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調理と木工作業で脳も体も元気に! “お仕事あっせん型”デイサービスの取り組み

公開日:2025.02.07 更新日:2025.02.12

調理と木工作業で脳も体も元気に! “お仕事あっせん型”デイサービスの取り組み

取材・文:宅野美穂

株式会社隣家(埼玉県新座市)が運営する「デイサービス隣家」では、利用者が「役割」を持って活動する「お仕事あっせん型デイサービス」を行っています。

調理や木工作業を通じて脳と体の活性化を促すと同時に、地域との繋がりを大切にした独自の取り組みを展開。2024年には全国1,500以上の中から優れた取り組みを行う事業所として表彰されるなど、その活動は高い評価を受けています。

今回は株式会社隣家代表取締役西野裕哉氏に、デイサービス隣家の取り組みや介護業界における課題、今後の目標について伺いました。

\今の職場に満足していない方へ!/

「見る・考える・作る」を意識、調理や木工作業で脳と体を活性化

「見る・考える・作る」を意識、調理や木工作業で脳と体を活性化

デイサービス隣家の事業内容についてお聞かせください。

デイサービス隣家では2013年の開設以来、「お仕事型デイサービス」として調理と木工作業の2つを軸に活動。定員は1日あたり10名で、「毎日、利用者一人一人が日何らかの役割を持てる場所」を目指しています。

具体的な作業内容について教えてください

調理では食事の献立づくりから材料の調達、調理、配膳、片付けまで利用者全員で行います。おやつも手作りです。

木工作業では施設に置かれているスリッパ置きやテレビ台などの家具を制作しています。今では地域の方から家具の注文を受けるほどになり、利用者と一緒に採寸、材料の購入と制作、納品まで行っています。活動では「見る・考える・作る」を大切にしています。

買い物に行くことは歩行の練習になり、季節の食材を見ることで五感が刺激されます。調理での包丁使いは手先の運動に、木工作業は体全体の運動になります。

デイサービス隣家を立ち上げたきっかけは何ですか?

以前デイサービスで働いていた時、男性の利用者が何もせずにテーブルに突っ伏して過ごしている様子を見かけました。

女性は人と話すのが好きな方が多く施設の環境に馴染むのが速い印象ですが、男性はシャイなのか、そうではない。男性の利用者にも「やることがある」「役に立っている」と感じてもらえる場所を作りたいと思ったのがきっかけです。

畑作業や清掃などの活動を通じて地域の人たちとの交流を深める

畑作業や清掃などの活動を通じて地域の人たちとの交流を深める

調理と木工作業以外にも交流活動を行っていると聞いています。活動内容を教えてください。

地域の方たちとの交流活動では、子どもたちとの交流会や近隣の保育園と月1回の交流 、スターバックスでの週1回の清掃活動、地域の畑での野菜作り、ペットフード作りを行っています。交流会では近隣の大学生と協力し、ゲームや制作をします。

畑で採れた野菜や手作りしたペットフードは地域で販売。活動を通じてお年寄りと地域の方たちが自然に交流できる場を作り、認知症の方々への理解を深めてもらいたいと考えています。

子どもから大学生、ペットまで幅広い層にアプローチしている印象です。近隣の方たちはどのような反応ですか?

例えばスターバックスでの清掃活動では、店員の皆さまに喜ばれています。子ども連れの方も多く、子ども好きの利用者は特に楽しんで参加され、お母さまや子どもたちとの交流が生まれています。お店の隣にはドッグランがあり、犬を飼っている方たちとの会話も弾んでいます。

デイサービス隣家では、このような小さな交流が大切だと考えています。利用者が地域で役割を持ち、地域の人々と顔見知りになり、デイサービス隣家の活動を知ってもらい、利用者が地域の一員として受け入れてもらえるのは大きな喜びです。

過去のトラブルをきっかけに認知症の理解を深める活動を開始

過去のトラブルをきっかけに認知症の理解を深める活動を開始

「認知症の方々への理解を深めたい」とありましたが、それはなぜですか?

数年前、認知症男性の利用者が地域住民とトラブルになりました。事情を聞くと、お店の前に繋がれていた犬が不憫になり連れて行ってしまったとのこと。

そうとは知らない飼い主とトラブルになり、「この地域から出て行ってほしい」と強く言われてしまいました。飼い主にとっては大事な家族を勝手に連れ回されたので、怒るのは当然です。勝手に犬を連れ出してしまった男性の行動は良くないことです。

しかし、男性自身は純粋に犬を「かわいそう」だと考えていたため、責めることはできません。

この出来事を通じて、私は「地域の人たちの認知症に対する理解が深まれば、トラブルも少なくなるのではないか」と考えるようになりました。

そこで日常的に地域の人たちと交流する機会を作り、認知症への理解を広める活動を始めました。

今の事業はどのように作り上げてきたのですか?

地域との繋がりを作ることから始めました。自治体の集まりや地域の会合へ積極的に参加し、地域にデイサービス隣家の活動を知ってもらうように働きかけました。

作り上げた地域の繋がりから、さまざまな活動が生まれました。例えば畑作業は地域の方から人手不足だと相談されたことがきっかけでスタートした活動です。

どの活動も地域の人たちとの繋がりがなければ、実現できなかったものばかりです。

役割を持って頭や体を動かすことが認知症の進行に良い効果を生む

役割を持って頭や体を動かすことが認知症の進行に良い効果を生む

利用者の様子について教えてください。

利用者は主に80歳前後。9割以上が認知症の症状が出ています。要介護度が低く状態は比較的安定していますが、短期記憶に困難がある方が多いです。

20秒前の出来事を忘れてしまうような状態ではあるものの、体は元気で会話もできます。「ありがとう」と感謝の言葉伝えてくれます。

活動を通して、利用者の言動や行動にどのような変化が見られますか?

認知症は進行性なので症状を改善することはできません。重要なのは、進行を遅らせることです。デイサービス隣家の利用者は、過去5年間のデータを見る限り要介護度に変化が見られません。

つまり、少なくとも5年間は要介護度が上がることなく、体が動く状態を維持できていると考えられます。家で一日中テレビを見て過ごすよりも、役割を持って体を動かし、脳を働かせた方が認知症の進行には良い効果があると感じています。

認知症の人と地域の人が支え合いながら暮らす住まいをつくりたい

認知症の人と地域の人が支え合いながら暮らす住まいをつくりたい

デイサービス隣家を運営するうえで課題だと感じていることは何ですか?

人件費や各種経費などの財源の確保です。介護保険による支給額には上限があり、定員が10人であれば10人分の保険料が支給されます。利用者の要介護度により単価も変わるのですが、デイサービス隣家の利用者は要介護度が低いため支給額の平均単価も高くありません。

一般企業であれば商品の単価を上げることで財源を確保できますが、介護保険業界では食費以外の値上げはほぼできません。支給額の上限が決まっている中でどのように財源を確保していくかが悩ましい点です。

西野さまが目標としていることは何ですか?

認知症の方の「住まい」を作ることです。住まいの形態については、介護保険施設にするか、シェアハウスのような形にするか、決めかねています。

すでに、一棟の建物に認知症の方と地域の大学生がともに暮らすコミュニティ事例もあります。施設として運営するには介護保険制度など厳しい規制がありますが、「介助する側」と「される側」ではない、住民同士が自然に支え合う形のコミュニティをつくるのが理想です。

もちろん、目標にたどり着くまでの道筋はじっくり考えていく必要があります。今はデイサービス隣家の事業に注力し、最終的に理想の住まいづくりに繋げていきたいです。

 

デイサービス隣家

デイサービス隣家

埼玉県新座市大和田1-12-15 フラワーハイツ101
048-487-7838

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