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軟組織マッサージは非特異的な肩の痛みに効かない?

公開日:2016.07.18 更新日:2016.07.29

特にけがをしたわけでもなく、レントゲンを撮っても異常が見つからないといった原因不明の痛みを抱えた患者さんに対し、理学療法士としてどのようなセラピーを行っていますか? こういった非特異的な肩の痛みの場合、どのようなセラピーが効果的なのでしょうか。試行錯誤を重ねてよりよい結果を出そうと努力する上で、セラピーの効果に関する研究結果は大変貴重な情報です。
そこで今回は、米国理学療法協会(APTA)の学会誌『フィジカル・セラピー』より、非特異的な肩の痛みに対する軟組織マッサージ(骨・歯など以外の結合組織へのマッサージ)の有効性を調べた研究をご紹介します。日々の臨床をよりよくするため、ぜひ参考にしてみてください。

Effectiveness of Soft Tissue Massage for Nonspecific Shoulder Pain: Randomized Controlled Trial

非特異的な肩の痛みに対する軟組織マッサージは有効か:ランダム化比較試験

Illawarra Shoalhaven Local Health District
Paul A. van den Dolder
The University of Sydney
Paulo H. Ferreira、Kathryn M. Refshauge

研究の目的

肩の痛みの改善を図る一般的な方法として、軟組織マッサージと運動を組み合わせた理学療法が挙げられます。
この研究では、その軟組織マッサージの有効性を調べるため、非特異的な肩の痛みを抱える患者さんの痛み・関節可動域の問題などに対し、「軟組織マッサージと運動」または「運動のみ」の理学療法を行い、両者の改善度を比較します。

研究方法

研究を行ったのは、オーストラリアのシドニーにある公立病院内の理学療法クリニックです。被験者はいずれも非特異的な肩の痛みを訴えた患者さん80名で、平均年齢は62.6歳(標準偏差=12.2)でした。
また、評価の偏りを避け客観的に治療効果を比較できるよう、今回の研究ではランダム化比較試験を採用しています。被験者を40名ずつの2グループに無作為に分け、それぞれに「肩周辺の軟組織マッサージと運動」または「運動のみ」の理学療法を4週間行いました。それが終了したのち、両グループの改善度を比較することで、軟組織マッサージの効果の有無を調べています。
なお、改善度の評価方法は次のとおりです。

  1. 開始前:「痛み」を患者さんに0-100mmの視覚的アナログ尺度で評価してもらい、基準値とする。
  2. 開始前:「可動域(屈曲、外転、手の甲を背に乗せる)など」を測定し、基準値とする。
  3. 終了から1週間後:「痛み」と「可動域など」を調べ、それぞれの基準値と比較する。
  4. 終了から12週間後:「痛み」と「可動域など」を調べ、それぞれの基準値と比較する。

研究結果

12週間後に評価された「痛み」においてのみ、2グループ間でわずかながらはっきりとした差が見られました。そこでは「運動のみ」の理学療法を受けたグループの改善度が優位となっており、基準値との平均差は14.7㎜。なお、そのほかの比較要素においては、両グループ間での明確な差が見られませんでした。

結論

以上により、非特異的な肩の痛みを持つ患者さんに対し、運動によるリハビリに加えて軟組織マッサージを行っても、痛みや可動域の改善につながる追加的な効果はないと考えられます。

研究結果の限界

この研究では担当となるセラピストや被験者について、個人を特定できない状態にしてグループ分けを行うことは不可能であったことが挙げられます。また、各患者さんの肩の病状を明確にするための病理診断テストは今回行っていません。

Reprinted from Phys Ther. 2015;95(11):1467-1477, with permission of the American Physical Therapy Association. ©2015 American Physical Therapy Association. APTA is not responsible for the translation from English.
(この記事は、米国理学療法協会(APTA)の学会誌『フィジカル・セラピー』95巻11号1467~1477頁に掲載された論文の概要を翻訳したものであり、セラピストプラスが同協会の許可を得て作成および掲載しています。論文概要の著作権はAPTAにあると同時に、同協会は翻訳文について一切の責任を負いません。)

参考URL

米国理学療法協会・学術誌 『Journal of the American Physical Therapy Association』

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