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【識者の眼】「終活支援~あいまいな喪失理論を通して」岡江晃児2021.05.26

セラピストプラス編集部からのコメント

「あいまいな喪失」という言葉があります。かけがえのない人や物を失うといった通常の喪失がある一方で、喪失しているかどうかが不確実で、その終結でさえわからない喪失のことを指します。それはアイデンティティを表現した活動が狭められる老年期の時期に大きく関わっているといえます。

今回のWeb医事新報【識者の眼】では様々な事業を通じ、ソーシャルワーカーとして終活支援に取り組んでいる岡江晃児氏(杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院)が「終活支援~あいまいな喪失理論を通して」と題して寄稿。「あいまいな喪失理論」を用いつつ実践している取り組みを紹介しています。

大分県杵築市では2018年度から「きつき終活応援プロジェクト」と題し、様々な事業を通して終活支援に取り組んでいます。そのような事業を展開する上で、私はソーシャルワーカーとして、あいまいな喪失理論を用いながら実践しています。

かけがえのない人や物を失うといった通常の喪失がある一方、“あいまいな喪失”とは、喪失しているかどうかが不確実で、その終結でさえわからない喪失です。自然災害における行方不明者、人質・拘禁、移民、離婚、転勤、子どもの自立(子どもを養子に出すこと・子どもが養子に出されること)、配偶者や親がケア施設へ入所することといった「身体的不在/心理的存在=さよならのない別れ」と、アルツハイマー等の認知症、慢性精神病、脳挫傷、脳梗塞、アディクションなどといった「身体的存在/心理的不在=別れのないさよなら」の2つに分類されます。

災害といった非日常に留まらず、日常の生活の中にもあり、両方ともアイデンティティを表現した活動が狭められる老年期の時期に大きく関わっているといえます。

あいまいな喪失理論では、あいまいさをなくすことを目指さず、家族があいまいさを抱えながらも、より良く生活できるように支えることを目標にします。支援方法としては、個人のレベルでは困難であり、家族やコミュニティのアプローチが必要です。そのため、関係性という視点をきわめて重要と捉え、家族等のコミュニケーションを通して、家族等が無理の少ない関係を探りながら、希望に変化させて、長期的な視点からレジリエンス(回復力)を引き出します。

よって、終活支援では個人のレベルだけでなく、家族やコミュニティのアプローチを行い、住民のアイデンティティの再構築をし、状況に耐えるレジリエンスを形成する終活支援のプログラムが必要であると考えます。杵築市では、エンディングノートや出前講座の中で住民同士の対話を通して、あいまいな喪失理論の支援プロセスを意識しながら実践しています。

あいまいな喪失理論の支援プロセス

①意味を見いだす
②制御(自分で全てをコントロールする感覚を弱めること、あるいは、手放すこと)
③アイデンティティを再構築
④アンビバレンス〔両価的な考え(イエスとノーが同時に存在すること)を一般化する〕
⑤アタッチメント
⑥新しい希望を見出す

【参考文献】

▶黒川雅代子, 他:あいまいな喪失と家族のリジリエンス:災害支援の新しいアプローチ. 誠信書房, 2019.

岡江晃児(杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)[終活][あいまいな喪失理論]

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出典:Web医事新報

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