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トレーニング中の手の位置調整は対麻痺患者さんの肩に有利?

公開日:2017.03.06 更新日:2017.03.17

負荷を与えて行う数種のトレーニングを次々と行って、総合的な体力の向上をめざすサーキットレジスタンストレーニング(CRT:Circuit Resistance Training)。これを、対麻痺患者さんのリハビリに採用したことはありますか?
今回は、米国理学療法協会(APTA)の学会誌『フィジカル・セラピー』より、CRT中の手の位置と肩の運動学(※)に関する論文をご紹介します。患者さんの肩をトレーニングする際は、マシンのハンドルを握る手の位置を各運動メニューによって慎重に調整するとより有利になるようです。

※運動学:今回の研究では、「力学的かつ物理学的な運動の仕組み」というニュアンスで用いられています。

Improving Shoulder Kinematics in Individuals With Paraplegia: Comparison Across Circuit Resistance Training Exercises and Modifications in Hand Position

対麻痺患者における肩の運動学改善:サーキットレジスタンストレーニングの各運動について、それぞれ手の位置の修正による効果を比較

Linda M. Riek, Nazareth College
Joshua Tome, Ithaca College
Paula M. Ludewig, University of Minnesota
Deborah A. Nawoczenski, University of Rochester Medical Center

研究テーマ

サーキットレジスタンストレーニングを行うと、対麻痺の患者さんの肩を機械的なインピンジメント(腱の挟み込み)から守るのに有利な、肩甲骨の後傾と上方回旋や肩甲上腕と肩甲骨の外旋などの運動学が高められると考えられます。また、運動学への理解があれば、CRTを行う上で、肩の健康状態を増進させるために好ましい運動姿勢や運動の種類に関する、生体力学に基づく論理的根拠が得られる可能性があります。
今回の研究の目的は、次の2つです。

  1. CRTでの運動中に手の位置を変えることで、肩甲上腕や肩甲骨の運動学を改善できるかどうか判断すること
  2. CRTでの運動中に、肩甲上腕と肩甲骨の3次元的な運動学を比較すること

研究方法

以下の2つの仮定をもとに、18人の対麻痺患者さん(男性14人、女性4人、年齢25~76歳)を被験者として横断観察研究を行いました。

  1. CRTの運動中、「従来の手の位置で行った場合」よりも「修正後の手の位置で行った場合」のほうが上腕胸部の仰角が改善される
  2. ダウンワードプレスは、運動学的に最も不利となる

電磁追跡システムを用いて、「胴体」「肩甲骨」「上腕骨」の3次元的な位置と方位データを取得しました。行った運動は以下の通りです。

  • オーバーヘッドプレス(頭上から押し上げる運動)
  • チェストプレス(胸前から押し出す運動)
  • オーバーヘッドプルダウン(頭上まで引き下げる運動)
  • ロウ(ボートを漕ぐようにトルソーを水平に引きつける運動)
  • ダウンワードプレス(下方へ押し下げる運動)

被験者は、それぞれの運動を「従来の手の位置」と「修正した手の位置」で行いました。手の位置を修正することによる効果と運動中の運動学を評価するために、記述統計と双方向反復測定分散分析を用いました。

研究結果

  • ダウンワードプレス: 肩甲上腕の外旋が4.5°増加、肩甲骨の外旋が4.4°増加
  • ロウ: 肩甲骨の上方回旋が4.6°増加
  • オーバーヘッドプルダウン: 肩甲上腕の外旋が18.2°増加

一方、従来の手の位置で行ったほうが手の位置を修正した場合よりも運動学的に有利であった運動は以下の通りです。

  • オーバーヘッドプレス: 肩甲上腕の外旋が9.1°増加、肩甲骨の外旋が5.5°増加

なお、チェストプレスにおいては両者の差異が見られず、ダウンワードプレスは運動学的に最も不利であるという結果となりました。

結論

CRT中の運動学は、手の位置によって変化します。したがって、健康な肩の機械学を重視するために、CRT中は手の位置を修正すべきです。

研究の限界

誤った運動学によってインピンジメントが起こるのか、もともとあったインピンジメントのせいで運動学が変わったのかは不明です。「有利な」運動学によって肩峰下のスペースが増えるかどうか、3Dモデルを確認する必要があります。

Reprinted from Phys Ther. 2016;96(7):1006-1017, with permission of the American Physical Therapy Association. ©2016 American Physical Therapy Association. APTA is not responsible for the translation from English.
(この記事は、米国理学療法協会(APTA)の学会誌『フィジカル・セラピー』96巻7号1006~1017頁に掲載された論文の概要を翻訳したものであり、セラピストプラスが同協会の許可を得て作成および掲載しています。論文概要の著作権はAPTAにあると同時に、同協会は翻訳文について一切の責任を負いません。)

参考URL

米国理学療法協会・学術誌 『Journal of the American Physical Therapy Association』

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