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変形性膝関節症患者の嗜好食品 整形外科クリニック院長が解説2019.10.26

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セラピストプラス編集部からのコメント

戸田整形外科リウマチ科クリニック(大阪府吹田市)の戸田佳孝院長が、高齢者の運動能力を低下させる頻度の高い疾病である変形性膝関節症(膝OA)に関する興味深い調査を実施しました。それは104例もの膝OAの患者さんと、年齢および性別を一致させた98コントロール群を対象とした「嫌いな食品は何か?」という質問です。そこで有意に挙げられた食品は「鶏肉」「ホウレンソウ」などでした。いずれも膝OAの進行に深く関係してくる栄養素が含まれていました。

 変形性膝関節症患者の嗜好食品

戸田佳孝 (戸田整形外科リウマチ科クリニック院長)

変形性膝関節症(膝OA)患者に対して適切な食事指導を行う目的で調査を行った

104例の膝OA患者と年齢および性別を一致させた98例コントロール群を対象に「嫌いな食品は何か?」と質問した。ついで膝OAに効果的な10種類の食品の嫌い度10段階に自己評価(大好き0点,大嫌い9点に分類)させた

嫌いな食品として鶏肉を挙げた人の割合は,膝OA群9.6%でコントロール群の2%に比べて有意に高かった(P=0.034)。ホウレンソウの嫌い度は膝OA群(2.5±2.0点)がコントロール群(1.9±1.9点)に比べて有意に高かった(P=0.042)

鶏胸肉には,膝OAの進行を抑制するカルノシンと疲労回復物質イミダゾールが含まれている。ホウレンソウは納豆が苦手な人にとって有用なビタミンK補給食材であり,鉄分も豊富に含む。これらの食品が苦手な膝OA患者には調理法を工夫して摂取を勧めるべきだと考えた

 1. 研究目的

変形性膝関節症〔osteoarthritis:OA(以下,膝OA)〕は,高齢者の運動能力を低下させる頻度の高い疾患であり,吉村ら1)の疫学調査では,膝OAの人口は全国で3080万人と推定した。食事と運動が健康や寿命に影響を与えることは一般的に知られている。しかし膝OAに関しては,運動療法の啓蒙活動は活発であるが,食事に関する研究結果は広報されていないように筆者は考える。

Davidsonら2)は,ブロッコリーに多く含まれるスルフォラファンはマウスの膝軟骨でオートファジーを活性化し,膝OAの進行を抑制すると報告した。Okaら3)は,納豆やホウレンソウに多く含まれるビタミンKの1日の摂取量は,単純X線像での重症度が進行した膝OA患者ほど有意に少なかったと報告した。鶏胸肉に多く含まれるカルノシンは,老化の原因となる酸化ストレスを防御する酵素であるヘムオキシナーゼを,軟骨や滑膜細胞で活性化することによって膝OAの進行を抑制する4)。Sanghiら5)は,イワシ等に多く含まれるビタミンDを飲ませる群と飲ませない群にわけて,12カ月後の痛みの変化を検討した。その結果,ビタミンDは,膝OA患者の疼痛をごくわずかではあるが,統計学的に有意に改善したと報告した。その他,レバーや緑黄色野菜等に含まれるビタミンA,ニンニク等に含まれるビタミンB6,乳製品等に含まれるCa,牡蠣等に含まれる亜鉛が膝OAの症状に効果的である6)

今回の研究では,日本人の膝OA患者への適切な食事アドバイスを行うことを目的として,嫌いな食材の割合と膝OA群に効果的な食品の嫌い度を10段階に自己評価(大好き0点,大嫌い9点に分類)させた平均点数を膝OA群と対照群の間で比較した。

 2. 方法

対象は,50歳以上で,American College of Rheumatologyの診断基準7)によって内側型膝OAと診断された104例の膝OA患者と,年齢を一致させた98例のコントロール群である。コントロール群の参入条件は,上肢の疾患で当院を受診した患者と当院職員の中で,過去20年間膝の痛みを経験せず,触診によって両側の膝に腫脹や圧痛や骨棘がない人とした。

この202例に「嫌いな食べ物は何か?(同じ食材でも調理法によって嗜好が変わるが,すぐに想像した調理法で回答すること)」という質問(複数回答可)を行い,回答の多かった上位10項目の頻度を膝OA群とコントロール群の間で比較した。

次いで,膝OAに効果的であると考えられる栄養成分を多く含んだ10種の食材(納豆,ホウレンソウ,ブロッコリー,鶏胸肉,ニンジン,イワシ,レバー,牡蠣,牛乳,ニンニク)について嫌い度を10段階(大好き0点,大嫌い9点に分類)に自己評価させた。好き嫌い度の平均点数を膝OA群とコントロール群の間で比較した。

統計学的検定にはχ二乗検定と一元配置分散分析法を用い,有意水準は5%とした。

 3. 結果(表1・2)

「嫌いな食べ物は何か?」という質問に対して回答の多かった上位10項目は,嫌いな食材はない(56例),納豆(14例),緑黄色野菜(13例),魚(13例),鶏肉(12例),レバー(11例),ニンニク(6例),トマト(4例),乳製品(4例),牡蠣(4例)であった(表1)。

鶏肉を嫌いな食材として挙げた対象者の割合は,膝OA群が10例(9.6%)であり,コントロール群の2例(2%)に比べて有意に頻度が高かった(P=0.034)。その他の9項目について両群間で有意差はなかった。
膝OA患者の10項目の食材に関する嫌い度で最も高かったのはレバーの5.7±2.8点であった(表2)。ホウレンソウの嫌い度は膝OA群の2.5±2.0点はコントロール群の1.9±1.9点に比べて有意に高値であった(P=0.042)。

 4. 考察

今回の研究結果では,膝OA群はコントロール群に比べて,嫌いな食品として鶏肉を挙げる確率が有意に高く,ホウレンソウの嫌い度が有意に高かった。

鶏胸肉には,膝OAの進行を抑えると報告されているカルノシンに加えて,イミダゾールペプチドが沢山含まれている4)。イミダゾールペプチドは,酸化ストレスによって引き起こされるミトコンドリアでのATP産生能低下を抑制するため疲労回復に効果がある8)。このため,膝OA患者が積極的に運動療法を行うためにも鶏肉の調理法を工夫して摂取することを勧めるべきだと考察した。

ホウレンソウは納豆とともに,膝OAの進行を抑制すると報告されているビタミンKを多く含む食品である3)。納豆は「嫌いな食べ物は何か?」という質問に対する回答で「嫌いな食材はない」についで多かった。このため,特に納豆が苦手な膝OA患者には,ビタミンKの補給源としてホウレンソウを勧めるべきであると考える。また,ホウレンソウに含まれる鉄分には,疼痛を和らげる作用もある。Woodら9)によると,下行性疼痛調節系に重要なドパミンが生合成される過程で鉄が必要であり,鉄不足になると痛みのコントロールが困難になると述べている。五十嵐ら10)の研究では,硫酸第一鉄にカルノシンを添加したラット群は飼料投与15分後における血清鉄濃度が,硫酸第一鉄のみを投与したラット群に比べて有意に高値を示した。つまり,カルノシンを多く含む鶏胸肉と鉄分を多く含むホウレンソウを同時に摂取することは,鉄分の吸収促進につながる可能性が高い。

今後,さらに症例数を重ねると同時に,広い地域の対象者を含めた研究を行うことによって,膝OA患者の嗜好品と病態の関連性を明らかにしていく予定である。

■アボカドの摂取頻度について
日本人の食習慣においてアボカドは日常的に摂取する食品ではないため,今回の研究とは別に調査を行った。対象は,50歳以上で,American College of Rheumatologyの診断基準7)によって内側型膝OAと診断された125例の膝OA患者と,年齢を一致させた121例のコントロール群である。「週に何回アボカドを食べるか?」という質問を行った。週に1回以上アボカドを食べると答えた者の頻度は膝OA群で21例(16.8%)であり,コントロール群の32例(26.4%)に比べて,有意に低かった(P=0.046)。アボカドが膝OAに有効であることを示唆する動物実験がある。Altinelら11)はイヌ24匹を3群に分割し,対照群に通常食餌を,処理群に3日ごとまたは毎日アボカドと大豆由来不鹸化物(avocado and soybean unsaponifiables:ASU)300mgを混合した。その結果,ASUを混合した餌を食した群では対照群に比べて滑液中のTGF(transforming growth factor)-β1とTGF-β2の濃度が増加した。今後,アボカドの膝OAに対する臨床効果についても検証していく予定である。

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●文献

1)吉村典子, 他:日整会誌. 2007;81(2):17-21.

2) Davidson RK, et al:Arthritis Rheum. 2013;65(12):3130-40.

3) Oka H, et al:J Orthop Sci. 2009;14(6):687-92.

4) Shibata S, et al:Int J Food Sci Nutr. 2016;67(8):977-82.

5) Sanghi D, et al:Clin Orthop Relat Res. 2013;471(11):3556-62.

6) 吉岡有紀子, 監修:栄養の基本と食事の教科書. 池田書店, 2014.

7) Hochberg MC, et al:Arthritis Rheum. 1995;38(11):1541-6.

8) 杉野友啓:Functional Food. 2010;4(4):339-44.

9) Wood PB:Pain. 2006;120(3):230-4.

10) 五十嵐香織, 他:Biomed Res Trace Elements. 2004;15(4):370-2.

11) Altinel L, et al:The Tohoku Journal of Experimental Medicine. 2007;211(2):181-6.

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出典:Web医事新報

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