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【識者の眼】「水際対策の難しさを改めて共有してほしい」薬師寺泰匡2022.04.22

セラピストプラス編集部からのコメント

日本は狂犬病予防法が徹底されていることから、1957(昭和32)年以降は輸入例で4名のヒト感染が確認されているのみです。今回の【識者の眼】は薬師寺泰匡氏(薬師寺慈恵病院院長)が「水際対策の難しさを改めて共有してほしい」と題して寄稿。ウクライナからのペット同伴避難に関する狂犬病検疫を例に、感染症が一旦国内に入ってしまうと、制御できないところまで広がってしまう「水際対策」の難しさを解説、説明しています。ぜひ、参考にしてください。

ウクライナからのペット同伴避難に関して、狂犬病の検疫が話題になっている。日本は狂犬病予防法が徹底され、1957年以降は輸入例で4名のヒト感染が確認されているのみである。犬咬傷で救急受診される方の中には、狂犬病を心配する声も聞かれるが、海外からの輸入例でしか感染例がないことをお話しして、破傷風やその他細菌感染予防を行っている。

現在、アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアムの6地域は狂犬病がない地域に指定されており、これ以外の地域から犬が入国する際には、ワクチン接種と抗体価の測定、そして180日以上の待機が義務付けられている。待機期間が不足する場合は、不足日数の間を動物検疫所で係留検査を受けて過ごしてもらうこととなる。徹底した感染防御、水際対策である。

今回問題となったのは、ウクライナから飼っている犬と共に避難してきた人々が、この対策に疑問を投げかけ、社会の共感を得たことに端を発する。今回、待機期間の費用を飼い主が負担しなければならないこと、待機期間中は飼い主と別れて過ごさねばならないことが議論となった。農林水産省は、避難民が帯同した犬について、2回のワクチン接種歴と、基準値以上の抗体価が確認できれば飼い主に同行できるように特例を設けた。つまり、180日の待機を免除したことになる。本来の待機期間が過ぎるまでの間は1日2回の健康観察と動物検査所への週1回の報告などを求めるということだが、考えなくてはならないのは、この対応で本当に感染制御が可能かどうかという点である。

感染症が一旦国内に入ると、静かに、制御できないところまで広がることはここ2年で痛いほど実感している。新型コロナウイルスでは、海外から入国した人に健康観察期間を設けていたが、無視される例も散見された。健康観察と報告は本当になされるのか、そしてそもそもこれで十分な対応となるのか。明確な回答を求めたい。

180日の待機免除は、感染予防上、許容できる判断であるという具体的な説明が必要である(ただ、そうであれば180日待機の根拠は何かという疑問が残ってしまうが)。今回の措置は人道的な観点に立ってということであるが、致死率100%とされる疾患を国内に持ち込まれるリスクを高めることが人道的にどうかという視点も大事ではないか。待機期間の費用を補填するなど、別な手段も考えられるはずである。

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[輸入感染症][動物検疫]

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出典:Web医事新報

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