていきましょう。

1.経営ビジョン・経営戦略の決定
2.部門・部署機能(持つべき・強化すべき機能)の決定
3.そのため必要となる仕事の見極め
4.そのような職場で求められる人材のタイプを確定
5.求められる人材を獲得・育成するための人材マネジメント
6.人事システム(処遇・評価・雇用・キャリアパス・人材育成など)

この順番にスケールの大きいものから小さいものへと考えていくと具体的になるでしょう。

知的労働者には、自己実現のための「自立」(課題を自ら作り出す)と、自律(仕事のPDCAを自ら回す)が欠かせません。
人と組織を活性化させ目標を達成するためには、ニーズと機会の変化に応じて、組織の職員を成長させ、目標達成に貢献してもらうことが大事です。そして能力とモチベーションを最大限高め、組織が最大限の効果を上げるには、そうなるための具体的な仕掛け・仕組みが必要です。
病院運営は、「この病院の理想の医療は何か」に始まり、最終的に大事なのは総合的な人間力です。人間は、自分でやることを決め、自分で実行し、透明で適正に評価されたときに、最も効果を発揮すると思います。人材は「人財」です。病院で働く全ての人のやりがいをどのように見つけていくか。それがリーダーの役目です。

2.ジェロントロジー~異次元の高齢化社会を生きるための処方箋~
(一財)日本総合研究所 寺島 実郎氏

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現在日本の高齢化率は世界に類を見ないレベルで、65歳以上の人口は日本全体の約4割に迫りつつあります。
田舎の高齢化社会と都市郊外型の高齢化社会がありますが、より自分が危機感を感じるのは都市郊外型高齢化社会です。特に典型的だと思うのは、東京近郊国道16号線ぞいの団地。この辺を孤立させず田舎の農業に住人が参加することによって状況が改善するのではないでしょうか。することがなく、心の支えがない状態が続けば、精神の健康を保つのは難しくなります。
役所の窓口などで頻繁にクレームを入れる人たちを見てみると、70歳以上の男性が圧倒的に多いです。自己紹介をお願いしたときに80歳になっても「元○○会社専務」など20年前の会社名を中心としてしまう人も多く、元気なのにやることが見つけられない状態は人間に悪影響を及ぼしていると言えるでしょう。
生き物と向かい合っている人は、心の健康を保ち続けていられる方が多いです。人と会う、ペットを飼う、植物を育てる(農業)など、生き物と向かい合うことによって生きがいを見つけることが出来るのです。

医療と介護の総合展(メディカルジャパン)特別講演 「どう守る?国民皆保険」では、社会保険を守るためにこれから政府がどのような対策を取っていくかが示されました。

3.社会保障と財政 財務省
主計局次長 宇波 弘貴氏

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超高齢化社会のインパクトは財政を直撃しています。日本の国としての借金は1000兆円を超え、このままにしておくわけにはいきません。
平成31年度の一般会計予算は約98兆円ですが、この30年でこれほど支出が増えたのは社会保障費だけで、約10兆円から約34兆円規模まで膨れ上がりました。よく言われる文教・防衛費や公共事業費などの変動はこれに比べればほぼ変わらないと言っても良いです。国民皆保険を守るためには、早急に社会保険の給付と負担のバランスをとる必要があります。
社会保障費の増大に対抗するには以下の3つの方策があります。

1. 経済成長する
2. 負担を上げる
3. 給付額を下げる

しかし3つの方策それぞれ単独では状況があまり改善しないので、全てを並行して行うしかありません。
1.の経済成長をするには、働き方改革をし、人づくりをして生産性を高めていく。
2.の負担額を上げるため、消費税を増税する。国民全員が利用できる保険を完備した社会保障財政を安定させるためには消費税率が20%(フランス、イギリス並み)かスウェーデン(25%)ほどにならないと無理ですが、10%にあがるだけでも効果は見込めます。
3.の給付額を下げるという部分では、何も対策をしなければ年に約6500億円ずつ増えていくことを考えて少しでも減らせるよう対応していきたいです。

ジェネリック医薬品の使用や、予防介護を広める活動がされています。また、病院のベッド数の適正配置も必要です。急性期病院を減らし、ニーズの高くなっていく回復期を増やし、薬局数も最適な数に合わせて減っていくようになるでしょう。急性期ベッド数が大幅に余剰なままなど適正な配分が出来ない自治体は、診療報酬の単位あたりの支払額を下げるなどの対応も議論するようになるかもしれません。
フランスでは医薬品の本人負担率が抗がん剤では0%、胃薬では100%というように必要な薬品に手厚い支出をするシステムです。こちらも参考にしていきたいです。
人数が足りなくなることが予想される医療介護専門職のサポートや労働効率化のためIT技術とロボットの活用などもあわせて推進していくことになるでしょう。

4. 超高齢社会への対応~社会保障制度改革の視点~
経済産業省商務・サービスグループ政策統括調整官 厚生労働省医政局 統括調整官 内閣官房 健康・医療戦略室 次長 江崎 禎英氏

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人口ピラミッドを元に戻し、少子化を防ごうという考えは不可能だと思います。2015年の高齢化率は世界201カ国中、日本が世界一で26%、2位がイタリアで22%、3位がドイツで21%です。いますぐ出生率が4倍になっても、人口構造が問題なかったとされる時代に戻るのに60年かかります。
外国人労働者を必要なだけ呼んで、バランスをとればいいという意見もありますが、彼らは「労働力」ではありません。「人」です。家族もいますし、年もとります。病気にもなります。都合の良い調整弁のように考えるべきではありません。
また、日本の高齢化について誤解されていることがあります。2020年からお年寄りが増えるわけではありません。15歳~64歳の人口が減るだけです。日本はすでに国連で言う「超高齢社会」の区分すら超えた高齢社会ですが、高齢化率は下げられないでしょう。

でもなぜ「お年寄りがたくさん生きて、社会が高齢化しているのが問題だ」みたいに言われなければならないのでしょう?これはむしろ日本が世界に誇れる話ではないですか。
かつては人生50年でした。今は人生100年時代、2周目の人生が楽しめるということです。2周目の人生における「幸せの形」を見つけること。それが大事だと思います。
「超高齢社会」から、「健康長寿社会」に変わりましょう。
そもそも働ける年齢が15歳から64歳だと規定し続けることが間違っています。皆さんの周りに物凄く元気なお年寄りがいませんか? 80代でもエネルギッシュ。多くの方が元気に健康に過ごし、75歳まで社会の中でやりたい役割を果たせれば、何の問題もないはずです。それにはどうすればいいか。大事なのは、以下の4点です。

1. 食事
2. 運動
3. わくわく
4. 薬

食事はたんぱく質を多くとることが重要です。女性は特に。わくわくする、というのは自分が社会の役に立っている実感を得たり、恋をしてときめいたりして、精神の健康を保つのに必要です。

日本の社会保険の考え方は古い時代に拠っています。作られた当時は
「感染症型・罹った病気を治す医療・できなくなったことを補う介護」でした。
「生活習慣病/老化型・予防や進行管理をする医療・自律を支える介護」が、現在に適していると思います。
お年寄りが弱いものとされ、家や施設で何もさせてもらえずずっと「○○をしてくれてありがとう」と言い続けるなら弱って本当に何も出来なくなってしまいます。「食事・運動・わくわく・薬」でお年寄りが健康長寿になって、地域の仕事や昔家族でやっていた役割などを担うようになり、色々な人に「ありがとう」と言われる。それが幸せな形ではないでしょうか。

盛況のうちに幕を閉じた第5回医療と介護の総合展、行政と民間の協力の場、また海外企業・団体との交流・商談の場として成長していくことが望まれています。

文:セラピストプラス編集部

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