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AEDデータ有料化で救急現場が対応苦慮- 厚労省、検証停滞で「無償」見解2016.09.07

セラピストプラス編集部からのコメント

 これまで医療機関などに無料で提供されてきたAED内に記録された患者の生体情報などのデータ提供について、AED製造販売会社が有料化を決めたため、救急医療関係者が対応に苦慮しています。こうした事態を受け、厚生労働省は地域で消防機関や医師会などが救急業務の高度化を図るメディカルコントロール(MC)協議会へのデータ提供は「無償」が望ましいとの見解をまとめ、関係者への周知を始めています。
 AEDの内部データは心停止状態の心電図波形を確認できることから「使用された個人の治療方針の決定に重要な材料となる」と位置付けられてきました。AEDの製造販売会社もAEDが使用された患者の搬送先の医療機関や公共機関から、AED内に記録されたデータの提供を求められた場合、無償提供してきました。
 しかし、今回の有料化で医療者と業者、行政の“協調体制”は一変。ウェブサイトに1回当たりのデータ提供の価格を「1万円」と記載する製造販売会社もあり、MC協議会の医師がAEDを使った患者の事後検証の際、データ提供を要望したところ、業者側から提供料の支払いを求められたそうです。MC協議会には提供料を払える予算はなく、患者のデータ検証が一時停滞する事態に陥っているそうです。

 AED内に記録された患者の生体情報などのデータ提供について、これまで医療機関などに無料で提供していたAED製造販売会社が有料化を決めたため、救急医療関係者が対応に苦慮している。一部の地域では、AED使用患者の事後検証を行っているメディカルコントロール協議会(MC協議会)の作業が停滞。救命救急センターの医師も「患者に負担させるつもりか」と疑問を呈す。こうした事態を受け、厚生労働省はMC協議会へのデータ提供は「無償」が望ましいとの見解をまとめ、関係者への周知を始めた。【新井哉】

■データは治療方針決定の「重要な材料」

 AEDの使用については、厚労省は基本的に「医行為に該当する」としながらも、一般市民が反復・継続して行わない場合は、医師法17条に違反しないとの通知を都道府県にあてて出していた。医療従事者以外の人がAEDを使用した場合の効果についても、救急搬送の事後検証の仕組みの中で的確に把握し、検証することを求めていた。

 また、厚労省は昨年8月、ホームページで救急医療財団の小委員会がまとめたAED設置登録情報の有効活用の報告書を公表。報告書では、AEDの内部データは心停止状態の心電図波形を確認できることから、「使用された個人の治療方針の決定に重要な材料となるとともに、市民の活動の評価も可能であることから公衆衛生上も重要なデータ」と位置付けていた。

 AEDの製造販売会社もAEDが使用された患者の搬送先の医療機関や公共機関から、AED内に記録されたデータの提供を求められた場合、無償で提供してきたという。

 しかし、AED製造販売会社などが加入する電子情報技術産業協会(JEITA)が昨年度、AEDのデータ提供に関する通達を会員に出したことで、これまでの医療者と業者、行政の“協調体制”は一変した。通達などによると、医療機関や公的機関などへのAEDのデータ提供については、医療機器業の公正競争規約を管理・運用する業界団体の医療機器業公正取引協議会が、医療機器の選択や購入を「誘引する手段としての便益労務」に該当するとした。この見解を受け、製造販売会社は今年4月ごろから、医療機関に対して「AEDのデータ抽出および提供は必要最低限の実費をいただく」などと有料化の周知を始めた。

■MC協議会の検証、業者側が提供料提示も

 救急医療・自治体関係者によると、ホームページに1回当たりのデータ提供の価格を1万円と記載する製造販売会社もあり、MC協議会の医師がAEDを使った患者の事後検証の際、データ提供を要望したところ、業者側から提供料の支払いを求められたケースがあった。

 MC協議会には提供料を払えるほどの予算はなく、患者のデータ検証が一時停滞する事態に陥ったため、関係者が厚労省に相談。この問題を把握した栃木県も厚労省に対し、AEDデータの有料化の適用範囲に関する照会を行った。厚労省の担当者は、MC協議会へのデータ提供は「便益供与」に該当せず、今まで通り無償での提供が妥当との考えを示し、問題の解決に向けて助言したという。

 ただ、厚労省が「無償」との見解を示したのはMC協議会の事後検証のみで、医療機関の救命救急センターは、「便益供与」の範囲内に含まれる。このため、救急搬送患者が使用したAEDのデータ提供については、搬送先の医療機関の救急医らが「患者の治療に必要」としてデータの提供を要請した場合でも、製造販売会社から提供料を請求される恐れがある。

 救命救急センターの医師や救急医療関係者は、搬送先の医療機関や患者に金銭的な負担が及ぶ可能性があることに加え、医師による事後検証を前提に、市民によるAEDの救護活動ができる体制が整えられていることを指摘。国が推進するAEDの普及に逆行していることを挙げ、「AEDの売りっぱなしは国民と医療関係者の理解を得られない」として改善を求めている。

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出典:医療介護CBニュース

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