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対人関係が築けない人に多い、境界性パーソナリティ障害の治療法2019.05.23

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セラピストプラス編集部からのコメント

対人関係がうまく構築できない人に多い境界性パーソナリティ障害。
帝京大学医学部精神神経科学講座 林 直樹主任教授が解説します。

 ▶境界性パーソナリティ障害とは

境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder:BPD)は,強い苦痛や重大な対人関係の障害をもたらし,臨床的に問題になることの多い精神障害である。BPDの治療については,努力の積み重ねが必要ではあるものの,精神療法的アプローチ,薬物療法などが奏効すること,長期予後が悪くないことが明らかにされている。

 ▶診断のポイント

BPDは,米国の精神障害の診断マニュアル(DSM-5)第2部のBPDの診断基準項目を確認することによって診断されるのが一般的である。この診断基準は,①「対人関係の障害(対人関係の不安定さなど)(第2,3,7,9項目)」,②「行動コントロールの障害(第4,5項目)」,③「感情コントロールの障害(第1,6,8項目)」,の3種にまとめることができる。その診断には,このうちの5項目以上を満たすことが必要である。このほか,DSM-5第3部の代替診断基準を用いることができる。それを使うと,患者のパーソナリティ特性も同時に把握することができる。

この診断には,多くの情報(患者や家族からの情報や心理検査による評価など)が必要であり,治療開始後しばらくして十分情報が集まってから診断されることがしばしばある。

 ▶私の治療方針

【治療の前提的事項・原則】

①共同作業としての治療:BPD治療は,患者と治療スタッフとの共同作業であり,そこでは,自立した個人同士の契約的関係が重視されねばならない。たとえば,治療目標の設定や治療構造化(治療契約)についての話し合いでは,治療を効率的に進めることと同時に,なるべく治療を患者の意向に合わせることがめざされる。

②患者の力を伸ばすこと:BPD治療の目的には,労苦や葛藤を減じること,社会適応の促進,などがあるが,その中で最も本質的なことは,患者の本来持っている力を伸ばすことである。そのためには,患者の力を認めて強化する,実績を上げるよう促す,といったことによって,それが真の実力となるように援助をする。

③患者の心構え(動機づけ)の把握:治療を組み立てる上でポイントになるのは,患者が治療に対してどのような心構えでいるか,である。患者が協力的に見えても治療に取り組む心構えが不十分ならば,実質的な進展は期待しがたい。この段階を進めるためには,患者の治療への動機づけを強めることが必要である。同時に,問題意識を強化するために自己観察(セルフモニタリング),内省(内面への気づき)を促すことを積み重ねる。BPD治療では,この段階に十分な期間が必要になることが稀でない。

【説明と治療契約】

①診断名告知と心理教育:治療を開始する際には,患者に診断名を告知し,それについての心理教育を十分に行う。そこでは,患者のスティグマを強めないように,BPDが「パーソナリティ(人格)」や「人柄」の問題ではないこと,中長期の経過の中で改善が見込めること,人生経験を重ねることによって症状が軽快すると考えられていること,を強調する。

②治療における約束・治療契約:治療では,治療についての理解に食い違いが生じて治療関係での問題が顕在化することがある。それゆえ,治療では,尊守されるべき治療の枠組みを定めていくこと,つまり,治療状況の構造化を進めることが重要である。

 ▶治療の実際

【精神療法的アプローチ】

患者が自分の問題を認識できるようになると,それへの対策の検討が開始される。次には,様々な対策を考案・実施し,その成果を見て次の対策を考える,というプロセスが重ねられる。そこでしばしば課題となるのは,①認知・思考の修正〔否定的自己イメージや世界観,二極思考(全か無かの極端な思考),思考の不足・過剰,こだわりの強さなどの修正〕,②怒り,絶望などの激しい感情をコントロールし受け入れること,③(衝動的にではなく)計画的に自分に相応しい行動をすることである。そこでは,ⅰ)自分の認知,感情,行動,およびその特性を把握する,ⅱ)その自分や他者への意味について考えてもらう,そしてⅲ)自分にふさわしい認知,感情のコントロール,行動の選択について考えてもらう,という順で作業が進められる。さらに,これらの技能を日常生活における認知,感情,行動の自己観察と組み合わせて応用するように促す。

また,④身体(自己)感覚への働きかけと気づきの促進(たとえば,呼吸法とストレッチ運動によるリラクセーション法の教示)も行う。さらに,それを現実の生活の様々な局面に広げてもらうようにする。

【薬物療法】

気分安定薬や非定型抗精神病薬による薬物療法には,衝動行為や感情不安定を抑える効果が期待できるので,治療ではその導入を図るべきである。しかしBPD患者では,一般に効果の予測が困難で,副作用が出現しやすいと考えられている。そのため薬物療法では,患者の意見に耳を傾けながら導入を進めることが必要である。

【多職種,多施設によるチーム医療・介入】

精神科医,ケースワーカーや保健師,訪問看護師などの多職種スタッフによるチーム医療・介入は,強力な介入方法である。ここにはさらに,家族,職場や学校などの関係者の協力を含めて考えるべきである。そのような関係者と専門家との協力・協働は,診療において大きな力となりうる。

【参考資料】

▶ 高橋三郎, 他, 監訳:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院, 2014.

▶ 森岡久雄, 他:境界性パーソナリティ障害. 精神科誌. 34(特別増刊号):「精神科診療マニュアル」. (2019年刊行予定)

林 直樹(帝京大学医学部精神神経科学講座主任教授)

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出典:Web医事新報

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