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自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)解説2019.12.24

セラピストプラス編集部からのコメント

かつては自閉症、アスペルガー障害などに分類されていましたが、現在では自閉症あるいは自閉症から連続性のある病態という意味で「スペクトラム」という表現が用いられるようになりました。そんな自閉スペクトラム症の治療法について、名古屋大学医学部附属病院精神科・親と子どもの心療科准教授の岡田俊先生に講義していただきます。自閉スペクトラム症はその特性パターン、重篤度、知的障害やそのほかの障害の有無などによって多様であり、当事者の抱える適応上の問題も異なってくるそうです。

▶自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)

幼少期から言語的・非言語的な対人相互作用に持続的な障害がみられ,限局的反復的な行動,関心,活動(常同的な行動や発語,常同性への固執,儀式的な言動,限局的あるいは特異な関心,感覚過敏や感覚への異常な関心)によって特徴づけられる神経発達症(発達障害)であり,扁桃体など社会認知を司る脳領域をはじめ,広範な脳機能の偏倚が想定されている。かつては自閉症,アスペルガー障害などに分類されていたが,これらの下位分類の妥当性は症状の程度の際にすぎないと考えられるようになり,自閉症あるいは自閉症から連続性のある病態という意味で「スペクトラム」という表現が用いられている。有病率は1.43%であり,以前より上昇する傾向にある。男子では女子より4~5倍多い。およそ3割に知的障害を伴う。自閉スペクトラム症は,その特性のパターンや重篤度,知的障害やそのほかの障害の有無などによって多様であり,当事者の抱える適応上の問題も異なってくる。

▶診断のポイント

詳細な生育歴の聴取から言語や社会性の発達の遅滞,こだわりの強さが認められるか否かを確認し,さらに診察室での言動から自閉スペクトラム症の診断を行う。しばしば,知能検査や発達検査が実施されるが,あくまでも診断の補助であり,下位項目の評価点のばらつきや,実生活と検査結果を照らし合わせることで特性が明確化される。自閉スペクトラム症の行動・発達特性を評価する質問紙としてPARS®-TR(親面接式自閉スペクトラム症評定尺度 テキスト改訂版),構造化された親面接により診断を行うADI-R,構造化されたかかわりの中で自閉スペクトラム症特性を評価するADOS-2なども使用される。また,自閉スペクトラム症の特性を示しうる他の医学的障害(結節性硬化症など)との鑑別,他の精神障害やてんかんとの併存・鑑別についても適切に評価する。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

自閉スペクトラム症の中核症状に対する治療は,現時点では存在せず,良好な適応をめざした環境調整やスキル訓練が中心となる。その方法は,自閉スペクトラム症の重症度や年齢によっても異なってくる。就学前では,小集団での社会性や言語発達の促進,日常生活における基本スキル,様々な状況への対処や感情調整を行うスキルの獲得等をめざした発達支援(療育)があり,そのためにはTEACCH(treatment and education of autistic and related communication handicapped children)やPECS(picture exchange communication system),感覚統合(sensory integration),ABA(applied behavior analysis)などの技法がある。並行して,親が子どもにより効果的な関与ができるよう,また,自閉スペクトラム症についての知識を提供する心理教育や,発達過程における具体的な困りごとの解決について考えたり,親の情緒的支持をめざした親ガイダンスやペアレントトレーニングを実施する。

学童期には,学校での特別支援教育との情報交換や協働が不可欠であり,その中で学業,集団活動,仲間関係などについて助言していく。青年期,成人期には,抑うつ障害や双極性障害,社交不安症(社会不安障害)や強迫症などの併存障害を伴うことも多く,これらの併存障害への治療と並行して実施する必要があるが,これらの併存障害の中には二次的障害としての色彩,すなわち,学校,家庭環境への不適応,いじめ被害やマルトリートメントなど家庭内の問題への反応として生じている場合もあり,その場合には,環境調整や学校・家族システムへの介入も不可欠である。

成人では,就労,生活自立が課題になる。各都道府県ならびに政令指定都市には発達障害者支援センターが設置されている。企業の産業医やかかりつけ医との連携も必要となることが多い。一方では,就労移行支援事業所(A型,B型),作業所,生活介護など,当事者の状況に応じて選択されるが,これらは医療との連携のもと,地域の支援機関によって提供される。

薬物療法は,関連症状や併存障害に対して実施される。薬物療法は良好な支援となりうる一方,当事者は副作用が出現しやすかったり,逆に奇異反応を生じることもあるので,薬物療法開始後の変化に十分に留意する必要がある。

▶治療の実際

優先順位はない。患者の忍容性や希望を考慮して選択する。

【易刺激性やこだわりの強い場合】

一手目 :リスパダール®0.5mgOD錠(リスペリドン)1回1錠1日2回(朝・夕食後),またはエビリファイ®6mg錠(アリピプラゾール)1回1錠1日1回(夕食後)

【不注意,多動性-衝動性を併存する場合】(注意欠如・多動症の併存)

一手目 :コンサータ®27mg錠(メチルフェニデート)1回1錠1日1回(朝食後),またはストラテラ®40mgカプセル(アトモキセチン)1回1カプセル1日1回(夕食後),またはインチュニブ®3mg錠(グアンファシン)1回1錠1日1回(夕食後)

【うつ病・不安症を伴う場合】

一手目 :レクサプロ®10mg錠(エスシタロプラム)1回1錠1日1回(夕食後),またはパキシル®20mg錠(パロキセチン)1回1錠1日1回(夕食後)

【双極性障害を伴う場合】

一手目 :ビプレッソ®150mg徐放錠(クエチアピン)1回2錠1日1回(就寝前)(糖尿病では禁忌),またはジプレキサ® 10mgザイディス錠(オランザピン)1回1錠1日1回(夕食後)(糖尿病では禁忌)

【不眠を伴う場合】

一手目 :ロゼレム®8mg錠(ラメルテオン)1回1錠1日1回(就寝前),またはベルソムラ®20mg錠(スボレキサント)1回1錠1日1回(就寝前)

岡田 俊(名古屋大学医学部附属病院精神科・親と子どもの心療科准教授)

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出典:Web医事新報

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