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withコロナ時代のセラピストの現状と今後の展望

公開日:2020.12.09

2019年に発生した新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2: SARS-CoV-2)による感染症(coronavirus disease 2019: COVID-19)の感染状況は、世界各地で第三波が到来しつつあり、第二波のピークを上回る勢いです。

これから冬に向けて、インフルエンザとの同時流行も強く懸念されています。保健医療福祉の現場では大変深刻な影響を受け、今後に向けたさらなる対応が必要とされています。

第一波のピークの頃である2020年4月~5月に実施された、日本理学療法士協会のアンケート(日本理学療法士協会「新型コロナウイルス感染予防 理学療法管理チェックリスト-患者様とスタッフを守るために-」)の結果を紹介し、withコロナ時代のセラピストの今後の展望を解説します。

アンケートの概要

日本理学療法士協会理学療法管理部門は、メルマガ登録者を対象に、2020年4月17日から5月6日までWEB調査を実施し、5月24日付で報告しています。

その目的は、対象患者とスタッフを守るために、COVID-19の受け入れ状況やリハ実施状況、実施している感染予防対策などを知ること。全都道府県の様々な種類の209施設から回答を得ました。

アンケート結果によると、COVID-19陽性患者を受け入れている施設数は30%であり、そのうちの23%の施設でCOVID-19陽性患者に対してリハビリテーション(リハ)が実施されていました。また、リハを実施している施設の86%で、施設の規定に沿った個人用防護具(personal protective equipment: PPE)が使用され、64%の施設が対応するセラピストの基準を設けていました。

一方、リハの適応・開始・中止基準を作成している施設は29%にとどまり、対応スタッフのバックアップを行うスタッフを配置した施設は36%、病棟の出入りマニュアルを作成した施設は21%、対応スタッフへのメンタルサポート体制の構築を行った施設は29%でした。

新たなルール

スタッフの行動記録、マスク、PPEの使用、手洗い・手指消毒の徹底などはほとんどの施設で実施されています。

また、スタッフの施設外・勤務時間外の活動の制限、子育てに関する職場での対応、スタッフ間のソーシャルディスタンス(特に施設内での食事やカルテ記録場所のスペースなど)、スタッフの体調管理、リハ室の換気なども多くの施設で実施されていました。

入院中のリハにおいては、比較的多くの施設で、リハ適応の選定基準の見直し、フロア担当制やゾーニング体制(患者やスタッフの移動経路の管理など)の構築、面会の自粛、発熱をはじめリハ中止基準の見直しなどが行われています。

外来においては、多くの施設で患者数が縮小されており、患者の体温測定、マスク着用、手指消毒などが徹底されています。

よくある悩みや課題

多くの施設で対応が不十分な点は、スタッフ同士による体調の相互確認、特に妊娠中の女性職員への対応、スタッフのメンタルケア、COVID-19対応職員の育成体制の構築などです。

スタッフの心身の健康状態の確認とケアについて、定期的な状態のチェックと専門職によるカウンセリングなどメンタルサポートプログラムの導入が必要でしょう。

入院中のリハでは、患者の外泊・外出、家屋評価の対応やリハ室の利用時間・利用人数の制限などが十分に実施されていません。特に外泊や自宅の家屋評価などでは、患者本人に加えて、家族の体調の確認などが必要になります。

通所サービスは、比較的多くの利用者が利用しており、感染予防対策も実施されていますが、送迎車内の三密の回避、換気や消毒の徹底が必要です。訪問サービスは通所に比べると利用者数が減少している事業所も多い状況です。患者、家族、スタッフの体調管理と感染予防の徹底、訪問経路の見直しなどの対応を図り、安心して利用できる体制の構築が必要でしょう。

障害者入所施設や精神科病院・デイケアなどでは、入所者・利用者の理解、協力が得にくいことや、感染した場合の重症化リスクへの懸念などのため、対応が難しく、COVID-19流行以前に比べて、入所者・利用者の活動の減少が顕著と思われます。

セラピストに対する教育の状況と対応

病院で実施される学生の臨床実習は、約半数の施設で実習の受け入れを中止し、受け入れる場合にも時間や期間が短縮されています。養成校によっては、最終学年での学外の臨床実習を全く実施できずに、学生が卒業することになります。

学内で代替の演習・実習は行われておりますが、臨床の現場での臨床実習に比較すると、質、量ともに十分ではないでしょう。

養成校における学内教育についても、夏前は基本的にリモート授業で、夏以降は、実習を中心に徐々に対面の授業が再開されてきています。

リモート授業においては、インターネット環境や端末の充実が必須であり、学生によっては経済的な支援が必要となります。

また、リモート授業自体は実施できても、授業中の資料や課題の設定、受講学生の反応を確認する難しさ、教員の機器操作の未熟さなどにより、通常の対面授業と比較すると内容が不十分となっている可能性があります。

これからの対面授業での復習や補習、授業における課題の工夫や多様なオンラインツールの駆使などで、内容の充実を図る努力の継続が必要です。

今後の展望

withコロナ時代のリハでは、スタッフの感染予防、院内感染対策を継続するのはもちろんのこと、メンタルケアにも留意することが重要です。

COVID-19流行以前のリハの効果と流行後の効果を比較検証し、本来のリハの効果が得られるよう、プログラムの内容の見直しを行うことも必要でしょう。また、COVID-19陽性患者の状態の改善や後遺症の軽減など、リハとして対応できる支援の充実が求められます。

さらに、スタッフの生涯学習については、学会や研修会がweb開催となることも多く、最新の知見の学習や関係者との交流などが妨げられており、生涯学習におけるICT(Information and Communication Technology)の活用が当面必要でしょう。

多くの学生が養成校を卒業し、これから臨床の現場へ就職します。卒前の臨床実習の経験の少なさなどにより、就職直後の臨床技能は従来よりも未熟であることが予想されます。そのため、各施設において、これまで以上に卒後教育のシステムの充実が必要となるでしょう。

入院患者については、院内での感染予防対策は概ね対応されてきており、入院生活における活動の自粛は少なくなってきています。一方で、家族等の面会の制限や外出、外泊の自粛の影響は続くと思われます。

有効な代替方法の検討が必要でしょう。外来や、通所・訪問サービスの利用者を含む地域在住高齢者においては、心身の活動の自粛、抑制により、廃用症候群の併発や障害の程度の悪化、フレイルの増加なども今後懸念され、早めの状況確認が必要です。

医師会、看護協会、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの医療従事者の団体からは、会員向けや国民向けに様々な種類の情報が発信されています。

所属施設の対応に委ねるだけでなく、個々のセラピストが、状況に応じた適切な情報を自ら入手し、自身や所属施設の対応の参考にすることが必要です。

COVID-19の今後の動静は、正確な予測が困難ですが、時期により、地域により、施設によりその状況は異なります。対象患者とスタッフを守るためには、その時々の状況に応じた柔軟な対応が求められるでしょう。

出典:日本理学療法士協会「新型コロナウイルス感染予防 理学療法管理チェックリスト-患者様とスタッフを守るために-」

臼田 滋
群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授
群馬県理学療法士協会理事
理学療法士免許を取得後、大学病院で勤務し、理学療法養成校の教員となる。
小児から高齢者までの神経系理学療法が専門。

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