知っておきたい「挨拶」の基本【第2回】
公開日:2017.04.07 更新日:2023.05.18
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
挨拶は「心を開き、相手に近づく」ためのもの
今回は、「挨拶」についてお伝えしたいと思います。挨拶の「挨」という字には「開く」という意味があり、「拶」の字は「近づく・進む」という意味があります。つまり、挨拶をするということは「心を開いて相手に近づく」ということであり、そういう意味では、自分から進んで行うのが本来の「挨拶」なのです。ですから、「挨拶が少し苦手」という人は、自分の中のルールとして「どんなときでも、必ず自分から挨拶する」と決めて、誰に対しても自分からまずは声をかけることを習慣化するといいでしょう。
皆さんは、患者さんを病院スタッフとしてお迎えする立場です。積極的に自分から挨拶することが「お待ちしていました」というおもてなしの姿勢を示すことにもなります。患者さんのなかには、辛いリハビリを続けている方もいらっしゃるでしょう。なかなか成果が出なくて悔しい思いをしている方も多いと思います。そんな方たちに心を込めた挨拶をすることは、「一緒にがんばりましょうね」という寄り添う気持ちを伝えることにもつながります。
基本を押さえていれば状況に応じて変化をつけられる
少し堅苦しく感じたかもしれませんが、「何のための挨拶か」という基本を理解していれば、色々な場面で応用が利くと思います。
例えばリハビリ室の端と端で患者さんとの間に距離があり、挨拶しづらいという状況にあるとき。挨拶といえば「大きな声ではっきりと」が基本ですが、挨拶をしたい患者さんとの間にはたくさんの人がいて、辛いリハビリを行っている最中の人もいる。こうした状況では大きな声の元気な挨拶が必ずしもベストだとは限りません。ではどうするか。挨拶の目的は「心を開いて相手に近づく」「お待ちしていました」という気持ちを示すことにあるのですから、しっかりと顔を見て、目が合ったらかるく会釈をするのです。会釈をすることで声を出さずとも「あなたのことを認識していますよ」という気持ちを伝えられます。
別のケースとして、「自分が担当する患者さんが待合スペースで本を読んでいるすぐそばを通る」という状況はどうでしょう。「集中して本を読んでいるから、邪魔をしては悪い」と思うかもしれませんが、患者さんもこちらのことに気がついていたら、「無視されてしまった」と思われるかもしれません。こちらに意識が向いていない人に声をかけるのは少し勇気がいりますが、この場合は立ち止まって腰をかがめるなどして目線を合わせ、「こんにちは!」と笑顔で声をかけるのがベストだと思います。
「邪魔をしては悪い」、「こちらに気がついていないようだから」というのは、多くの場合、声をかける勇気がない自分への言い訳にすぎません。どれほど面白い本を読んでいたとしても、わざわざ挨拶をしてくれたことに対して「集中していたのに!」と怒る人はそうはいないと思います。
これらはほんの一例であり、実際にはもっといろいろなケースがあって一概には当てはまらないと思います。「挨拶の目的は心を開いて相手に近づくため」ということを念頭に置き、そのときどきで状況に応じた挨拶ができるようになってほしいと思います。
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村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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