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カームダウンスペースは刺激の少ない休憩所。感覚過敏の人の外出を後押し

公開日:2025.08.29

カームダウンスペースは刺激の少 ない休憩所。感覚過敏の人の外出 を後押し

取材・文 桑原由布

感覚過敏は五感から受ける刺激を過剰に強く感じ、苦痛や不快感が生じる症状です。

こうした症状により、外出にストレスを感じる人も少なくありません。

株式会社クリスタルロードが運営する感覚過敏研究所は、感覚過敏の人が外出先で休める「カームダウンスペース」の普及を目指しています。

本インタビューでは、感覚過敏の当事者として困りごとを解決する事業に取り組む加藤路瑛さんに、カームダウンスペースの意義やこれからの展望などを伺いました。

加藤路瑛さん

今回インタビューした方:加藤路瑛さん

株式会社クリスタルロード 代表取締役社長
感覚過敏研究所 所長
2006年生まれ、千葉県出身。
感覚過敏の当事者として感覚過敏の課題解決を目指し、2020年に13歳で感覚過敏研究所を設立。
以来、感覚過敏の啓発活動、対策商品の企画・販売、研究に力を注ぐ。

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感覚過敏を理由に「今」をあきらめない生き方がしたい

株式会社クリスタルロードはどのような会社ですか。

株式会社クリスタルロードは2018年12月、私が中学1年生の12歳のとき立ち上げた会社です。

感覚過敏の課題解決を目指す「感覚過敏研究所」の事業がメインです。

感覚過敏の啓発、対策商品の開発や販売、感覚過敏の研究、この3つが感覚過敏研究所の柱です。

実は私自身が当事者で、視覚の過敏さは弱いですが、聴覚・嗅覚・味覚・触覚の感覚過敏があります。

食べ物の味・においを強く感じすぎて気持ち悪くなったり、学校の教室や電車の中などの騒がしさを苦痛に感じたりといった症状に悩んできました。

服や靴下にも痛みを感じ、服の重さにも疲れます。

起業した当初は小中高生の起業支援事業に取り組んでいたのですが、感覚過敏という症状の存在を起業後に知り、長年悩んできた息苦しさの正体を知りました。

SNSで感覚過敏の困りごとについて発信するとたくさんのコメントが寄せられ、社会の中で自分と同じ悩みを持つ人が予想以上に多いことも分かりました。

父からも「せっかく自分の会社を持っているんだから、自分の困りごとを解決する事業をやってみたら」と背中を押され、感覚過敏で「今」をあきらめなくてはいけない状況を変えようと、2020年1月に感覚過敏研究所を立ち上げました。私が13歳の時の出来事です。

現在は当事者同士が情報交換できるコミュニティ「かびんの森」の運営や、感覚過敏の人が快適に暮らすための商品開発に加えて、大学と共同で感覚過敏に関する研究や、講演会などの啓発活動も行っています。

感覚過敏研究所のオンラインストアでは、感覚過敏の人が日常生活を少しでも快適に過ごすためのアイテムも販売しています。

感覚過敏の困りごとを伝える缶バッジや、触覚過敏の人のためのアパレル用品、光や音など環境刺激が苦手な人のためのカームダウンボックスなど、さまざまなアイテムを取り扱っています。

後天的に感覚過敏になる人もいることを知ってほしい

感覚過敏について、リハビリ職の人たちが理解しておくべきことはありますか。

感覚過敏は発達障害の人に多く見られる症状ですが、他にもさまざまな疾患で見られる症状です。

例えば、認知症が原因で感覚過敏の症状が現れることもあります。

てんかんや脳卒中、怪我による高次脳機能障害など、リハビリが必要な方たちが抱える疾患でも感覚過敏の症状が出ることもあります。

こうした病気や怪我で後天的に感覚過敏になる人もいますし、他人事ではない問題だと捉えていただきたいです。

中には感覚過敏の自覚がないけれど、なんとなく不快感を抱えているといった方もいらっしゃいます。

第三者が本人の感覚を正確に推し量るのは難しいですが、リハビリを受ける患者さんの中にも、感覚過敏の方がいらっしゃる可能性があることを知ってもらえればと思います。

カームダウンスペースは刺激から離れて落ち着ける空間

カームダウンスペースについて教えてください。

カームダウンスペースは音や光、周囲の視線などの感覚刺激から一時的に逃れ、落ち着きを取り戻すための空間です。

感覚過敏の方や、発達障害や精神疾患のある方などが、外部からの刺激を遮断して気持ちを落ち着かせるために利用されています。

公共施設やイベント会場など外出先で利用できる設備として設置されているものや、自宅や学校の教室内など屋内に設置するものもあります。

部屋として用意するケースと、ボックスやパーテーションを利用してスペースを作る方法があります。
感覚過敏研究所では販売代理店として、日本で流通するほぼ全てのカームダウンボックスを扱っています。

個人向けのカームダウンボックスはオンラインストアで購入することもできます。

福祉施設や教育施設のほかにも、公共施設や交通機関などでカームダウンスペースを導入する事業者が少しずつ増えてきています。

博物館や動物園、遊園地などの娯楽・文化施設で導入するケースも出てきました。

カームダウンスペースの存在自体が、当事者の外出を後押しできることが一番の存在意義だと思います。

もちろん、実際に体調不良時に利用できるのも助かりますが、外出自体をあきらめていた人にとっては、休めるスペースが確保されていることで外出に対する心理的なハードルが一気に低くなり、「これまであきらめていたけど、外出してみよう」と思えるきっかけになるのです。

大阪万博には約40か所のカームダウンスペースが設けられています。

そのことをSNSで発信した際、「カームダウンスペースがあるなら行ってみようと思います」とコメントをくださった人もいました。

理解不足が課題、外出をあきらめなくていい環境をつくりたい

カームダウンスペースが普及する上で、課題になっていることはありますか。

カームダウンスペースに対する認知や理解が十分に広がっていないことが、最も大きな課題です。

また、理解を示してもらえても予算を確保できない、ガイドラインがないため適切な設置場所や運営方法が分かりづらいといった課題もあります。

今後の目標を教えてください。

現在は販売代理店としてカームダウンスペースを取り扱う立場ですが、今後は感覚過敏研究所として自社開発にも取り組んでいけたらと考えています。

最近は美術館や博物館、劇場といった文化・芸術施設から、カームダウンスペースを設置したいという相談が届くようになりました。

多くの人たちが集まる場所でカームダウンスペースの設置を進めることで、こうした空間の認知や理解が今よりも広がることを期待しています。

私が目指す究極のゴールは「感覚過敏という言葉も概念も不要な世界」です。

それは、感覚過敏の根本解決を医学的に発見できることかもしれませんし、そのような言葉が不要なくらいに人々が多様性を認め合える社会に成熟することで実現されるのかもしれません。

現在はその究極のゴールに向かう途中ですので、感覚過敏の対策方法を考えたり、環境調整に取り組みながら、五感にやさしい社会の実現に向けて取り組んでいけたらと思っています。

感覚過敏のある人は移動中の刺激や人混みでひどく疲れてしまったり、外出先で体調不良になったり、そうしたことが不安でそもそも外出ができない人もいます。

感覚過敏があっても日常生活で必要な場所や、楽しめる場所にも出かけられるよう、カームダウンスペースがより身近な設備として普及することを願っています。

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