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全人工膝関節置換術後の患者さんに最適なバランス評価

公開日:2016.05.23 更新日:2016.06.03

患者さんの現状や回復状況を把握するために機能評価ツールを使っていますか? 例えば、平衡を維持する「バランス機能」を、それぞれに設けられた基準に則って測定する「バランス機能評価ツール」。ツールを用いると、過去の記録と比べやすくなりますし、複数のセラピストで情報を共有する際にも便利ですよね。ただ、いくつもあるツールのうち、どれを使うべきか迷ったことはありませんか?
そこで今回は、米国理学療法協会(APTA)の学会誌『フィジカル・セラピー』より、バランス機能評価ツールに関する最新の論文をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

Assessing Balance Function in Patients With Total Knee Arthroplasty

全人工膝関節置換術を受けた患者さんのバランス機能評価

香港仏教医院、Andy C.M. Chan
香港理工大学、Marco Y.C. Pang

研究テーマ

この研究の目的は、複数のバランス機能評価ツールそれぞれの、信頼性や正当性を判断することです。そのためには、1名の評価者による複数のツールでの比較や、特定の評価ツールにおける複数の評価者間での比較のほか、一貫性、妥当性、床効果や天井効果といった評価データの偏りなど、さまざまな側面を調べる必要があります。

  • BESTest(Balance Evaluation Systems Test:バランス評価システムテスト)
  • Mini-BESTest(BESTestの短縮版)
  • Brief-BESTest(BESTestの短縮版)
  • BBS(Berg Balance Scale:ベルグバランススケール/バランス機能評価)
  • FGA(Functional Gait Assessment:機能的歩行評価)
  • ABC Scale(Activities-specific Balance Confidence Scale:ABCスケール)

今回判定を行うのは上記の6つの評価ツールです。これらを用いてTKA(Total Knee Arthroplasty:全人工膝関節置換術)を受けた患者さんのバランス機能評価データを取り、各ツールを比較分析しました。

研究方法

これは観察に基づいた測定研究であり、各評価ツールを比較するために行われたデータ収集方法は以下のとおりです。

  1. 3名の評価者が、それぞれに3つのBESTest(BESTests、Mini-BESTest、Brief-BESTest)で、25名の患者さんを評価する
  2. 3つのBESTests、BBSおよびFGAで、46名(1に参加した25名を含む)の患者さんを、同じ評価者が1週間以内に評価する
  3. 新たな46名の患者さんを評価し、3つのBESTestと、ほかのツール(BBS、FGA、ABC Scale)が、いかに相互関連しているかを分析する

1は異なる評価者間の信頼性を、2は同一の評価者による各ツールの信頼性を、3は各ツールの妥当性を比較するために行った実験です。また、各テストに矛盾がないかという一貫性の判断については、妥当性と信頼性を統計的に評価できるクロンバックのα係数を利用しました。さらに、収集したデータに床効果や天井効果が出ているかどうかも分析しています。なお、被験者は全員TKAを受けた患者さんです。

研究結果

収集したデータを統計分析し数値化したところ、3つのBESTestが、以下の4要素において優秀な結果を出しました。

  • 複数の評価者間における、評価データの信頼性
  • 1人の評価者における、評価データの信頼性
  • 一貫性(ツール内での矛盾の有無)
  • 妥当性(他の評価ツールとの関連性)

なお、妥当性以外の要素に関しては、BBSとFGAでも、3つのBESTestと同等の値を示しています。また、BBSでのみ著しい床効果や天井効果が見られました。

結論

以上により、TKA患者のためのバランス機能評価ツールとして信頼性と正当性が高いのは、3つのBESTestであると考えられます。なかでもBrief-BESTestは評価に必要な時間が最も短いため、理学療法の現場において活用しやすいかもしれません。

研究結果の限界

これらの結果はすべて、末期の変形性関節症でTKAを受けた患者さんのバランス機能評価におけるものです。

Reprinted from Phys Ther. 2015; 95; 1397-1407, with permission of the American Physical Therapy Association. © 2015 American Physical Therapy Association. APTA is not responsible for the translation from English.
(この記事は、米国理学療法協会(APTA)の学会誌『フィジカル・セラピー』95巻10号1397~1407頁に掲載された論文の概要を翻訳したものであり、セラピストプラスが同協会の許可を得て作成および掲載しています。論文概要の著作権はAPTAにあると同時に、同協会は翻訳文について一切の責任を負いません。)

参考URL

米国理学療法協会・学術誌 『Journal of the American Physical Therapy Association』

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