医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

マイナビコメディカル
マイナビコメディカル

医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

失語症患者は自動車の運転が可能か[エッセイ]2022.06.29

セラピストプラス編集部からのコメント

高次脳機能障害のひとつである失語症。「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」に関することが障害される失語症患者に、医師として運転を勧めるかどうかについて一杉正仁氏 (滋賀医科大学社会医学講座教授)が論じています。
脳卒中で退院した人の21.6%に失語症があると言われている中で、失語症患者の社会参加や復職について考える機会になるのではないでしょうか。

失語症とは

失語症は高次脳機能障害のひとつです。脳の言語中枢が障害されて生じますが、左脳が損傷されて生じることが多いです。すなわち、右半身麻痺の人に多く見られます。失語症では言語に関する、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」に関することが障害されます。様々な調査がありますが、全国に30万~50万人の失語症患者がいるそうです。原因では圧倒的に脳血管障害が多いです。

2014年にある施設で行われた調査によると、脳卒中で退院した人の21.6%に失語症がありました。さらに、失語症患者は失語症がない脳損傷患者に比べて社会参加や復職がより難しいそうです。したがって、われわれ医師は失語症患者の社会参加に向けて協力する必要があります。

話せない方の運転

先日ある医師から、失語症で話せない方がいるが、自動車の運転を勧めて良いかとたずねられました。私は、きちんと理解して判断でき、適切に自動車を操作できるのならば良いだろうと考えていました。しかし、その医師は、緊急事態があったときに携帯電話などで通報できないから危険である、万一事故に遭ったときでも状況が説明できない、相手側との話し合いなどでも不利になることが考えられるため、自動車の運転は勧められないと話されていました。

確かに、いろいろな状況を想定すると、必ずしも安全というわけではないことがわかります。

どのような検査が必要か

失語症には様々なタイプがありますし、複数の障害を併せ持っていることもあります。したがって、どのような能力を欠くかを正確に判断する必要があります。

最もよく用いられている検査法は標準失語症検査(SLTA)と呼ばれるものです。これは、聞く、話す、読む、書く、計算の5側面について、主に言語聴覚士が1時間~1時間半の時間をかけて検査します。この点数が低いからといって、自動車の運転ができないわけではありません。たとえ口頭命令に従うことや語の列挙ができない場合でも、道路標識など安全運転に必要な情報が理解でき、短時間で正しく判断できれば自動車の運転は可能です。したがって、運転シミュレーターなどを用いて運転能力を評価する必要があります。

発語が不十分であったり、文章の書きとりができない方でも、円滑にシミュレーターを操作できることがあります。ナビゲーションなどで音声の指示に応じられない方でも、道を覚えていると運転は可能なのです。したがって、失語症の方でも程度によって運転は可能です。

社会参加に向けて

自動車の運転が可能になれば、就労を含め失語症患者の社会参加が拡がります。ただし、先に述べたように口頭命令に従うことや語の列挙に関する能力が障害された場合、他者との円滑なコミュニケーションが困難になります。したがって、タクシー運転などで必要となる第二種運転免許の適性はないと考えます。

自動車技術の進歩は著しいので、緊急時に自動で通報したり事故時の状況が自動で判明する時代が来れば、失語症患者が安心して自動車を運転できるようになるでしょう。

文:一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)

>>【全国どこでも電話・メール・WEB相談OK】セラピストの無料転職サポートに申し込む

    <PR>マイナビコメディカル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  •  LINEで送る

出典:Web医事新報

おすすめ

TOPへ