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vol.10

リハビリ3会長鼎談:いまこそリハビリテーションの本質を問う

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リハビリテーション3協会長本音トークも終盤となり、話はいよいよ佳境へ。今回はリハビリテーションの本質について徹底討論。リハ職の将来展望へとテーマは広がります。リハ職のあるべき姿を考えてこられた3会長の、白熱する想いをうかがいました。

参加者(敬称略)

半田一登 中村春基 深浦順一 中保裕子 横河麻弥子
公益社団法人日本理学療法士協会
会長
一般社団法人日本作業療法士協会
会長
一般社団法人日本言語聴覚士協会
会長
医療ライター
(司会)
マイナビ「セラピストプラス」編集

所属:2018年8月現在

「もともと我々は“障害”を診る職種」

中保(司会) これからのリハビリテーションの展望や課題について、先生方の自由なご意見をうかがいたいと思います。まず、この鼎談の冒頭で半田会長がおっしゃった「リハビリテーションの本質」というお話をもう少しお聞かせいただけますか。

半田(PT) 日本でリハビリテーションが初めて導入されたとき、リハビリテーションは「第3の医療」と言われていました。疾病ではなくて、障害を診る医療だと。それが平成18年度の診療報酬改定で「疾患別リハビリテーション」という概念が登場したのを機に「疾病を診る医療」へと、リハビリテーションに求められるものが大きく変わりました。リハビリテーションの目的から「ご自宅に帰れる」とか、「社会復帰」という概念が消え、「病気を治すこと」に集中するようになりました。しかし、我々はもっと障害のほうにも関心をもたないといけません。もともと我々は、「障害を診る職種」なのですから。そうでないと、いずれ人口減となり高齢者が減れば、我々3職種は路頭に迷います。将来的にどのくらい人口が減り、高齢者がどういう状況になっているのかを見通して、我々が本質的に果たす役割は何かをしっかり捉えるべきだと思います。我々自身が何をする職種なのかという原点がゆらいでいると、国民からも見えなくなってしまうでしょう。

中保(司会) 現在も「疾患治療としてのリハビリテーション」という色が、ちょっと強過ぎると?

半田(PT) リハビリテーションは診療報酬の制度の中で、疾病を診る報酬の中へ組み込まれています。疾病については急性期、慢性期といった枠組みがありますが、障害における急性期、慢性期とは何か、今の報酬体系では捉えることができません。私は、本来は障害のリハビリテーションに対しては疾病とは違ったつくりを考えるべきであり、それがリハビリテーションとしての本質的な役割を果たすことにつながると考えてきました。

深浦(ST) 言語聴覚士にとっても、平成18年度以降非常に困った事態が積み重なりました。嚥下障害の患者さんに対する摂食機能療法について、原因疾患が限定され、脳血管疾患や口腔がんなど顎口腔の疾患でなければ認めらませんでした。しかし、整形外科疾患などにより長期間臥床している高齢の患者さんは嚥下機能が低下しやすく、誤嚥性肺炎を起こすリスクがあるため、我々はサービスで摂食機能療法を提供していたわけです。それが前回(平成28年度)の改定では客観的な検査方法で「嚥下障害」と診断されれば、摂食機能療法を算定できるようになったのは重要な転換点でした。また、これまで言語聴覚療法では、失語症という単独障害の方も多かったのですが、回復期病棟のSTたちに聞くと、いま、失語症だけの患者さんはほとんどいないそうです。75歳以上の方が入院患者の5割近くを占める現在、障害は複雑化し、回復も遅くなります。高齢者の方々はさまざまな身体機能が低下していて、その上で疾患をもつわけですから、3職種がトータルにアプローチすることを前提とした診療報酬になることが今後の課題だと考えています。

中村(OT) 消費税財源を使って手当をつけていただいたら良いと思うのです。高齢社会におけるアプローチは、リハ職だけではなくて、他の医療職にとってもおそらく同じ状況だろうと思います。

半田(PT) 今回の診療報酬改定を見ますと、他職種に比べるとまだリハビリテーションには追い風が吹いているように思いますね。それは、この高齢社会の中にあって患者さん、利用者の自立を考えると、我々に課せられた本質的な役割をこれからもさらに強めなければいけない時代であることが背景となっていると思います。

日常生活動作の訓練の評価は、利用者側からみたリハビリテーションの効果を反映しているか?

半田(PT) 私事ですが、最近、右手を手術してしばらく包帯をしていました。それで初めて気づいたのですが、ズボンのつくりは右手用になっていて、トイレの時にチャックの開け閉めに非常に困るのですね(一同笑)。風呂に入るときには包帯を水に濡らさないよう、左手で右手にビニールを巻いてガムテープで止めるのですが、片手では悪戦苦闘で20~30分かかってしまいます。この経験から、障害のある方の日常生活の問題を一つひとつ解決して、生活が成立するようにしていくことがリハビリテーションの役割であり、我々の仕事の本当の目的だと改めて思いました。

深浦(ST) 日常生活の不便さは、我々も病気や障害を得て初めてわかることですね。ユニバーサルデザインのように、障害の有無にかかわらずうまく使えるデザインはできるものなのかな?

中村(OT) それは既にあります。現在、200種類以上のユニバーサルデザイン商品が出ています。左手用の下着や、女性用にはホックをはめやすいブラジャーなど、さまざまな工夫がされています。ただ、そういった情報をOTは知っていても、一般の方はあまりご存じありません。また、障害のある方への生活の工夫がモノには反映されていても、診療報酬上の評価や制度には全く反映されませんね。患者さんといっしょに作業療法士が下着を見に行かなければいけないのですが。

半田(PT) 患者さんに日常動作を練習してもらうのに、20分1単位では…。現在の制度は、実際の我々の業務とはまったく相容れない仕組みになっています。

中村(OT) そしてこのことは、診療報酬上の評価がすべて医療者側からの評価であり、利用者側からの評価が全く反映されていないことにも通じます。評価の基準は「サービスをどれだけ提供したか」と最後は「在宅復帰率」でしょう。

深浦(ST) そうですね。

横河(編集) 利用者が実体験として改善した結果をどこかに反映するシステムが必要ということですね。

中村(OT) はい。それを評価できる構造が必要だと思います。

医療外の「生活支援」という枠組み

半田(PT) オランダでは、作業療法士さんが街中にお店を持っています。障害のある方のための日用品、道具をそろえた、生活を改善するための店です。住宅改修の要望があればすぐにご自宅を訪問するなど機動力もあります。日本でも将来的にはぜひ作業療法士さんの職能を、医療ではなく生活支援という枠組みで活用できるようにしたいものです。地域包括ケアシステムの中での作業療法士の位置づけとしては、これが非常に大事だと思います。中村会長ともそういう社会を早くつくりたいよね、と話しているのですが。

中村(OT) 作業療法士が、医療施設ではなく、地域の中でサポート用品を売ったり、生活支援をできる場をつくれるようずっと要求してきました。むしろ医療へのゲートとなって、必要な人には受診を促す役割も果たせます。PTの運動指導やSTの失語症のリハビリテーションについても、病院よりももっと身近に相談できる場があればいいと思います。

深浦(ST) 作業療法士が専門的な知識に基づいてサポートをしながら、企業として福祉用具、介護用具の販売や、住宅改修に取り組むという形なら、利用者の皆さんにも大きなメリットが期待できますね。

中村(OT) 現在、8つの都道府県作業療法士会で障害のある方に使いやすい市販品やその改良・工夫、個別製作品などのデータ収集を行っており、今後はこの生活行為工夫情報モデル事業を全都道府県士会に広げる予定です。すべて集めればきっと何千も何万もあるのでしょうが、現在既に800事例程度が集まっており、この情報を公開にしていこうと考えています。そして、国民の皆さんにそれらの使いやすい市販品や個別製作品をすぐに提供し、使用の工夫を伝えられるような拠点があることが望ましいですね。さらに、そこを予防の拠点にも活用できたらいいと思います。

リハ職は「予防」の領域へ

深浦(ST) これからの大きな流れとしては「地域リハビリテーション活動支援事業」等の中で、リハ職も地域住民を援助しながら介護予防事業を進めていきます。しかし、介護予防の対象になる方だけではなく、既に障害のある方たちが、在宅復帰して家に閉じこもってしまい再重度化しないための予防も重要です。そこで、この住民の集いの場に障害のある方たちも入れるように環境を整えられるといいですね。その場に通うためにサポートするスタッフが必要になるかもしれませんが、ご家族はその時間を買い物や自分のために使うことができます。こうした家族のサポートをする体制もあるといいと思います。
 言語聴覚の領域では、失語症の方たち向けの支援策として、今年度から障害者総合支援法に基づく「失語症者向け意思疎通支援者」の養成が始まり、2019年度には全国で開始されます。たとえば失語症の方たちが要請すれば手話通訳者のような方が派遣され、病院や役場に行く際にはサポートをするというものです。意思疎通支援者への理解が深まれば、地域におけるサポーター役になれるのではないかと期待しています。

(続く)


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