外出先の五感情報・休憩場所が一目でわかる地図サービス「Calmspot(カームスポット)」 をリリース
公開日:2025.08.30

取材・文 桑原由布
株式会社クリスタルロードが運営する「感覚過敏研究所」は、2025年5月31日に感覚過敏の人の移動や外出を支援するマップサービス「Calmspot(カームスポット)」をリリースしました。
音や光、におい、人混みなどの刺激がある場所や、静かで落ち着ける場所、カームダウンスペースの情報を地図上で可視化できるサービスです。
今回のインタビューでは同サービスを立ち上げた加藤路瑛さんに、開発の経緯や今後の目標を伺いました。

今回インタビューした方:加藤路瑛さん
株式会社クリスタルロード 代表取締役社長
感覚過敏研究所 所長
2006年生まれ、千葉県出身。
感覚過敏の当事者として感覚過敏の課題解決を目指し、2020年に13歳で感覚過敏研究所を設立。
以来、感覚過敏の啓発活動、対策商品の企画・販売、研究に力を注ぐ。
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目次
五感情報を可視化するマップサービス「Calmspot(カームスポット)」

「Calmspot(カームスポット)」はどのようなサービスですか。
「Calmspot(カームスポット)」は五感情報を記録、共有できるWeb版のセンサリーマップです。
音や光、におい、人混みなどの刺激が多い場所はもちろん、逆に静かで落ち着ける場所の情報、カームダウンスペースなどの休憩場所の情報をユーザーが投稿・共有できる地図サービスになっています。
「Calmspot(カームスポット)」を使うことで、事前に外出先の情報を知ることができ、対策や回避策を立てられるようになります。
ユーザー登録は無料です。PCやスマートフォンのブラウザからアクセスして、誰でも自由に使うことができます。
実際に行った人の口コミから外出先の環境を確認できる

サービスの特徴を教えてください。
当事者視点の口コミ情報から外出先の環境を確認できることです。
誰かの「行けた!」という声が、他の誰かの「行きたい!」「行けるかも!」という気持ちを促し、新たな「行けた!」を生み出す。
こうしたポジティブな連鎖を世の中に広げていくためのマップサービスとして立ち上げました。
口コミの投稿や共有機能のほかにも、マップ上で知りたい情報だけに絞って表示するフィルター機能も実装しています。
フィルター機能を使うことで、さわがしい、まぶしい、においがある場所や、混んでいる場所だけを表示できます。
反対に、静かな場所やまぶしくない場所といった刺激の少ない場所を絞り込むことも可能です。
感覚過敏の症状は個人差が大きいですし、刺激の感じ方も人それぞれ。
口コミ情報はユーザー情報と紐づいていて、ユーザーは「感覚プロフィール」で自分の五感の敏感さを公開する機能もありますから、そうした情報を見て自分と近い感覚を持つユーザーのレビューを追うこともできます。
クラウドファンディングで資金を募り、開発をスタート

「Calmspot(カームスポット)」が開発された経緯を教えてください。
私たち感覚過敏研究所が当事者を対象に行ったアンケートでは、81.9%の人が「感覚過敏を理由に外出をあきらめたことがある」と回答しました。
感覚過敏の人は学校や仕事、買い物といった日常生活だけではなく、娯楽やレジャーをあきらめる人も少なくありません。
音や光などの感覚的な情報を館内マップに表示させる「センサリーマップ」は海外の博物館や美術館、動物園などで提供されていますが、日本の事例は少ないです。
また、Web上で誰でも投稿できる広域型のセンサリーマップは日本でも海外でも見当たらないため、それなら自分で立ち上げようと考えました。
開発費用を募るクラウドファンディングも行い、200万円を超える支援をいただきました。
2023年から構想をはじめ、ベータ版の開発を経て2025年5月にリリースしました。正式リリースというよりも実証実験のためのリリースです。
感覚過敏がない人、介護職など支援者側の人も使ってほしい
どのような方に使ってほしいですか。感覚過敏など社会的マイノリティの方が対象でしょうか。
いいえ。感覚過敏の人以外にも「Calmspot(カームスポット)」を積極的に使っていただきたいです。
感覚過敏がなくても、例えば「たばこのニオイが苦手」といった方もいますし、人混みが苦手な方、静かなカフェを探したい方などにも活用してほしいと考えています。
誰かをサポートする立場の人にもぜひ使っていただきたいです。
例えば、介護職の方が高齢者と移動や外出をする際に、休憩場所の情報を事前に知ることができれば外出計画も立てやすくなるはずです。
「Calmspot(カームスポット)」は刺激の多い場所だけではなく、休憩場所の情報も共有することができますから、お出かけする際にそうした情報を役立ててもらえたらうれしいです。
「Calmspot(カームスポット)」は感覚過敏の人のためだけに作ったサービスではありません。
誰もが、落ち着ける場所を必要とする時があるでしょう。そのような情報インフラになればいいなと思っています。
「感覚過敏ということばが不要な社会」を目指す
感覚過敏研究所としての今後の目標を教えてください。
まずは「Calmspot(カームスポット)」のユーザー数を増やすことが当面の目標です。
機能の拡充や利便性の向上に加えて、ゲーム性を追加するなど使いたくなる仕掛けづくりにも取り組んでいけたらと考えています。
「Calmspot(カームスポット)」を活用した実証実験やセンサリーツアーも予定しています。
リアルの世界でも感覚過敏の人たちの外出を積極的に後押ししていきたいです。
また、駅や商業施設、イベント会場の運営者と協力して感覚に配慮した空間の情報を公式に掲載できる仕組みもこれから整えていきます。
こうした施設の運営者と接点を持ち、対話を重ねることで感覚過敏の人にとっても優しい、より良いまちづくりにつなげていきたいです。
加藤さん個人の目標はどのようなことですか。
私が目指している最終ゴールは「感覚過敏という言葉が不要な社会」。
どのような解決法でそれが実現するか、未来のことはまだ誰にも分かりません。
社会の中で感覚過敏に対する認知や理解が広がることかもしれませんし、テクノロジーやデバイスの力で感覚を自在にコントロールできる技術、あるいは医学的に感覚過敏を解消する薬が開発されるかもしれません。
私個人としては、感覚過敏という言葉や概念が不要なくらい、お互いに認め合える社会にしていきたいなと思っています。
私自身、物心ついたころから感覚過敏に悩んできて、現在も症状自体がなくなったわけではありません。
成長とともに自分で自分の行動を選べるようになり、子どものころと比べると感じるつらさは軽減してきたように思います。
例えば、ノイズキャンセリング機能があるイヤホンで音を防いだり、自社開発した縫い目外側・タグなしの衣服を着たり、自分で環境を整えられるようになったことで、快適な居場所を自分で選択できるようになりました。
通信制の大学で学ぶという進路も自分の特性を考慮して選択しました。
現在、私は早稲田大学人間科学部eスクール2年生として、脳神経学や障害学、心理学、環境デザイン学などを学んでいて、来年はゼミに入り専門性を深めていく予定です。
たくさんのことを学びながら、「感覚過敏という言葉や概念が不要な社会」にするための答えを自分なりに探していきたいと思います。
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