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精神疾患と炎症にともに用いられる漢方薬2019.07.25

セラピストプラス編集部からのコメント

東洋医学ではもともと感染症用の処方が、そのまま精神症状にも用いられているものがあり、その代表が小柴胡湯です。小柴胡湯は約2000年前に書かれたとされる感染症マニュアルの原点「傷寒論」にも記載されています。
複数の有効成分を含有する生薬が、精神症状と感染症と双方に有効であることはあり得ます。それに加えて現在、うつ病など精神疾患の一部に「炎症が関係している」との報告が多くなされ、なぜ感染症用の生薬が精神疾患に効くのかの理由も明確になりそうです。

【精神疾患と神経炎症に柴胡剤が選択肢となりうる可能性】

 

現在,うつ病など精神疾患の病態の一部に,炎症が関係しているという報告が多くなされるようになった。東洋医学では,もともと感染症に用いてきた処方には,そのまま精神症状にも用いられているものがあり,その代表が小柴胡湯である。現在,保険診療で用いることのできる漢方薬のほとんどは約2000年前に書かれたとされる当時の「感染症マニュアル」にあたる「傷寒論」を原典としている。小柴胡湯は「傷寒論」に記載されており,感染症の中期(発症5,6日)に往来寒熱(発熱と悪寒を繰り返す),食欲不振,胸脇苦満(季肋部の脹満感または圧痛)などの主症状に用いられてきた。

一方で,構成生薬である柴胡を含む組み合わせは,わが国では柴胡剤と呼ばれ,精神症状に頻用されてきた。柴胡は感染症に対する解熱,抗炎症といった作用を有する以外に,鎮痛,鎮静といった向精神薬的作用を有する。向精神薬的な作用を発揮する複数の柴胡剤は,この小柴胡湯の生薬構成を基にマイナーチェンジしたものである。たとえば,柴胡桂枝湯,柴胡桂枝乾姜湯などがあり,小柴胡湯よりも薬効が弱く,間質性肺炎の副作用のイメージが強い小柴胡湯よりも使用しやすい。

生薬の場合,複数の有効成分を含有しているために,精神症状,感染症の双方に有効であることはありうることである。しかし,炎症という切り口により,その機序が整理されていくことにより,漢方薬の適応症がより明確になると考えられる。

【参考】

▶ Raison CL, et al:Trends Immunol. 2006;27(1): 24-31.

【解説】

田中耕一郎 東邦大学医療センター大森病院東洋医学科 准教授

>>「理学療法士をやめたいと思ったときに考えるべきこと」の記事を読んでみる

 

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出典:Web医事新報

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