臨床検査技師になるには?3つの条件から国家試験について徹底解説!
臨床検査技師は、国家資格を有する医療専門職の1つです。医師は血液検査や超音波検査などのデータをもとに患者さまの治療方針を決定しますが、その際、医師の指示に従って血液や尿、脳波などを検査するのが臨床検査技師です。
近年は複数の医療専門職が連携し合い、患者さまに的確な治療・ケアを提供する「チーム医療」が注目されており、検査のスペシャリストである臨床検査技師も医療チームになくてはならない存在となっています。そのため、医療の現場では臨床検査技師に対するニーズが高まっており、資格を取得しようとする方も増加傾向にあります。
今回は、臨床検査技師になるために必要な条件、国家試験の難易度や合格率、求められる能力などについてご紹介します。臨床検査技師を目指している方はもちろん、臨床検査技師として転職を考えている方も、ぜひ参考にしてください。
目次
臨床検査技師になるための「3つの条件」とは?
臨床検査技師になるためには、主に3つの条件があります。高校卒業後、①〜③のどれか1つを満たしていれば、臨床検査技師の国家試験を受けることができます。
①文部科学大臣が指定した学校(短期大学)を卒業する |
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3年制短期大学の臨床検査学科などで所定の臨床検査技師養成過程を修了すると、臨床検査技師国家試験の受験資格が得られます。 |
②厚生労働大臣が指定した臨床検査技師養成所(専門学校)を卒業する |
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厚生労働大臣や都道府県知事が指定した3・4年制の専門学校で専門過程を修了すると、臨床検査技師国家試験の受験資格が得られます。 |
③大学で指定された課程を終了する |
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医学・歯学系の正規過程修了、または保健学系・獣医学系・薬学系の学部で所定の過程を修了すると、臨床検査技師国家試験の受験資格が得られます。 |
臨床検査技師養成所や大学に入学するための主な受講科目(選択科目を含む)として、数学、生物、化学、物理が挙げられます。必要な科目については、高校時代に履修しておくようにしましょう。
【大学と専門学校】それぞれのメリット・デメリット
臨床検査技師を目指すにあたっては、どの学校を選ぶべきか迷う方も多いでしょう。ここでは、大学と専門学校それぞれのメリット・デメリットを比較しておきます。ぜひ参考にしてください。
<大学>
メリット | デメリット |
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・附属病院やクリニックを持っているケースが多いため、充実した実習を行える ・研究機関を備えた大学の場合、先端の医療機器に触れることができる ・医療機関の他、大学の研究室や企業の研究所などでも働くことができ、将来のキャリアが広がる ・学士号を取得できる |
・卒業までに4年かかるため、医療現場に出るのが短大、専門学校よりも遅くなる ・大学によっては合格率が低いところもある |
<専門学校>
メリット | デメリット |
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・3年で卒業して国家試験に合格すれば、大学進学者よりも早くから現場に出ることができる ・大学よりも入学しやすいことが多い |
・短期間で基礎から実習までのカリキュラムをこなす必要があるため、やや過密な学習スケジュールになる ・一度入学すると進路変更が難しく、変更したい場合は再度他の学校に入学しなければならない |
大学・専門学校には、それぞれメリット・デメリットがあることを理解した上で、自身の考え方やキャリアプランに適した学校を選ぶことが重要です。
具体的な仕事内容から向いている人まで徹底解説!
臨床検査技師の最大の難関!「臨床検査技師国家試験」について
決められた学校を卒業するだけでは、臨床検査技師という職業に就くことはできません。臨床検査技師になるには、大学・専門学校規定の過程を修了した後に、臨床検査技師国家試験に合格する必要があります。
臨床検査技師の国家試験は、毎年2月に行われます。試験は日本各地(北海道・宮城・東京・愛知・大阪・広島・香川・福岡・沖縄)で行われるため、どの地域に住んでいる方も比較的受験しやすいと言えるでしょう。
筆記試験は、下記の専門科目から1問1点で全200問出題されます。
・公衆衛生学(関係法規を含む)
・臨床検査医学総論(臨床医学総論および医学概論を含む)
・臨床検査総論(検査管理総論および医動物学を含む)
・病理組織細胞学
・臨床生理学
・臨床化学(放射性同位元素検査技術学を含む)
・臨床血液学
・臨床微生物学および臨床免疫学
(出典:厚生労働省「臨床検査技師国家試験の施行」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/rinshoukensagishi/)
臨床検査技師国家試験の難易度と合格率
先に紹介したように、臨床検査技師の国家試験は、年に1回、2月に日本各地の指定された場所で行われます。なお、合格基準は200点中120点以上となっています。
国家試験と聞くと「難易度が高い」と感じる方が多いかもしれませんが、授業や実習などに真摯に取り組み、知識と技術をきちんと習得していれば、合格の道は開けるでしょう。以下は、厚生労働省より公開されている臨床検査技師国家試験の受験者・合格者・合格率のデータです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | ||
---|---|---|---|---|
2017年 | 全体 | 4,739人 | 3,729人 | 78.7% |
(うち新卒者) | 3,870人 | 3,481人 | 89.9% | |
2018年 | 全体 | 4,829人 | 3,828人 | 79.3% |
(うち新卒者) | 3,948人 | 3,572人 | 90.5% | |
2019年 | 全体 | 4,816人 | 3,828人 | 75.2% |
(うち新卒者) | 4,002人 | 3,462人 | 86.5% | |
2020年 | 全体 | 4,854人 | 3,472人 | 71.5% |
(うち新卒者) | 3,940人 | 3,273人 | 83.1% | |
2021年 | 全体 | 5,115人 | 4,101人 | 80.2% |
(うち新卒者) | 3,947人 | 3,614人 | 91.6% | |
2022年 | 全体 | 5,331人 | 3,729人 | 75.4% |
(うち新卒者) | 4,408人 | 3,537人 | 86.4% |
(出典:厚生労働省「第63回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2017/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第64回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2018/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第65回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2019/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第66回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2020/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第67回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2021/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第68回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken07/about.html)
合格率は例年70~80%前後で推移しており、新卒の場合は85~90%ほどの合格率となっています。
これらのデータから分かるように、臨床検査技師の国家試験に合格するのはけっして困難ではありません。卒業見込みの時点で国家試験に合格できるように、在学中は必要な知識・技術の習得に励みましょう。
勉強だけではない?臨床検査技師に求められる能力とは
臨床検査技師の業務を行うにあたっては、専門分野の知識・技術が身に付いていることが大前提ですが、それだけで十分とは言えません。
近年はチーム医療の一員として患者さまの治療・ケアに携わることも増えているため、臨床検査技師には他職種と連携できる協調性やコミュニケーション能力、データの正確な分析力、向上心・探究心などさまざまな能力が求められるようになっています。
ここからは、臨床検査技師に求められる能力の詳細をご紹介します。
協調性・コミュニケーション能力
臨床検査技師はチーム医療において、医師や看護師をはじめとする医療専門職と連携し、患者さま治療・ケアを支える重要な役割を担います。
臨床検査技師の主な業務は、患者さまから採取した血液、尿などの検体を調べる「検体検査」や、心電図や超音波などを使って患者さまの体を直接調べる「生体検査」を行い、医師やその他の専門職に科学的なデータを提供することです。
そのため、高い専門性を持つことはもちろん、患者さまを取り巻く他職種とスムーズに協力し合える「協調性」や「コミュニケーション能力」も、臨床検査技師にとって不可欠な能力と言えるでしょう。
臨床検査技師はCRC(治験コーディネーター)としても活躍するケースもあり、その場合は製薬会社の臨床開発モニター(CRA)や治験を担当する医師、関係部署、被験者となる患者さまと連携しながら仕事を進めることになります。そうした際にも、協調性やコミュニケーション能力は非常に重要となるでしょう。
分析力
患者さまの治療・ケアにおいて、医師は臨床検査技師が提示したデータをもとに診断を行い、治療方針を決定していきます。したがって、臨床検査技師には「検体検査」や「生体検査」を行うための知識・スキルだけでなく、検査によって得られたデータを正確に分析する能力が求められます。
また、専門性の高い医療機器や顕微鏡を使った検査、標本の制作など細かい作業を行う機会が多いのも臨床検査技師の特徴です。そうしたことから、臨床検査技師には細心の注意を払いつつ、根気強く正確に作業を遂行できる能力も必要とされます。
向上心・探求心
新しい医療機器や検査方法が次々に開発されるなど、臨床検査の分野は日々進歩しています。そうしたなかで検査の結果を正しく判断するには、医学や生命科学に関する幅広い知見を持ち、常に新たな知識や技術を得ようとする向上心・探求心が必要です。加えて、進化する医療機器を柔軟に使いこなせる適応力も、臨床検査技師の大事な能力と言えます。
ただし、ここに紹介した協調性やコミュニケーション能力、分析力、向上心・探求心がすべてそなわっていなければ、臨床検査技師になれないということではありません。
臨床検査技師を目指して勉強したり、医療機関に勤務して経験を積んだりするなかで、さまざまな能力を身に付け、磨いていくことは十分に可能です。少しでも「臨床検査技師になりたい」という意志があるのなら、ぜひチャレンジしてみましょう。
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まとめ
臨床検査技師は国家資格が必要な専門職であるため、臨床検査技師を目指すにあたっては、大学や専門学校で規定の過程を修了した後に、国家試験を受ける必要があります。
医療の高度化や複雑化が進む現代では、医師や看護師をはじめ、複数の医療職が連携して治療やケアを行う「チーム医療」が注目されており、検査のプロである臨床検査技師も医療チームに不可欠な存在です。
そのため、臨床検査技師には専門知識・スキルだけでなく、他職種との連携を取るコミュニケーション能力や医療全般についての幅広い知見、日々の勉強を怠らない向上心など、さまざまな能力が求められます。どのような臨床検査技師になりたいかを考え、夢を膨らませながら、着実に臨床検査技師としての経験を重ねていきましょう。
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※当記事は2022年5月現在の情報をもとに作成しています
監修者プロフィール
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