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2018年度診療報酬・介護報酬同時改定 現場の想いは届いたか

公開日:2018.05.28 更新日:2018.06.08

4月に実施された6年に1度の医療・介護同時改定は、いわゆる2025年問題を見据えて地域包括ケアシステムの構築と医療機能の再編がテーマに。その中で、リハビリテーションはどう評価されたのか? 3協会長の同時改定・本音トークをお届けします。

 

参加者(敬称略)

半田一登 中村春基 深浦順一 中保裕子 横河麻弥子
公益社団法人日本理学療法士協会
会長
一般社団法人日本作業療法士協会
会長
一般社団法人日本言語聴覚士協会
会長
医療ライター
(司会)
マイナビ「セラピストプラス」編集

所属:2018年5月現在

「在宅復帰率への加算はリハビリ職の恥」

横河(編集) 本日は3協会の会長にお集まりいただき、ありがとうございます。ぜひ本音のお話をお伺いしたいと期待しております(笑)。

中保(司会) まず、今回の改定に関してどういう評価をなさっているか。率直なご意見をお聞かせください。では、どなたから口火をお願いしましょうか。

中村(OT) やはり厳しい話は半田会長からでしょう。そうすると我々は楽になりますから(笑)。

深浦(ST) そうね。3人のなかでも一番大胆な発言をするのは、半田会長ですから(笑)。

横河(編集) では、武闘派の半田会長で(笑)

半田(PT) だいたいいつも私が汚れ役をやって、2人が善人の役をするパターンですね(一同笑)。では、最初にお話しますが、私は今回の改定の話以前に、リハビリテーションとは何かということを考えてみるべきだと思うのです。リハビリテーションというものの原理原則をしっかりと認識した上で報酬を見ていかないと、目先に流されてしまいます。
 
 私が理学療法士になった50年ほど前は「リハビリテーションサービス」という言葉が盛んに使われていました。総医療費に占めるリハビリテーション料の割合は1%未満でしたので、たしかに「サービス」の域だったのです。それが今、5%を超え、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)は飛躍的に増えました。全体としてリハビリテーション医療は拡大しましたが、我々に指示をし、存分に使う医師がどこまで増えて、どういう体制が整い、その結果リハビリテーションの質がどこまで上がったか。それをしっかりと捉える必要があると思っています。
 
 もうひとつ、リハビリテーションの本質は、「障害を持った人たちを社会にどう帰してあげるか」にあります。その意味で、私は在宅復帰率が高ければ加算されるという状況にまで至ってしまったのは、リハビリテーションの提供者として恥だと思います。加算というのは政策誘導です。障害のある方を家に帰す、社会に帰すというのが我々の本質的な仕事なのに、誘導されないといけないほどできていなかったということになります。それを本質として見極めずに単に加算の点数がどうだったか、というのは非常に浅い議論になってしまいます。

急性期でのリハビリの位置づけが明確に

中保(司会) ありがとうございます。今回、報酬改定に至るまでに各協会でさまざまな要望を出されていたと思いますが、その成果はいかがですか。

半田(PT) 日本理学療法士協会としては、平成26年(2014年)改定で「ADL(日常生活動作)維持向上等体制加算」を要望し、PTの地域包括ケア病棟への常勤勤務ができるようになりました。今回私たちはICUでもそれを要望しました(早期離床・リハビリテーション加算(患者1人1 日につき500 点))。ICUには私も3年ほど勤務経験がありますが、狭い空間で多くの計器や点滴につながれた患者さんは、短い期間であっても、いろいろな面で身体機能が低下していきます。PTはリハビリテーション科だけでなく、他科の医師との関係づくりも必要です。今回ICUが加わったことで急性期の理学療法の位置づけが明確になってきたことは、ひとつの成果だと思っています。

中村(OT) 作業療法士の立場からはまだまだ取り組まなければいけない課題がたくさんあります。たとえば回復期リハビリテーション病棟ではFIM(機能的自立度評価表)で評価をしており、その中に一部IADL(手段的日常動作)も入っています。今回、IADL指標であるFAI※1を必要項目に入れてほしいと要望したのですが、「回復期リハビリテーション病棟でFAIはみられない」という声があって任意項目に入りました。これは病院では在宅生活支援のリハビリが十分にできないということをある程度象徴していると思います。
 
 また、家事や外出といったIADL訓練の評価についても単位制限の見直しと適応拡大を要望しましたが、据え置きでした。寝たきりになっても外出できることを支援し実現するのが僕らの仕事なのですが、制度的には狭い範囲の自立しか想定されていない。QOLを重視した自立支援にもう少し舵をとってほしかった。
 
 一方、退院時共同指導料に退院時リハビリテーション指導料が包括されたことは大きな成果だと思います。リハという視点で次のステージに向けて患者さんを指導できて、退院後に活かされる。こちらはもう満点といえる改定です。
 もうひとつ、精神障害者に対するリハビリテーションについても、早期に病院から地域に戻して、在宅でどう支えるかがとても重要です。精神科作業療法は1単位25名、標準2時間とされていますが、ケースによってはもっと長時間必要なこともありますし、30分~1時間しかやれないこともあるので、やはり個別性に応じた治療形態が取得できるようにしたい。これもまた次回に向けての大きな課題です。

深浦(ST) 言語聴覚士の関係する項目では、「摂食機能療法Ⅱ」ができました。脳血管障害では摂食機能療法を患者さんの状態によっては発症当日~3日目くらいから開始していますが、今までは「30分以上」という適用条件があったのです。最初の頃は患者さん自身がそんなにもたない。だから、少しずつ延ばしながらやっていました。今回の「摂食機能療法Ⅱ」では、発症2週間以内の患者さんには30分に満たない場合でも提供できるようになり、急性期でのSTの関与がより早くから進められるようになるでしょう。今まで私たちがやってきたことが評価され、よかったと思っています。
 

病院が患者を選別することを危惧

深浦(ST) ただ、今の診療報酬の流れは、急性期にサービスを集中して早期に退院してもらい、あとは在宅でやってもらおうという流れです。回復期リハビリテーション病棟の新入院料が今回6段階になりましたが、こうして成果主義が進んでいくと、患者さんが病棟側で選別されるのではないかという危惧をもっています。運動器障害の患者さんであれば比較的回復が見込めますが、重度の脳血管障害の方はそんなに簡単に在宅に戻せません。実際に回復期の現場で働くSTたちは、「今後、言語聴覚療法の対象となるような重度の患者さんたちは入院してくるのだろうか」と心配しています。

半田(PT) 前回の改定で回復期リハビリテーション病棟3段階のうち、1、2は在宅復帰率が良くなっていますが、3については極端に低下しています。現実的に2016年の改定後に何が起こったのかということをよくよく考えなくてはいけない。あまり成果主義を持ち込まれると、点数の差から患者を選別するという問題が発生してくることは否めません。

横河(編集) 在宅復帰しにくい患者さんを、とらなくなる恐れがあるということでしょうか。

中村(OT) 病棟には入れます。しかし、よりリハのサービスが少ない病棟にしか入れなくなることを懸念しています。たとえば重度な障害の場合、3カ月間では改善が難しいですが、6カ月間なら改善するような人でも適切なサービスを受けるチャンスが減る可能性があるということです。もっともそれは、今回に限らず言われていますけれど。

中保(司会) 大きな流れとしては、病院が患者を選ぶ時代が現実問題起こってくると。

半田(PT) 起こってくるでしょうね。ただ、回復期リハビリテーション病棟の空床も問題化しているので、経営的に1つ下のランクになっても空床を埋めるといった考え方もあるかもしれませんが。

中村(OT) 一方、回復期リハビリ病棟の患者さんに対する退院前訪問指導や、退院から3カ月以内の訪問リハビリ、外来リハビリの提供が可能になりました。私たちは、当初退院後1カ月間だろうと考えていましたが、実際は3カ月間も認められることになったのは大きな変化です。病棟で起こってくる問題点に対する手当てなのかもしれません。
 

訪問看護ステーションリハ職の活動範囲を広げたい

中保(司会) 今回は医療・介護の同時改定でしたが、介護報酬についてはいかがですか。

中村(OT) 訪問看護ステーションからの理学療法等の派遣は、在宅で、居宅に限られています。作業療法士協会では今回の介護報酬改定で、訪問看護ステーションからのPT、OT、STの派遣をしっかりと認め、居宅以外でもリハビリができる形にお願いをしていたのですが、ほとんど聞き入れられなかったことが非常に残念です。寝たきりの人でも、ストレッチャーを引っ張っていけば外出も、買い物もできる。PT、OT、STの持っている知識、技術をいろいろな場所で発揮できるように願っていましたので、とても残念でした。現実的に在宅医療の分野を担っているリハ職は、訪看ステーションに所属している人が多いので、彼らをより有効活用するという視点が次の課題です。
(続く)
 

※1 FAI:Frenchay Activities Index。1983年、Holbrookらが発表した指標で、面接調査で3か月間または6か月間の応用動作や社会生活活動の全15項目を評価するもの。日本国内においても評価法としての信頼性・妥当性が確認されている。

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