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日本介護医療院協会 鈴木龍太会長 セラピストプラススペシャル 日本介護医療院協会 鈴木龍太会長

vol.14

介護医療院とは何か
~展望と今後への期待(前編)
日本介護医療院協会 鈴木龍太会長

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 2018年4月、地域包括ケアシステムを支える新たな介護施設として「介護医療院」が新設されました。現在の医療療養病床、介護療養病床からおよそ10万床を転換することが想定されています。そのコンセプトは「介護の必要な高齢者の住まいと生活を医療が支える」というもので、従来の介護施設、慢性期医療施設に比べてリハビリが重視されるなど、セラピストの活躍の場が期待されそうです。
 介護医療院がこれまでの介護施設とどう異なり、今後どのような方向を目指すのか、介護医療院協会の鈴木龍太会長にお話をうかがいました。

所属:2019年1月現在

医療療養病棟から介護医療院へ

 東京都の中央、新宿駅から小田急線で約1時間。秦野市の南部に位置する鶴巻温泉病院は、ポストアキュート、サブアキュート、リハビリテーション、看取りなど4つの機能を柱に据える慢性期病院です。神奈川県で最初に回復期リハビリテーション病棟を作り、全館591床に対し200名のリハビリ療法士を擁するなど、リハビリテーションに注力している病院としても知られています。
 介護医療院協会の鈴木龍太会長は、鶴巻温泉病院の理事長・院長であり、介護医療院が制度として創設されたわずか4カ月後に会長に就任されました。

「当院は2014年に180床の介護療養病棟を全廃して、医療療養病棟にしました。それもこれまでの間に少しずつ減らして、現在は50人の患者さんが入院されています。そのフロアを52床の介護医療院にしようと考えているのですが、自治体の転換承認がまだ済んでいません。というのは、従来の医療型療養病床の費用は医療保険の負担ですが、介護施設である『介護医療院』は介護保険から拠出されます。介護保険の保険者は市町村ですから、介護医療院の開設・運営費用は市町村の負担になります。当院のように医療療養病床から介護医療院に転換すると市町村の費用負担が増えることになり、また、条例などの整備が必要になります。厚生労働省は以前からそのことについて告知を出していましたが、介護医療院が国会で承認されたのは2017年秋。2018年の予算をこの件を含まず確定していた自治体は準備に時間がかかるため、転換は2019年以降という都道府県も多いのが現状です。」
 
 2018年12月末現在、全国で113施設、7414床の介護医療院が稼働しています。マスコミなどで「目標10万床をうたわれているわりには広がっていないのではないか」との声も聞かれますが、鈴木会長は2019年以降の進捗に期待しています。

「介護医療院の開設には院内の改修が必要で、現在はまだ改修の準備や様子見の施設もあるものの、おそらく都道府県や市町村の対応待ちのケースが多いと思います。ですから、対応が整う2019年度からは進むでしょう。転換の対象となる介護療養病床・医療療養病床は約27万床あります。それがまず2019年度中に5万床、その先に10万床と予想しています。当院も2019年春には開設できる見通しです。」

介護医療院とは?

――その「介護医療院」とは一体どんな施設なのでしょうか。

「介護医療院は慢性期医療の一つである介護療養病床と医療療養病床から転換可能な、住まいと生活を医療が支える新たな介護施設です。介護保険で支払われる介護施設ですが、病院内にあるので医師が常勤し、夜間も病院の当直医による診察が受けられます。介護施設としての生活機能があり、医療法上の医療提供施設として長期療養ができ、看取りも含めた終の棲家にもなりうる。医療・介護・生活の場を兼ね備えた介護施設なのです。」

鶴巻温泉病院の中庭には、自由に使えるかけ流し温泉の手湯と足湯がある。

――創設の経緯は。

「2006年、小泉政権時代に慢性期医療の見直しが行われました。その時に医療療養病床と介護療養病床の入院患者さんの健康状態にはそれほど差がなく、介護療養病床は介護保険の領域であるはずなのに老人保健施設(医療)よりも費用がかかることがわかりました。そこでまず2006年に介護療養病床が廃止され、療養病床は医療療養病床のみになったのです。しかし、6年の猶予期間を過ぎても介護療養病床からの転換は進まず、さらに3年の延長となりました。それでも2015年時点でまだ5万人の高齢者が介護療養病床に残っていました。それでは単純に廃止はできません。
 そこで、厚生労働省の社会保障審議会の中に『療養病床の在り方等に関する特別部会』が作られ、介護療養病床にどういうお年寄りがおられるのかを調べたところ、平均年齢は80歳を超え、平均在院日数が約1年半と長く、死亡退院が約4割と多い。特養や老人保健施設よりも医療の必要度が高い方々であることがわかりました。もし介護療養病床をこのまま廃止したら、この人たちはどこへ行くのか。既存の施設では適した施設がないので、医療の必要な要介護高齢者のための新しい長期療養・生活施設を作ろうと提案されたのです。病院の療養病床と違って、長期療養にふさわしい、プライバシーが尊重され、家族や地域住民との交流も可能で、『住まい』という機能を強化した環境を整備する。しかも、経管栄養や喀痰吸引などの医療行為も可能な新しい施設です。中でも最も議論されたのは『住まい機能』です。これが今までの施設と大きく違う点であり、この機能が付加されたことは私自身、非常によかったと思っています。」

「住まい」としてプライバシーを重視

 鈴木会長が強調された「住まい機能」。介護医療院の最大の特徴はこの「住まい機能」、つまり「在宅施設」である点にあります。ある病院に入院中のお年寄りが、別のフロアにある介護医療院に移ると「在宅復帰」扱いになるのです。従って、介護医療院をもつ病院は同じ建物内でも病棟=「病室」、介護医療院=「住まい」として、異なる環境を整えることが求められます。実際にはどのような空間になるのでしょうか。

病院内の休憩場所のひとつ。採光がよい。

「介護医療院では生活の場としてプライバシーの確保に重点が置かれています。1人当たりの床面積は8平方メートル(※)と従来の療養病床より広く、さらにパーティションを置いて、個人のスペースをきちんと分けることが求められています。当院のパーティションは従来、足元部分が空いているものを使っていたのですが、介護医療院に転換するにあたって神奈川県の指導により、すき間のないタイプに変えることになりました。こうした最低限の環境要件は都道府県によって異なりますが、あとは施設の裁量で工夫してよいのです。」

※転換促進の特例で床面積の基準は緩和されており、当面は6.4平方メートルのままでも転換できるが、介護報酬面で減収される。また、いずれ改修や建て替えの際には8平方メートルを確保しなければならない。

地域のニーズに応じて進化しうる柔軟性

 介護医療院は今後、どのように活用されるのでしょうか。改めて、介護医療院に対する鈴木会長の思いや、期待を聞かせていただきました。

「大事なのは介護医療院の概念に『住まい』としての機能が明記されたことです。新たな体裁と基準が付加されると、世の中はそれだけで変わってきます。介護医療院は在宅施設ですから、急性期病院からも回復期リハビリテ-ション病床からも地域包括ケア病床からも容易に転入できます。そして、従来の療養病床や地域包括ケア病床よりも充実したリハビリを提供できます。回復期リハの入院期限を超えてももう少しリハビリを続けたい人がいれば、介護医療院に転入してもらってリハビリを続けてもらいご自宅に返すという活用の仕方も想定しています。」

晴れた日に外で足湯を使う患者さんとご家族

 
「実際には、現在の入居者の多くは介護度が重く、介護医療院を“終の棲家”として利用するであろう方が多いのは事実です。でも終の棲家であるだけでは本来の介護医療院の機能を活かせません。介護医療院の理念には、入所者の“自立と(地域社会への)参加、地域との交流”がうたわれています。今後は自立可能な中等度要介護者、たとえば要介護度3程度の方に入っていただき、ご自宅に帰ることを目指す介護医療院もできてくるかもしれません。そんなふうに(従来の介護療養病床とは)全く変わってくると思うし、私はそれを期待しています。
 しかし、そのあり方は私自身が決めることではありません。どのような空間にするかも、今後それぞれの施設が考えて進めていけばいい。最初から決められたものというのはニーズに即しているとは言えません。携帯電話だって、登場した当初は電話だったけれど、今どういうふうに使われていますか。コンビニエンスストアだって、最初は売店だったけれど、今は宅配便を出したり、振り込みをしたり、あるいはコーヒーを飲んでひと休みしたりと、地域になくてはならない場所になりました。変化していくことが実際の需要に合っているということであり、本当に望まれるサービスなのです。
 介護医療院は入所者の思いや、施設関係者皆さんの取り組みで、進化・深化していきます。『変化を進化に、進化を笑顔に』が私のモットー。介護医療院もこれから進化して、それぞれの地域の皆さんにとって『あってよかった』と思える施設になることを願っています。」

 3月末掲載の後編では、介護医療院で提供されるリハビリテーションと、介護医療院のセラピストへの期待についてうかがいます。

鈴木龍太(すずき りゅうた)介護医療院協会会長

鈴木龍太(すずき りゅうた)
介護医療院協会会長

1977年
東京医科歯科大学医学部卒業
1980年
米国 National Institutes of Health (NIH) NINCDS Visiting fellow
1995年
昭和大学藤が丘病院脳神経外科 助教授(准教授)
2009年
医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 院長(現職)
2015年
医療法人社団 三喜会 理事長兼務(現職)
2018年
日本慢性期医療協会 常任理事(現職)
2018年
日本介護医療院協会 会長(現職)
日本リハビリテーション学会専門医・指導医
日本脳神経外科学会専門医

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