医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

マイナビコメディカル
マイナビコメディカル

医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

心療内科から呼吸器内科へ。呼吸困難発作を繰り返す症例はパニック障害の可能性あり2019.05.31

セラピストプラス編集部からのコメント

呼吸が苦しいと訴える患者さんは、まず呼吸器内科を受診することが多いですが、実は心療内科で扱うパニック障害が原因のケースもあります。
呼吸困難発作時に酸素低下を認めない、一定時間が過ぎると自然軽快する、気管支拡張薬が無効である、といった場合にはパニック発作/パニック障害の可能性があると、松田能宣 国立病院機構近畿中央胸部疾患センター心療内科医長が解説しています。

解説:松田能宣 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター心療内科医長)

呼吸器内科の先生方には、大変お世話になっております。呼吸器疾患の患者の診療をされていますと、呼吸困難を訴える患者が多いと思います。特に重症のCOPD患者では呼吸困難発作を繰り返す症例もしばしば経験されるのではないでしょうか。もちろん、COPDの増悪や喘息の合併による喘息発作の可能性もありうると思います。おそらく、そのような呼吸困難発作に対しては短時間作用型β2刺激薬吸入で対処をされることが多いと思います。

呼吸困難発作時に酸素低下を認めない、一定時間が過ぎると自然軽快する、気管支拡張薬が無効である、といった場合にはパニック発作/パニック障害を鑑別に挙げて頂ければと思います。COPD患者においてパニック障害の合併割合は一般人口の約10倍と言われています。問診して頂く際には、呼吸困難発作時に他にどのような症状を伴っているかをご確認して頂ければ幸いです。

その症状とは、動悸、発汗、身震い、息切れ感・息苦しさ(これはありますね)、喉がつまる感じ(窒息感)、胸部不快感・胸痛、腹部不快感・嘔気、めまい・ふらつき・気が遠のく感じ、周りが現実でない感じ(現実感の喪失)・自分自身の体から離れる感じ(離人症状)、コントロールを失う(気が狂う)ことへの恐怖、死ぬことへの恐怖、異常感覚(感覚麻痺・うずき感)、冷感・熱感になります。

この症状のうち4つ以上(息苦しさはあるので3つ以上)が突然現れ、10分以内にその症状が頂点に達するとパニック発作と診断されます。パニック障害の診断基準にはこのパニック発作を繰り返すことが含まれています。上記の症状を4つ以上認める場合には心療内科もしくは精神科にご相談頂ければ幸いです。

心療内科や精神科に相談ができない場合には、発作時にはアルプラゾラムの屯用(II型呼吸不全ではCO2ナルコーシスを起こす可能性がありますので、控えて頂いた方がよいと思います)を処方し、ベースの治療薬としてはSSRIをご検討下さい。SSRIは開始後2週目までに食欲不振・嘔気の副作用が出ることがありますので、あらかじめそのことをお伝え頂き、制吐剤を一緒に処方しておいて頂けると初期の治療中断を減らすことができます。また、効果が出るのに2週間ほどかかることもあらかじめ伝えておいて頂くことも重要と思います。パニック障害に対しては薬物治療のみならず認知行動療法も有効ですので、心療内科、精神科、心理士にご相談下さい。

繰り返す呼吸困難発作を診られた時にはぜひ上記の症状の一覧を手に持って、一つ一つ症状をご確認下さい。

結び

COPD患者が呼吸困難発作を繰り返す場合はパニック発作を鑑別に挙げ、息切れ以外の症状が同時に起きているか患者に尋ねて下さい。

>>マイナビコメディカルに登録して自分がしたい仕事ができる職場がないか聞いてみる

 

    <PR>マイナビコメディカル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  •  LINEで送る

出典:Web医事新報

おすすめ

TOPへ