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目の見えない人はもちろん、見える人も!「音でみるSOUNDFUL RECIPE」で料理をさらに楽しく

公開日:2025.04.11

目の見えない人はもちろん、見える人も!「音でみるSOUNDFUL RECIPE」で料理をさらに楽しく

取材・文:増田洋子

調味料や加工食品の製造と販売を行っている味の素株式会社(東京都中央区)は、2025年 2月19日に音声読み取りに特化したレシピサイト「音でみるSOUNDFUL RECIPE」をリリースしました。

このサイトは視覚障がい者のために作られたものですが、目の見える方にとっても音を通じて料理の新たな発見があるといいます。

今回は、このサービスの開発に携わったコミュニケーションデザイン部の赤坂由美子さんにサービスの詳細から今後の展開まで聞きました。

赤坂 由美子さん

今回インタビューした方:赤坂 由美子さん

味の素株式会社コミュニケーションデザイン部
味の素のさまざまなブランドの広告コミュニケーションの企画、パッケージデザインなどを担当している。

 

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「レシピ大百科」の人気レシピを音に変換

「音でみるSOUNDFUL RECIPE」のレシピの引用元となる「レシピ大百科」の概要を教えてください。

簡単に作れる毎日の献立からおもてなし料理まで、料理のヒントが盛り沢山のレシピサイトです。

現在は、1万2千件以上のレシピがそろっており、中には当社製品を使用したレシピもあります。

フリー検索機能以外に、定番食材、ジャンル、料理区分からレシピを検索することも可能です。

豊富なレシピは当社の強みであり、お客様との接点になる大切なコンテンツでもあります。

「音でみるSOUNDFUL RECIPE」はどのようなサービスでしょうか。

視覚障がい者の方々と一緒に作り、音声読み上げに特化したレシピサイトです。

視覚障がい者向けに設計していますが、見える人にとっても、もっと料理を楽しめる気付きがあります。

このサイトの特徴は大きく分けて3つあります。

1つめが、音声読み上げに最適化されたUI(*)とUX(*)です。

料理の写真や工程の動画は音声読み上げの妨げになることからカットしました。

そして、「主菜」や「100g」などの単語は「ぬしな」「100ジー」といった読み間違いがあったため、漢字の使用を避けて「しゅさい」「100グラム」などと表記しています。

また、弱視の方が見やすいように、サイトの背景に黒、文字に白を採用しています。

(*)UI…ユーザーインターフェース(User Interface)の略称。ユーザーが製品・サービスを使用する際のあらゆる接点のこと。フォントやボタンの配置など。
(*)UX…ユーザーエクスペリエンス(User eXperience )の略称。ユーザーがサービスや製品の使用で得られる体験を示す言葉。

2つめが、視覚に依存する表現の変換です。

「きつね色になったら」「透き通ってきたら」などの視覚に依存した表現を避け、「ぱちぱちという華やかな音」「しゅーっという静かな音」などに置き換えています。

3つめが、音声コラムです。

一部のメニューは、料理大好きな全盲のみきさんによる音声コラムが挿入されています。

例えば、お好み焼きであれば、ひっくりかえすタイミングと、ベストな焼き上がりのタイミングを、みきさんによる描写と、実際の料理の音で知ることができます。

レシピの数と、レシピの選定基準についてお聞かせください。

2025年3月中旬現在、30のレシピが掲載されていて、3月下旬には100まで増やす予定です。

レシピは「レシピ大百科」の検索上位から順に選びました。

「視覚に障がいがあるから」といった先入観で採用するレシピに制限を設けず、誰もが求めているものを掲載した方がいいと思ったからです。

料理の楽しさをより多くの人へ提供したい

どのような背景から開発されたのでしょうか。

当社は、日々食を通じて皆様のウェルビーイングにどのように貢献できるかを模索しております。

その中で、もっと身近な日常の中で、人々のウェルネスをサポートしていきたいと考えるようになりました。

そこで「レシピ大百科」を見直し、「視覚障がい者に向けても提供できているのか」と自問したことが開発のきっかけです。

音声に特化したレシピサイトは新しい試みで、誰一人取り残さずレシピを届けることに意義を感じています。

どのような縁で、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティに協力を仰ぐことになったのでしょうか。

ダイアローグ・ジャパン・ソサエティは、障がいの有無にとらわれず、互いに認め合い、助け合うためのエンターテインメントプログラムを提供している団体です。

障がいのある方々の行動に制限をかけるのではなく、できることに目を向けて、共創し合うという思想があります。

その思想が、私たちが「音でみるSOUNDFUL RECIPE」で実現したいことと合致したため、協力していただくことになりました。

開発のどの過程において、協力を仰いだのでしょうか。

まずは、レシピ作成に必要な情報を洗い出すために、みきさんが料理をしているところを見学しました。

そのときに「目が見えないからできないのではないか」という固定概念が覆されました。

見えていないことが信じられないくらい、私たちと同じように料理をされるんです。

その経験から、視覚障がい者の方は料理が難しいだろうよう先入観を持つではなく、できること、障がい者の方だからこそ楽しめる料理の視点を前提としたレシピサイトにしようと決めました。

その後、サイトを設計し、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティと関わりのある視覚障がい者の皆さんに使ってもらいました。

改善点がたくさん上がり、その1つに「温かみに欠ける」ということがありました。

読み上げに最適化したことでサイトはソリッドになり、使いやすくなった一方、機械音声だけでは単調な印象でした。

そこで、追加したのが音声コラムです。

目が見えないからみきさんだからこその描写は、目の見える私たちにもわかりやすく、新たな気付きを得られると思います。

開発において苦労をしたことと、それをどのように克服したのかを教えてください。

音声読み上げによる読み間違いの洗い出しには苦労しました。

この経験が蓄積されて、アルゴリズムを構築できたら、この洗い出しの作業にAIを活用できるかもしれません。

しかし、今は初めて作業をするので、人の手でレシピを1つ1つ確認していきました。

見えない人・見える人の両方からポジティブな声が

リリースしてから1カ月が経ちます。現在までにユーザーからはどのような声がありますか。

視覚障がい者向けのサービスは、初めての取り組みでどのような反響を頂けるのか緊張感は少しありました。

実際のところ、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティのネットワーク内で使ってもらった結果、「使いやすい」「料理が上手にできた」といったお声を頂戴しており、特に改善を指摘する声は今のところいただいておりません。

SNSでは、視覚障がい者の方の「旦那さんと一緒に作りました」といった投稿を見つけました。

障がいのない方からも「これだけ情報がソリッドだと使いやすい。他のレシピサイトもこうしてほしい」「音に注目するという視点が面白い」といった投稿があり、手応えを感じています。

サービスを知ってもらうために、どのような工夫を行っていますか。

視覚障がい者や、その関係者に知ってもらうことの難しさを実感しています。

当事者がどのような媒体や物事に接点があるのか調べており、周知を模索している最中です。

現在までの周知として、2月19日、3月17日に全国紙の新聞広告を出稿しました。

また、親和性を考慮してラジオという聞くことに特化したメディアへの出稿や出演も行っています。

より使いやすいサイト、よりよい食体験の提供を目指して

サービスに関する今後の展開、目標をお聞かせください。

まずは掲載するレシピ数を増やすことです。

そして、より使いやすいサイトを目指して改善や追加機能の実装を行い、一人でも多くの方に料理を作れる楽しさ、喜びを提供できるようにしていきたいですね。

ユーザーへのメッセージお願いします。

まずは、使ってみてください。

レシピの聞き取りやすさ、分かりやすさを実感していただけると思います。

また、他のレシピサイトにはない音声コラムは、どなたでも料理における新たな発見があるはずです。

監修をしてくださったみきさんの「料理は失敗しても、どうにかできるから失敗ではなくなる。

視力が徐々に落ちていき、できないことが増えていく中、料理を作れたことで成功体験を積めた」という言葉が印象に残っています。

これを聞いて、料理が目の視えない方の心の支えにもなるということを知りました。

この「音でみるSOUNDFUL RECIPE」と食を通じて、ユーザーの皆さんへ、より良い食体験を提供できれば幸いです。

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