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無月経・希発月経・頻発月経の治療法2019.07.31

セラピストプラス編集部からのコメント

幅広い年代の女性が悩まされる無月経・回数の少ない月経、回数の多すぎる月経。放置すると骨粗しょう症のもととなったり、妊娠しにくくなるケースもあります。これに対して医師はまずどのような治療をするか。慶應義塾大学医学部産婦人科学教室の上條慎太郎さん、浜谷敏生さんの解説です。

無月経・希発月経・頻発月経の治療法

月経とは「約1カ月の間隔で起こり,限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」と定義されている。正常の月経周期は25~38日,その変動が6日以内である。月経周期が24日以内の月経を頻発月経,月経周期が39日以上の月経を希発月経という。無月経は生理的無月経(妊娠・産褥・授乳・閉経)と病的無月経に分類する。妊娠の可能性を常に考慮し,妊娠の可能性を否定できない場合は,妊娠反応を行う。日本の平均閉経年齢は50歳前後であり,40歳未満での閉経は早発閉経として病的無月経に分類する。
病的無月経は,原発性無月経(満18歳になっても初経を認めない)と続発性無月経(既存の月経が3カ月以上停止)に分類される(表)。問診によって両者を鑑別し,原発性無月経では先天疾患の有無につき身体所見と画像検査,ホルモン検査にて精査をする。続発性無月経の場合は,身体所見,ホルモン検査を確認後,治療法選択のための負荷試験を施行する。
治療は,挙児希望がない場合にはホルモン療法,挙児希望がある場合には排卵誘発をする。器質的疾患による無月経の場合には手術療法が適応となる。また,基礎疾患による無月経の場合には原疾患の治療をする。

▶診断のポイント

月経発来は,視床下部-下垂体-卵巣-子宮内膜の連鎖により制御されている。視床下部視索前野の神経細胞からパルス状に分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)は,下垂体前葉から卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone:FSH)と黄体化ホルモン(luteinizing hormone:LH)を分泌させる。主にFSHにより卵巣での卵胞発育とエストロゲン分泌が促進され,子宮内膜は増殖期となる。LHサージ開始の約36~40時間後,ピークの10~12時間後に排卵が起こり,黄体から分泌されるプロゲステロンにより子宮内膜は分泌期となる。妊娠が成立しない場合は黄体の寿命は約2週間のため退縮し,白体となる。それに伴うエストロゲン,プロゲステロンの低下により月経が発来する。生理的無月経と病的無月経,原発性無月経と続発性無月経の鑑別,そして無月経の原因の精査をすることによって,上記連鎖のどの部分に異常があるのかを診断する。

問診:妊娠の有無,初経の有無,家族歴,発達発育歴,妊娠分娩歴,分娩時大量出血の既往,子宮内容除去術・子宮頸部円錐切除術の既往,体重,運動・精神的ストレスの有無,服用薬剤,乳汁分泌の有無,放射線治療・抗癌剤治療の有無,卵巣手術の有無,鼠径ヘルニア手術の有無。

身体所見:低身長,肥満,翼状頸,外反肘の有無,嗅覚異常,視力障害,乳房発育・恥毛など二次性徴の有無,男性化徴候の有無,腟奇形の有無。

画像検査:経腟・経腹超音波検査,MRI,CT。

ホルモン検査:ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG),FSH,LH,エストラジオール,テストステロン,プロラクチン,甲状腺刺激ホルモン。

負荷試験:ゲスターゲン検査(プロゲスチン投与)にて消退出血をきたせば第1度無月経(WHO group 2),さらにエストロゲン・プロゲスチン投与にても消退出血がなければ子宮性無月経,消退出血をきたせば第2度無月経(WHO group 1 or 3)。そのうち,GnRH投与にて消退出血をきたせば下垂体性ではなく視床下部性無月経。

【注意】

原発性無月経では対象年齢が若いことが多いため,内診に対する羞恥心に十分配慮し,MRIに診断を託すことも必要である。病名の告知や説明については慎重に行う。親とともに,わかりやすい丁寧な説明を心がける。原発性無月経の30~40%に染色体異常を認める。染色体異常を疑う場合は,遺伝カウンセリングの体制が整っている施設で十分なカウンセリングを行った上,染色体検査を行うのが望ましい。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

挙児希望がない場合は卵巣ホルモンの内服療法 ,挙児希望がある場合は排卵誘発を行う。高プロラクチン血症や甲状腺機能異常,急激な体重減少,過度な運動負荷などを認める際は,その是正を行う。先天的な処女膜閉鎖や,流産手術後の子宮腔癒着症などの器質的疾患では,手術療法が適応となる。原発性無月経では,ホルモン療法により第二次性徴の発現を促す。

【禁忌】

既往歴を含めて乳癌,子宮体癌などのエストロゲン依存性腫瘍およびその疑いのある患者,血栓性静脈炎や肺塞栓症,動脈塞栓症の患者,またはその既往のある患者は,エストロゲン製剤投与は禁忌である。

▶治療の実際

【負荷試験】

〈ゲスターゲン検査〉

一手目 :デュファストン®5mg錠(ジドロゲステロン)1回1錠1日2回(朝・夕食後,7~10日間)

二手目 :一手目の処方で消退出血があれば第1度無月経と診断する

〈エストロゲン・ゲスターゲン検査〉

一手目 :プレマリン®0.625mg錠(結合型エストロゲン)1回1錠1日1回(朝食後,10日間),プラノバール®配合錠(ノルゲストレル0.5mg/エチニルエストラジオール0.05mg)1回1錠1日1回(朝食後,プレマリン®内服終了後から10日間)併用

二手目 :一手目の処方で消退出血があれば第2度無月経と診断する

【挙児希望がない:ホルモン療法】
〈第1度無月経:ホルムストローム療法〉

月経周期21日目から7~10日間プロゲスチンを投与。

一手目 :プロベラ®2.5mg錠(メドロキシプロゲステロン)1回1錠1日2回(朝・夕食後,7~10日間),またはデュファストン®5mg錠(ジドロゲステロン)1回1錠1日3回(毎食後,7~10日間)

〈第2度無月経:カウフマン療法〉

エストロゲンを10日間投与後,11日目からエストロゲンに加えてプロゲスチンを10日間投与。

一手目 :プレマリン®0.625mg錠(結合型エストロゲン)1回1錠1日1回(朝食後,20日間),デュファストン®5mg錠(ジドロゲステロン)1回1錠1日3回(毎食後,プレマリン®開始後11日目より10日間)併用

二手目 :〈処方変更〉プレマリン®0.625mg錠(結合型エストロゲン錠)1回1錠1日1回(朝食後,10日間),プラノバール®配合錠(ノルゲストレル0.5mg/エチニルエストラジオール0.05mg)1回1錠1日1回(朝食後,プレマリン内服終了後から10日間)併用

三手目 :〈処方変更〉ヤーズ®配合錠(ドロスピレノン3mg/エチニルエストラジオール0.02mg)1回1錠1日1回(1シート28日間),またはルナベル®配合錠LD(ノルエチステロン1mg/エチニルエストラジオール0.035mg)1回1錠1日1回(28日間)

【挙児希望がある:排卵誘発】

一手目 :クロミッド®50mg錠(クロミフェン)1回1錠1日1回(朝食後,月経周期5日目より5日間)

二手目 :〈処方変更〉FSH注(ゴナピュール®,フォリルモンP®,フォリスチム®,ゴナールエフ®),またはHMG注(フェリング,テイゾー)1回50~150単位1日1回(皮下または筋注,月経3~5日目より)

三手目 :〈一手目または二手目の卵巣刺激に追加して排卵誘起〉HCG注〔ゴナトロピン®注(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)5000単位,またはオビドレル®注(コリオゴナドトロピン アルファ)250μg〕1日1回(皮下または筋注,排卵前に単回投与)

【注意】

排卵誘発をする際には,多胎妊娠や過剰卵巣刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)に注意し,複数の卵胞の発育を確認した場合にはその周期の治療のキャンセルも含めて,慎重に指導すべきである。特に多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)患者では,卵巣刺激に際して多数の卵胞が発育することが少なくないため,慎重な投与を要する。PCOS患者の排卵誘発では,フェマーラ®2.5mg錠(レトロゾール)の投与も考慮されるが,わが国では適用外使用となることに留意する必要がある。

挙児希望があり3~6周期ほど排卵誘発をしても妊娠できない場合には,生殖医療専門医への紹介が望ましい。

▶偶発症・合併症への対応

治療による薬剤性肝機能障害や血栓症等の合併症の鑑別目的に,肝機能検査や凝固系採血検査を適宜施行する。

【参考資料】

▶ Bachmann GA, et al:Am J Obstet Gynecol. 1982;144(1):98-102.

▶ 金崎春彦, 他:臨婦産. 2015;69(5):374−80.

▶ 日本産科婦人科学会, 他, 編:産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2017. 日本産科婦人科学会, 2017, p135-42.

解説:上條慎太郎(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
浜谷敏生(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室講師)

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出典:Web医事新報

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