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月経困難症への対応~宮坂尚幸教授が解説2019.04.17

セラピストプラス編集部からのコメント

月経時に起こる不快な病的症状全般を言う月経困難症。頭痛・腹痛・腰痛や吐き気、いらいら、憂鬱などいろいろですが、その際の段階別の対応法を、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生殖機能協関学分野の宮坂尚幸教授が解説します。

月経困難症とは,月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状を言う。下腹部痛,腰痛,腹部膨満感,嘔気,頭痛,疲労・脱力感,食欲不振,いらいら,下痢および憂うつの順に多くみられる。月経前に不調が出現し,月経開始とともに減退ないし消失する月経前症候群や月経前気分不快症とは区別して考えるべきである。子宮内膜症,子宮腺筋症,子宮筋腫,帝王切開瘢痕部症候群などの,器質的疾患に伴って生じるものとそうでないものに大別され,前者を器質性月経困難症,後者を機能性月経困難症という。器質的疾患については他稿に譲り,本稿では主として機能性月経困難症について述べる。

▶診断のポイント

機能性月経困難症の診断には,過去の月経歴を含めた詳細な問診を行うとともに,身体診察,内診,経腟超音波検査,必要に応じて血液・尿検査やCT,MRIなどにより器質的疾患の除外を行う。月経時であっても,これまでにない強い疼痛を訴える場合には,偶発的に発症した虫垂炎,骨盤腹膜炎,尿管結石などと鑑別する必要がある。また,特に月経周期が不規則な女性では,流産や異所性妊娠による不正性器出血を月経と誤認している場合があるため,妊娠の可能性については確実に否定する必要がある。機能性月経困難症は,一般的に初経後2~3年してから始まり,経血量の多い月経初日および2日目頃に症状が増強することが多く,経腟分娩を経験すると軽快する。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

機能性月経困難症は,分泌期子宮内膜から産生されるプロスタグランジン(prostaglandin:PG)などの内因性生理活性物質による子宮の過収縮と,月経血の排出経路である子宮頸管の相対的な狭小が関与している。機能性月経困難症であっても,月経血の逆流により将来の子宮内膜症発症の素因となる可能性も指摘されている。一般に無排卵性月経では月経困難症を伴わない。治療は対症療法が中心であり,シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)産生抑制によりPG合成を阻害する非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs;アスピリン,ロキソプロフェン,ジクロフェナク,メフェナム酸,イブプロフェン,ナプロキセンなど)が用いられるが,NSAIDsはCOX-1,COX-2の両者を阻害するため,COX-1阻害に起因する消化管粘膜障害に注意が必要である。その点で解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンは比較的副作用が少ない。

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬は,子宮内膜の増殖を抑制し経血量を減少させることから月経困難症に有効であり,月経前症候群に対する効果も報告されている。ノルエチステロン/エチニルエストラジオール配合錠,ドロスピレノン/エチニルエストラジオール配合錠,レボノルゲストレル/エチニルエストラジオール配合錠が保険適用となっている。これらの薬剤は血栓塞栓症などの重篤な副作用の報告があり,投与禁忌症例が存在するので注意が必要である。レボノルゲストレル放出子宮内システム(levonorgestrel-releasing intrauterine system:LNG-IUS)は黄体ホルモンが局所に作用して子宮内膜を萎縮させることで,過多月経と同様に月経困難症にも効果がある。1回の挿入で約5年間の効果が期待できるが,不正性器出血が高頻度に認められること,未産婦への挿入は容易ではなく,また,子宮内腔に変形がある場合は滑脱に注意が必要である。月経困難症は漢方医学で言う「血の道症」のひとつであり,漢方医学的診断に基づいて処方することで,即効性はないものの4~12週間の投与で改善を期待できる。虚証には当帰芍薬散,中間証では加味逍遙散,実証では桂枝茯苓丸が用いられる。

器質性月経困難症でも,原疾患の種類,程度,年齢,婚姻状況,挙児希望の有無などを総合的に判断して,上記の薬物療法を選択することがある。

▶治療の実際

【鎮痛薬】

一手目 :カロナール®500mg錠(アセトアミノフェン)1回1錠1日3回(毎食後)(月経開始後1~3日間,内服)

二手目 :〈処方変更〉ロキソニン®60mg錠(ロキソプロフェン)1回1錠1日3回(毎食後)(月経開始後1~3日間,内服)

三手目 :〈処方変更〉ボルタレン®25mg錠(ジクロフェナク)1回1錠1日3回(毎食後)(月経開始後1~3日間,内服)

【低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬】

一手目 :ルナベル®配合錠ULD(ノルエチステロン1mg/エチニルエストラジオール0.02mg)1回1錠,一定の時刻に21日間連続服用後7日間休薬,以後これを繰り返す
初回は月経開始後1~5日目までに内服開始

二手目 :〈処方変更〉ヤーズ®配合錠(ドロスピレノン3mg/エチニルエストラジオール ベータデクス0.02mg)1回1錠,一定の時刻に28日間連続服用,最後の4錠は偽薬のため休薬期間を置かずに29日目から次の周期の錠剤を服用し,以後これを繰り返す
初回は月経開始1日目から内服開始

三手目 :〈処方変更〉ジェミーナ®配合錠(レボノルゲストレル0.09mg/エチニルエストラジオール0.02mg)1回1錠,一定の時刻に21日間連続服用後7日間休薬,以後これを繰り返す。初回は月経開始後1~5日目までに内服開始

四手目 :〈処方変更〉ヤーズ®フレックス配合錠(ドロスピレノン3mg/エチニルエストラジオール ベータデクス0.02 mg)1回1錠,一定の時刻に120日間連続服用可能。24日目までは出血の有無にかかわらず連続服用する。25日目以降に3日間連続で出血(点状出血を含む)が認められた場合,または連続投与が120日に達した場合は4日間休薬

五手目 :〈処方変更〉ミレーナ®52mgシステム(レボノルゲストレル)1個。月経開始後7日以内に子宮腔内に装着

【漢方療法】

一手目 :ツムラ当帰芍薬散®エキス顆粒2.5g(当帰芍薬散)1回1包1日3回(食前または食間に内服),数カ月間

宮坂尚幸(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生殖機能協関学分野教授)

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出典:Web医事新報

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