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日本理学療法士協会のめざすもの

公開日:2017.10.16 更新日:2017.11.09

約10万人の理学療法士が所属している日本理学療法士協会。
11年間にわたりトップとして協会を指導してきた半田一登さんは、日本の理学療法の黎明期に学び、合格率わずか9.8%(!)の国家試験に合格。
以来、日本の理学療法の発展を見つめて来られた半田会長に、近年取り組んでいる海外戦略や、同協会が目指す方向性など、理学療法士の“これから”が垣間見えるお話をうかがいました。

半田 一登会長

理学療法を通じてアジアを支援

理学療法を通じてアジアを支援日本と同様、アジア各国でも高齢化が進んでいます。日本理学療法士協会(以下、「協会」)は、近年アジア各国への支援活動に注力しており、2017年9月27~28日には「アジア理学療法フォーラム」も開催しました。
「日本では昭和40年代、WHOが日本での理学療法普及のために世界中の優秀な理学療法士を集めて送り込んでくれたという経緯があります。当時の日本の2か所の理学療法学科に、アメリカやイギリス、インド、 アイスランドなどから教員が来てくれ、当時の授業は全て英語でした。我々は欧米の力で育ててもらって今日がある。今度は我々がアジアを支援する番です」

世界的にも評価が高い日本の理学療法のどのようなところをアジアに伝えていくのでしょうか。
「アジアで行われているリハビリは、まだ疼痛を和らげるのが目的なのです。日本でも昭和30~40年頃はそうでしたが、やがて痛みを取るだけではなくて、しっかり歩けるようになり生活できるようにするところまで持っていくようになりました。例えば今もモンゴルではポリオの麻痺の患者さんを鍼灸で治療していますが、麻痺を前提としてどう歩かせるか、という考え方が必要です。その点は日本のリハビリが非常に進んでいるところです。どの国で生まれようと、どこでも一定のサービスが受けられるようにしたい。今年からシンガポール政府に日本の理学療法士が雇用され、シンガポールの高齢社会にどう対応するか構想を練っているところです。中国でもこの 10月からは北京に日本式のリハビリが受けられる病院が登場します」
海外戦略は、日本から国際社会への恩返し。近い将来、読者のセラピストの皆さんにも海外で働くチャンスが増えるかもしれません。

専門・認定理学療法士の制度改革が必要

半田 一登会長協会の活動の柱は「一つは理学療法士の質を上げること。2つ目は理学療法士の働く場所を維持・拡大すること」(半田会長)です。年間200回以上もの講習会に2億円の予算を助成し、「専門理学療法士」「認定理学療法士」制度もあります。ただ、現在の認定制度には課題も。
「理学療法士の仕事はあまりにも領域が広いので、認定制度は目標設定をしやすいように『神経』『運動器』といった細かい分野別にしたのです。 ところが病院の仕事では骨折の患者さんだけを診ていられるわけではない。脳卒中をはじめあらゆる疾患を診られるジェネラリストが求められます。理学療法士の人数が多い施設では“脳卒中”“骨折”などとグループ分けするところもあるのですが、大局的に見ればほとんどがオールラウンドプレーヤーなのです。また、インセンティブがないといけないですね。医療職だから自己研鑚しろ、頑張れ、という理念だけでは努力できないものです。そこで、生涯教育システムを見直し、認定取得者が、よりインセンティブを得られるように考えていきたい。認定の方法も外部に公的な認定機構を作る方向で調整を始めています。努力した人が報われるシステムにしたいと考えています」

多様性のある“働き方”を作る

半田 一登会長半田会長の学生時代は、全国にたった2つの専門学校だけしかありませんでしたが、現在は理学療法学科を持つ学校が250校以上になり、1学年の定員の合計が14000人。なんと18歳人口の1%を占めるまでになりました。現場のマンパワーが増えるのは喜ばしいことですが、将来“理学療法士余り”という状況が起こるかもしれない、という問題も抱えています。その一方で、理学療法士の働く場所は地域にも広がっており、半田会長は理学療法士に「多様な働き方」を提唱しています。
「今後、新しい職域として、意欲ある理学療法士には、自治体の行政職などリハビリや介護の世界を動かすような立場になっていただきたいと思っています。行政の中ではリハビリテーションの視点からマネジメントする人が不足しています。 高齢者、障がい者、障がい児福祉に深い見識を持ち、その人ならではの発想で町や県を動かすという仕事があります。一方、現場意識の強い理学療法士には、これまでのように現場を中心としてより一層活躍してもらう。より多様性のある働き方を作るのも協会の役割だと思っています」

しかし、毎年毎年14000人の新人セラピストが入職してくる状況については、半田会長は「アブノーマルな状況」と危機感を持っているそうです。今後の理学療法士の養成について、協会としてはどう考えているのでしょうか。
「米国、カナダの理学療法学科は6年間一貫教育です。世界で3年制の専門学校教育でやっているのは日本と韓国とヨーロッパの一部だけ。世界基準から大きく遅れていることになります。とはいえ、私たちが目指しているのは、6年間教育ではありません。学内教育4年間に加え、国家試験合格後1年間の臨床実習を義務付ける“5年間教育”です。国家資格取得後、改めて患者さんの体に触れる臨床実習を1年間にわたり行う教育システムです。体に触って初めて患者さんの筋力の状態や、痛みが分かるものです。まだ実現の見通しは立っていませんが、少しでもその方向に動けたらと思っています」
次回は、半田会長ご自身のPT人生を振り返っていただき、理学療法の魅力についてうかがいます。

半田 一登 (はんだ かずと)

半田 一登 (はんだ かずと)会長

1971年(昭和46年)
九州リハビリテーション大学校 卒業
1971年(昭和46年)
九州労災病院 入職
1987年(昭和62年)
社団法人日本理学療法士協会理事
1996年(平成8年)
九州労災病院リハビリテーション科技師長
2007年(平成19年)
社団法人日本理学療法士協会会長
2012年(平成24年)
公益社団法人日本理学療法士協会会長
チーム医療推進協議会代表
一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団理事長
2015年(平成27年)
~2016(平成28年)
リハビリテーション専門職団体協議会代表

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