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ろう児が積極的に学習できる環境をオンラインツールで提供「サークルオー」

公開日:2025.06.27

ろう児が積極的に学習できる環境をオンラインツールで提供「サークルオー」

取材・文 澤田智子

NPO法人Silent Voiceが運営するオンライン教育サービス「サークルオー」は小学生~高校生までのろう・難聴児が場所を問わず学習できる場を提供しています。

本インタビューでは、同サービスを立ち上げた尾中友哉さんと運営に携わる大西啓人さんに、ろう・難聴児におけるオンライン学習の需要やオンラインツールを使うからこそのメリット、これからの展望などを伺いました。

尾中友哉さん

今回インタビューした人:尾中友哉さん

NPO法人Silent Voice 代表理事
1989年滋賀県大津市出身。ろう者の両親の間に生まれた聞こえる子ども「コーダ」として育つ。2017年に教育と就労においてろう者のサポートをおこなうべく、NPO法人・Silent Voiceを設立。現在は放課後等デイサービス「デフアカデミー」とオンライン教育サービス「サークルオー」を運営。ろう者と聴者との関わりをアップデートする活動に取り組んでいる。

尾中友哉さん

今回インタビューした人:大西啓人さん

NPO法人Silent Voice
サークルオー事業部
1997年奈良県出身。聴者の家庭で生まれ、デフコミュニティで日本手話を学び、手話を第一言語として育つ。ギャロデット大学ろう教育研究コース修士課程修了後、2022年よりサークルオーの事業に携わるように。サークルオーの運営業務全般を担当。

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コロナ禍によってオンライン授業の需要が顕在化

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「サークルオー」を立ち上げることとなった経緯を教えてください。

尾中:僕は両親ともにろう者の家庭で育ち、電話が使えないためFAXを使うのが基本でした。FAXはいかんせん相手が読んだか分からないし即返信はもらえないという欠点がありましたが、スマートフォンが普及してからは大きな変化がありました。

テレビ電話をつなぐことで、手話を使って電話できるようになったんです。

離れた場所でもろう者とリアルタイムに連絡が取れるようになったことは僕にとって革命的な出来事で、その頃からずっと「オンラインで会話ができるんだ」という考えがありました。

そして2017年に通所型の「デフアカデミー」を開所したところ、京都、兵庫、奈良と近畿圏内ではあるものの、遠方から通う子どもも少なくはありませんでした。

基本的にデイサービスは通所支援が前提。どうしても地方ではろう・難聴児の少なさゆえに通所型のサービスは成り立たないのだと実感し「じゃあオンラインでできるんじゃないか」ということで「サークルオー」を立ち上げました。

実はコロナ禍の前から始めていたサービスなのですが、コロナ禍をきっかけに需要が顕在化した印象があります。

サークルオーではどのようなカリキュラムを実施しているのでしょうか。

大西さん:ことば学習、教科学習、クラス型授業の3コースに分かれています。なかでもことば学習と教科学習はマンツーマンの個別授業となっています。

ことば学習は日本語または手話の語彙の数を増やすことが目的となっており、主に小学生の申込みが多いですね。教科学習は一般的な塾に近いイメージで、学校で学ぶ5教科や受験対策、漢字検定などの勉強をおこないます。

ろう・難聴の子どもの約90%は、聞こえる親のもとで育ちます。そのため、聞こえる聞こえないの違いから、なかなか伝わらないこともあります。

その結果、情報が得づらく、語彙が少ない子どもも多いです。ここでは子どもに合わせて100%の情報が得られる環境を目指し、その上で語彙の数を増やしていくことを考えています。

クラス型授業はどういった内容になっていますか。

尾中さん:クラス型授業では探究型の学習がメインになっています。具体的には、雑学クイズなどを取り入れています。

聞こえない子たちの興味関心を広げようと思ったら、まず見てわかる情報である必要があります。

その点でクイズ形式にすると、まるでクイズ番組に参加しているような気持ちで楽しく知識を広げられるようです。

サークルオーは好きな授業を選択できるスタイルですが、生徒さんは大体どれくらいのコマ数を取っているのでしょうか。

尾中さん:個別対応なので、子どもによって取るクラス数はバラバラです。基本は、週2回ペースで月に8回ほど受講するケースが多いですが、なかには月20回受講している子もいます。

1コマ1,800円~とできるだけ負担は少ないに設定していますが、月に8万円分のクラスを受講している意欲的な子もいますね。

オンラインでどこにいても受講できるので、その子どもに合わせた授業設計ができるのがメリットだと思います。

やはり授業をたくさん取りたいという要望は多く寄せられているのでしょうか。

大西さん:授業数が多いケースは特に中高生、なかでも高校生に集中します。大学や高校の受験に備え学力をつけたいものの、特に数学などは週1回の受講では足りないと感じるため週2、3回のクラスを取る子もいます。

子どもがどういった学習を必要としているのかを見極めるためにも、ヒアリングは欠かせません。

まず登録時にどこの学校に通っているか、手話でコミュニケーションができるかなどの基礎情報を入力してもらっています。

ただそれだけでは深いところまで引き出しにくいので、その情報をもとにオンラインで子どもや保護者にヒアリングを行います。だいたい1時間ほどお話を聞かせてもらい、勉強したい内容や週に何回学びたいかということを細かく話し合います。

同時に子どもの好きなものや性格などをできるだけ聞き出し、子どもの実態に合わせた先生を紹介できるように調整していきます。

通学・オンラインの併用を目指す

通学・オンラインの併用を目指す

オンラインツールを使っていることでの難しさやデメリットはありますか。

尾中さん:デフアカデミーは対面なので、教室や保護者の顔を見ていれば、子どもたちの状況など雰囲気として掴めるものがあります。

しかし、サークルオーはオンラインサービス。生徒は個別で受講します。授業のレコーディングの仕組みもありますが、それを1個1個見ていくのは大変なことで、子どもたちの理解度など、把握できる範囲はどうしても限られてしまいます。

その一方で、オンラインだからこそできることもあるため、メリットを生かしていこうと考えています。

運営側の大西さんとして、オンラインでの授業のニーズは高いと感じますか。

大西さん:オンライン教育の必要性やニーズはすごく高いなと感じています。特に、地方に住むろう・難聴児にとって、手話対応の塾や学習機会は非常に限られています。

私自身が奈良県で育ったのですが、塾や学習を深められる場所というのが少ないと感じました。私は運良くマンツーマンで対応してくれる環境が見つかりましたが、サークルオーを通していろんな子どもたちの話を聞くと、なかなか適した環境が見つけられないようです。

コミュニケーション方法が限られているなかで、一般的な塾では難しいからと断られたというようなケースはよく目にします。

保護者の方々からも、子どもが自分に合った環境を見つけるのは難しいということをよくうかがいます。その中で「サークルオーでは自分に合ったコミュニケーションが勉強ができるのでありがたい」という声をよく聞き、運営側としては嬉しく感じますね。

今後の目標を教えてください。

尾中さん:ろう・難聴児に特化した専門的支援の場を確立することを目指しています。例えば、発達障がいの子ども向けの放課後等デイサービスは数が多く地方にも施設があります。

しかし、そこはろう・難聴児に特化した施設ではないため結果的に孤立してしまうんです。やむなくその環境で我慢するというケースは珍しくありません。

僕らとしては、ろう・難聴児のための専門的な支援を行う場所があれば、支援の幅が広がると思っています。どうやってそういう場を作るかは課題ですね。

オンラインだけでもやりにくいことはありますし、教室だけでも通える対象者は限られてしまいます。どちらもうまく併用した方法を検討しないといけないと感じます。

大西さんはいかがでしょうか。

大西さん:オンライン教育は、全国的に見るとまだまだ浸透しているとはいえません。

そこで、国に支援として認めてもらい、制度に含めてもらうことを目指しています。それによってオンラインでのシーンが増えていき、マイノリティの子どもたちも支援ができる環境を社会的に整えてほしいと思っています。

その目標を実現するためにも、サークルオーは社会に対して、自分たちができることを示せるように実績を重ねています。

また、ろう・難聴の子どもたちは、自分がどうしていくのか、生活や暮らしのために何をしたらいいかという情報が足りないと感じます。

なかなか情報がつかめず、孤立してしまうことも少なくありません。そのため、先生や親に言われたことを、そのまま受け入れて成長していく子どもが多いというのが現状です。

そうではなく、小中高の間にさまざまな経験を通し、自分自身がやりたいことは何なのかを見つけられる、いくつもの選択肢から選べることが最も大切だと思っています。

例えば、私は留学経験があるのですが、以前留学に興味がある子どもたちを集めて、私や他の経験者を迎え留学の経験を話すオンライン交流会を開催しました。

その時、子どもたちは新しい気づきや情報を得ることができたと話していました。大人や先輩の立場で経験談や情報を提供することで、子どもは「本当に自分のやりたいことは何か」を見つめ直し、大量の情報の中から自分に合う方法は何かを考え始めることができます。

私個人としては、たくさんの情報や選択肢をサークルオーとして提供していければと思っています。

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