「作戦マン」が子どもを救う! 飛騨市発、学校作業療法室の取り組みを紹介
公開日:2025.02.15

取材・文 宅野美穂
HABILIS(はびりす)グループ」は、岐阜県大垣市・飛騨市で作業療法の視点から地域支援を行なっている団体です。
今回、紹介するのは飛騨市における「学校作業療法室」。リハビリの専門家である作業療法士の部屋を学校内に設け、子どもたちを支援する取り組みとして注目を集めています。
はびりすの事業内容や学校作業療法室について、代表理事の作業療法士山口清明(やまぐち・さやか)氏と作業療法士の奥津光佳(おくつ・みつよし)氏にお話を伺いました。
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目次
行政と連携して住民のニーズに応える、地域に根ざした支援

「HABILISグループ」の全体像
HABILISグループについて教えてください。
山口さん:私たちは「病気や障害生きづらさを抱えながらもいきいきと生きることを支援したい」との思いで、2016年に「NPO法人はびりす」を設立。2022年には児童福祉事業を担う「株式会社りすの実」を立ち上げ、HABILISグループができました。
NPO法人はびりすでは、行政や教育委員会からの委託事業、研究出版などを行なっています。学校作業療法室の取り組みもNPO法人はびりすの管轄です。
「はびりす」の由来は何ですか?
山口さん:「はびりす」の語源は「habilitation(ハビリテーション)」です。「障害を持って生まれてきた子どもたちが、障害を持ちながらも自分らしく育っていく」との意味があります。
私も同じ考えでしたので名称に取り入れました。そして、私自身が多動であることから動き回るリスと組み合わせて「はびりす」にしました。
マスコットキャラクターのリスは、子どもたちが世の中でいきいきと走り回る様子をイメージしています。
山口様と奥津様の業務内容についてお聞かせください。
山口さん:飛騨市地域生活安心支援センター「に所属しています。「ふらっと」は多様な組織を横断した相談支援チームです。専門相談員は虐待をはじめとする複雑なケースにも対応。地域住民の相談対応やアウトリーチなどに加えて、「こういうサービスが必要だ」という声を受けて政策立案もしています。
奥津さん:作業療法士として「学校作業療法室」の取り組みに従事しています。
大学生の時に山口氏と出会い、「乳幼児期から大人まで全ての人をカバーできるような作業療法をやりたい」との思いに共感。共に活動することになり、今に至ります。

子どもたちのやりたいことを実現するために「作戦マン」が活躍

学校作業療法室で活躍する「作戦マン」
学校作業療法室とは、どのような取り組みですか?
奥津さん:飛騨市内の小中学校を訪問し、学校内で支援学級、通常学級も含めた全ての児童を対象に、学校生活を「やりたいようにやれる」ためのサポートをしています。
学校作業療法室の取り組みを始めたきっかけは、学校相談や教員支援の中で「障害のある子だけでなく、全ての子を支援してほしい」「必要な子どもたちに支援を届けたい」という要望が多く寄せられたこと。
作業療法の視点から、児童と一緒に「どうやって学校生活をデザインするか」を考える部屋になっています。
「学校生活をデザインする」とありますが、実際に何をするのですか?
奥津さん:「療育アプローチ」です。具体的には子ども自身が目標を決め、達成のための作戦を立てて実行し、結果を確認してさらにブラッシュアップしていくのを支援します。
作戦を立てるうえで大切にしているのは、「子どもたちのやりたいことは何か」「教室で実現したいことは何か」「どうすればそれが叶うのか」という視点で考えること。
例えば繊細でドキドキしてしまう子が「教室で上手に発表したい」時、「どのような作戦を立てるか」を子ども自身が考え作戦を引き出せるようコーチングしています。
「改善」を「作戦」に置き換えれば、子どもたち自身もイメージしやすそうですね。
奥津さん:「合理的配慮」というと子どもたちに固い印象を与えますが、「作戦」だと遊び心があります。「みんなで作戦を立てよう」と誰にでも使えるため、「作戦」のワードを前面に押し出しています。
山口さん:学校作業療法室では、作業療法士のことを「作戦マン」というキャラクター化しています。何かあれば子どもたちだけでなく、先生や家族とも作戦会議をする流れになります。
給食の時間の学校放送で「不器用でも作戦を立てて上手くいったら作戦が良かったし、上手くいってなかったら君のせいじゃなくて作戦が上手くいかなかったんだ」とメッセージを伝えることも。「失敗は作戦のネタだ」といった文化が定着しつつあります。
子どもの課題は作業療法士がサポート、先生にも余裕が生まれる

学校作業療法のワークの様子
学校作業療法に対する子どもたちの反応を教えてください。
奥津さん:「作戦マン」は広く認知されていて、私が校内を歩いているだけで声をかけられます。私たちは学校作業療法室を「作戦ルーム」と呼んでいるのですが、このおかげで「学校作業療法室は目標を立てたい子が行く特別な部屋」との認識になりました。
「作戦ルーム」に行けることへの特別感が生まれ、「私も行きたい」という声が上がるほど魅力的な場所となっています。
先生からは、どのような声がありますか?
奥津 先生からは「負担が減った」「問題に対応する際の方向性が見えた」との声があり、管理職からは「教員のメンタルヘルスが改善した」との評価が寄せられました。
作業療法士が介入することで、先生の負担軽減に繋がるわけですね。
山口さん:先生が児童の発達上の課題で困った際には、「作業療法士にお任せください」と伝えています。私たちは行政や教育委員会と協働しているので、お子さんの家族の問題やそれまでの経緯、健診時の情報等を全て共有することができます。
先生は教育に専念してもらい、読み書きが大変、注意集中が難しいといった発達の問題は作業療法士が担う関係性を構築しています。
学校作業療法を全国へ、子どもたちが輝ける社会の実現を目指す

学校作業療法室に来室した児童との様子
今後の目標についてお聞かせください。
奥津さん:今、学校作業療法士は私が1人で複数の学校を担当している状況です。子どもたちの作戦を達成するには十分な支援回数が必要ですが、1人では手が回りきらない現状もあります。
SNSや動画での発信をしながら、チームとして活動できる人材を増やしていきたいです。
山口さん:飛騨市では、各学校への作業療法士の常勤配置を将来的な目標としています。文科省やこども家庭庁も視察に訪れていることから、制度化を見据えたモデル事業だと思って取り組んでいます。
目指すのは、子どもたちが未来に希望を持てる社会。障害や生きづらさを抱える子も含めて全ての子どもたちが明るく未来を切り拓く姿を見せることで、日本全体を変えられたらと思います。


HABILIS(はびりす)グループ
大垣本社 岐阜県大垣市内原1-168-1
0584-84-3800
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