メールマナー⑮返信メールのルールとマナーについて~後編~【第95回】
公開日:2024.10.30
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
前回に続いて、返信メールのルールとマナーについて説明していきます。
4)CCで届いたメールへの返信ルール
CCとはCarbon Copyの略です。CCで届くメールは、情報共有が目的で送られているため、本来はTO(宛先)で受信した人が返信するのがルールです。CCで送られた人は、メールの内容を把握すれば十分ですから、基本的に返信は不要です。
しかし、CCの人宛の質問やメッセージがある場合や、メール内容を見て返信する必要があれば、それに対して返信しても構いません。
たとえば、TOの受信者が不在の場合、CCで受けた人が「今日は、○○が休みを取っておりますので、代わりに私が対応いたします」のように書いて返信することもあります。この場合、返信メールのほかのCCは残したまま送信しましょう。
CCで届いたメールに返信する際、「送信者のみに返信」するのか「全員に返信」するのか迷うことがあるかもしれません。
この場合、メールの情報が本当に全員で共有すべきものかどうかを考えることが大切です。何も考えずに「全員に返信」すると、不要なメールを全員に連絡して、迷惑をかけてしまうことも考えられます。
個人的に確認したい内容であれば「送信者のみに返信」、全員で共有すべき情報の場合は「全員に返信」、の正しい使い分けを身につけましょう。
5) 「部分引用」と「全文引用」を使い分ける
ビジネスメールの返信では、相手メールの引用がよく使われます。引用を使った返信方法をインラインと言うこともあり、引用した文章の頭に「>」を入れます。引用の際は、相手のメールに誤字や脱字を見つけても、文章の改ざんを疑われないために元の文章は一切書き換えないようにします。
引用方法には、「部分引用」と「全文引用」があります。それぞれのメリットとデメリットを理解して、適切に使い分けましょう。
①部分引用
引用箇所を絞り込み、必要な内容だけを引用する部分引用は、文面がすっきりすることに加えて、効率的なメールの書き方でもあります。
たとえば、質問内容を引用して、すぐ下に回答を書く、というような一問一答の形で返信できるため、誤解が生じにくくなります。
メールのやりとりにおいて、行き違いを防止する効果もあります。部分引用のメリットは、相手のメールの必要な部分を抜粋するため、相手に伝わりやすいことです。
デメリットとしては、抜粋の使い方によって誤解が生じたり、相手の文章にコメントを付けることで不快にさせてしまったりする恐れがあることなどが考えられます。
ビジネスメールでよく使われる引用ですが、中には不快に感じる人もいるため、部分引用を使用する場合は、返信メールの冒頭に「引用(インライン)にて失礼します」と断りの1文を入れるといいでしょう。
②全文引用
全文引用は、元のメール本文の全体を引用して返信する形式です。全文引用のメリットは、やりとりに関するメールを一通のメールで把握できることです。
一方で、やり取りの回数が増えるとメール本文が長くなってしまうため、これは全文引用のデメリットともいえるでしょう。
引用部分を見れば、途中から参加した送受信者がすぐに流れを把握することができますし、確認事項が生じた時も一通のメールを見れば効率よく検索できますから、全文引用は大人数が情報を共有する場合に役立つ方法といえるでしょう。
以上を理解した上で、全文引用と部分引用を相手や状況によって使い分けましょう。たとえば、全文引用しながら、質問についてのみ部分引用で補足するという方法も可能です。
ビジネスメールでは、1回でやりとりが終わる場合もあれば、何回もやり取りが続く場合もあります。全文引用を続けるとメールが長くなりますが、引用部分を消すかどうかは相手や状況次第です。
メールでのコミュニケーションがスムーズになるよう、引用方法を含めて相手が読みやすいメールになるよう配慮することが大切です。
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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