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言語聴覚士の臨床実習ではどんなことをするの?新型コロナの影響についても

公開日:2020.11.25 更新日:2021.08.30

空を見上げる女性

文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

2020年度は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を目指す多くの学生が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、臨床実習が中止になったのではないでしょうか。学生のみなさんは「実習をしなくて、来年臨床に出てちゃんとやっていけるの?」「4月にはセラピストとして働いている自分を想像できない」など、多くの不安を抱えているかと思います。

しかし、セラピストは養成校を卒業し、就職をしてからも卒後教育として生涯を通して学び続けることで、一人前のセラピストになると考えられています。養成校を卒業したからといって「一人で何でもできる」ことは求められていないのです。

まずは国家試験を突破するためにも、モチベーションを下げずに、現在の学習に取り組んでください。そして、不安なことは養成校の先生に相談するようにしましょう。

そうはいっても、臨床実習が中止になってしまったことにより、例年のように臨床の現場を知ることは難しいでしょう。

そこで、今回は言語聴覚士を目指す学生が臨床の現場を身近に感じられるように、そして少しでも不安を解消することができるように、例年実施されている言語聴覚士の臨床実習の内容を具体的に説明していきたいと思います。

言語聴覚士養成における臨床実習の目的

言語聴覚士養成における臨床実習の目的とは何でしょうか? 

日本言語聴覚士協会が定めたガイドラインによると、卒業時の到達目標は「言語聴覚療法の基本的知識・技能・態度を修得すると共に、生涯を通して学び続ける態度を身につける」と記載されています。卒業時に「一人ですべてできる」ではなく、卒業後に「一人でできるように学び続ける」といった態度を身につけておくことが、学生に求められていることなのです。

それでは、臨床実習である総合実習の目標はどのようになっているのでしょうか。

一般目標

修得した知識・技能・態度を統合して臨床に適用し、言語聴覚療法の評価診断および訓練・指導・支援の技能を修得する。

到達目標

(1)評価結果に基づき、言語治療(訓練・指導・支援)計画を立案できる。
(2)科学的根拠に基づいた言語治療(訓練・指導・支援)法を述べることができる。
(3)障害の全体像に基づき言語治療(訓練・指導・支援)の優先順位を決定できる。
(4)典型的例に対し、基本的な言語治療(訓練・指導・支援)が実施できる。
(5)訓練・指導・支援記録が作成できる。
(6)訓練・指導・支援の効果を測定し、臨床計画を修正できる。
(7)臨床経過報告書を作成できる。
(8)ケース・カンファレンス等で報告し、専門的視点からの意見を述べることができる。
(9)症例報告書を作成し発表できる。

以上のように詳細に目標が設定されています。

これらの目標が達成できるように、実習施設では養成校と連携を取りながら臨床実習を展開していきます。

それでは、具体的に臨床実習ではどのようなことを実施していくのでしょうか。

臨床実習の内容1 ~8週間の流れ~

それでは、臨床実習の内容を具体的に紹介していきます。理学療法士・作業療法士の実習では、症例を担当しないクリニカル・クラークシップ型の臨床実習が主流になっています。しかし、言語聴覚士の実習では、言語聴覚士養成教育ガイドラインに従い、症例を担当する方法で実習を行う施設が多いです。実習の在り方については、さまざまな議論がありますが、今回はあくまでも学生への参考として、8週間の臨床実習の流れを紹介していきます。

1週目 担当症例初期評価 臨床見学
2週目
3週目 担当症例訓練 初期評価発表
4週目 実習地訪問
5週目
6週目
7週目 担当症例最終評価 最終発表
8週目 実習終了 実習振り返り

担当症例

実習の開始前に実習生が担当する症例を決定します。担当症例に決まった患者には、事前に言語聴覚士から丁寧に説明を行い、実習のお願いをします。また、原則的に実習生が単独で患者と関わることはありません。

担当症例初期評価

初期評価は1週目から開始になります。スクリーニング検査、鑑別診断検査、掘り下げ検査といった臨床における評価の流れに従い、必要な評価項目などを一緒に考え実施していきます。例えば、SLTAの呼称は実習生が実施し、それ以外の項目は事前に言語聴覚士が実施したデータを利用するといった流れもよく見られます。

報告書は、それぞれの養成校で指導された内容に従いまとめていきます。具体的には、「一般的情報」「医学的情報」「社会的情報」「評価」「問題点」「目標」「訓練内容」「考察」といった項目について検討します。実習生は報告書の作成に多くの時間を割くことになりますが、実習時間に報告書を作成する時間を設け、時間内で完成することを目指します。

また、報告書作成での実習指導者とのやり取りを通して、言語聴覚士養成教育ガイドラインの到達目標に達することを目指しています。

担当症例最終評価

最終評価は初期評価で立案した訓練での訓練効果を検証し、訓練内容を見直すことを目的に行います。内容は初期評価の項目に「訓練経過」が加わります。症状だけにとどまらず退院後の生活をイメージし、訓練内容に反映していきます。

症例発表

初期評価と最終評価の2回、報告書の内容をまとめた症例発表を行います。参加者は言語聴覚士の他に担当の理学療法士、作業療法士も参加します。さまざまな視点から幅広い意見をもらうことにより、新たな気づきがあります。

臨床見学

臨床見学では、言語聴覚士の行う臨床に同席し見学をします。見学する際には、症状把握を行うだけでなく、「言語聴覚士がどのような意図で介入しているのか」「自分だったらどのように介入するのか」など、言語聴覚士の視点に立って見学するよう指導していきます。
実習の後半には、言語聴覚士と一緒に検査や訓練の一部を実施したり、宿題の作成・採点・自主トレーニングの方法についての確認などを行ったりすることもあります。また、理学療法士・作業療法士の臨床見学やカンファレンス、訪問リハへの同行、嚥下内視鏡検査(VE)などを見学することもあります。

実習地訪問

実習期間中に養成校の先生に直接病院にお越しいただき、実習の状況を共有する実習地訪問があります。実習施設側からは、「できないこと」を報告するのではなく、「実施したこと」や「できるようになったことを報告します。また、睡眠時間や体調面の確認を行い、課題や実習内容の修正を行います。

実習振り返り

実習終了時に、実習の振り返りを行います。ここでは「今回の実習でできたこと・できなかったこと」「これからできるようになりたいこと」などをワークショップ形式で振り返っていくものです。実習をただ淡々とこなすだけではなく、理想とする言語聴覚士になるためには、実習終了後に何をするのかを具体的に考えていくとよいでしょう。

臨床実習の内容2 ~1日の流れ~

次に実習の1日の流れについて説明していきます。

8:30 出勤・朝礼参加
9:00 見学1
10:00 担当症例介入
11:00 見学2
12:00 記録整理
12:30 昼休み
13:30 見学3
14:30 見学4
15:00 日誌の作成・評価まとめ・報告書作成・教材作成・検査練習・調べもの・フィードバック
16:00
17:00
17:30 清掃・帰宅

近年は実習生の帰宅時間を遵守するようにしているため、フィードバックが長時間にならないように調整したり、当日の朝に指導者が見学のスケジュールを調整し、実習生に連絡するようになっています。

提出物

提出物は実習日誌、症例報告書の2種類があります。実習日誌は、各養成校指定のものを使用することが多いでしょう。内容は、タイムスケジュールに従って1日に実施した内容や感想を書くようなものが多いです。症例報告書は、指導者がフィードバックを行いながら作成していきます。

学生時代に当院で臨床実習を行った言語聴覚士へのインタビュー

最後に、3年前に臨床実習を行った言語聴覚士のAさんに、臨床実習の経験が現在の言語聴覚士としての仕事にどのように役立っているのかインタビューを行いました。

――よろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
Aさん:言語聴覚士2年目のAといいます。私は大学4年生の5月~7月までの8週間、臨床実習を行い、そのまま言語聴覚士として就職しました。

――仕事はどうですか?
Aさん:わからないことがたくさんあり、日々迷いながら臨床をしています。それでも気軽に先輩に相談することができますし、担当の理学療法士や作業療法士、医師、看護師とも連携を取りながら仕事ができているので、充実しています。ただ、「専門職として患者さんのために自分ができることは、まだ他にはあるんじゃないか」「もっと勉強しないと」と感じることも多いです。

――臨床実習のときのことについてお聞きします。具体的に印象に残っていることはありますか?
Aさん:すべてが印象に残っています。たしかに、体力的に大変だったこともありますが、初めて患者さんを担当させていただいて、症状の分析→治療仮説→訓練計画を考える。そして訓練を実施して、再評価から治療仮説を再検証し訓練計画を修正するといった、臨床の一連の流れをしっかりと体験できたことは、現在の私の財産になっています。
また、学校の授業で習ったことと症状を当てはめたり、その反対に症状を教科書と照らし合わせて考えたりしていくことは、とてもおもしろいと思いました。なにより、再評価の際に患者さんが改善していて、とても喜んでくれたことが忘れられないですね。

――では実習での経験が、現在に活かされていると感じることはありますか?
Aさん:さっきお話ししたことと重なるのですが、臨床の一連の流れを体験できたことですね。まだそれが一人で全部できていないので、先輩にアドバイスをもらいながら臨床をしています。あとは、臨床に臨むセラピストとしての姿勢というか……。臨床を見学するとき、指導の先生に「Aさんだったらさっきの患者さんの問いかけに、どのように返答した?」といつも聞かれていたので、そのときにセラピストとしての視点に気づいたことは大切にしています。

――臨床実習を通じて、なにか気づきはありましたか?
Aさん:やっぱり勉強しなきゃだめだな、ということですね。指導の先生だけでなく、他の言語聴覚士の先生方で、よく患者さんのことで協議をしていて……。これは、「卒業したら勉強が終わるのではなくて、むしろスタートする」と大学の先生が話していたことを実感しました。

――ありがとうございます。では最後に今年は実習が中止になってしまったのですが、学生さんに向けたメッセージはありますか?
Aさん:私は実習の経験をして、言語聴覚士とは素晴らしい職業で「私もなりたい! 」とより強く思えたし、勉強することがおもしろいと初めて感じたので、国家試験の勉強も目的をもって取り組めたと感じています。
実習を行った私ですら、次の4月から言語聴覚士として働くことを想像することができなくて不安でしたから、今の学生さんは本当に不安だと思います。
だからこそ、「もうやめちゃおうかな」と思わず、モチベーションを下げないでがんばってほしいと思っています。

――頼もしいメッセージですね。今日はお忙しいところありがとうございました。

おわりに

いかがでしたか?実習の内容から、臨床の現場が少しは身近に感じることができたでしょうか。みなさんの先生からもお話があるように、専門職として臨床を行っていくためには常に新しい知識を身につけておく必要があり、卒業してからも学びは続いていきます。まずは国家試験を突破できるように勉強に励んでください。

2021年4月に同じ専門職としてみなさんを迎え入れる臨床の現場から、応援しています。

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[出典・参照]

日本言語聴覚士協会「言語聴覚士養成教育ガイドライン」

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近藤 晴彦

近藤 晴彦

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。

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