現場セラピストが語る 施設で働く魅力 PT/OT編

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医療法人社団 廣風会 
介護老人保健施設 ラ・クラルテリハビリテーション部長 門田義弘さん

言語聴覚士。福祉系大学卒業後、別の老人保健施設を経て、2003年ラ・クラルテの立ち上げに参加。2006年にリハビリテーション部長就任。スタッフを指導しつつ利用者のリハビリに関わるほか、2005年より訪問看護ステーションで非常勤として週に1回訪問リハビリも行っている。日本嚥下摂食リハビリテーション学会認定士。介護支援専門員。

障害を抱え地域で生活する方の支援を

就職先に老人保健施設(以下老健)を選んだのは患者さんの生活に関わりたいと思ったからです。実習で急性期病院も経験して、患者さんは必ずしもご自宅で生活するのに十分な状態で退院するわけではないと知りました。むしろその先、障害を抱えながら地域で暮らす患者さんを支えることを自分のフィールドにと思ったためです。

老健の利用者様で言語聴覚士(ST)が最も多く接するのは摂食嚥下障害の方です。自宅介護を受けるうちに機能が徐々に低下した方、病院で胃瘻を造設したけれど、やはり口から食事をしたいという方など背景はさまざまです。嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎を引き起こしやすいなどのリスクを伴いますので、まず近隣の医療機関で検査を行い、口から食事をとれるとわかればリハビリを開始します。

なかにはむせ込みが激しく、経口摂取はもう難しいかなと思われる方もいます。ただそこで経管栄養しかないと決めつけるのではなく、利用者様やご家族とじっくり相談できる点が病院とは異なるかもしれません。ご家族から「本人は食事をとても楽しみにしているから」と懇願され、細心の注意を払って経口摂取を続けた方もいます。その方はそれから2年ほども食を楽しむことができました。先月、お亡くなりになったのですが、ご家族から「無理を言って申し訳なかったが、食べる楽しみが失われず本人のために良かった」と感謝されたときは、私も込み上げてくるものがありました。

効果的なリハビリを学び共有する

嚥下障害のほか、脳疾患などによる失語症の方も多いですね。失語症のリハビリについては、最初はかなり苦労しました。というのは、学校で教わった絵カードなどを用いた手法だけでは、維持期・生活期の方には十分な効果が得られないことも多かったからです。何とかできないかと勉強をするうちに「全体構造法」という画期的な手法に巡り合いました。自分の声や抑揚を体感したり、身体を使いながら発声を訓練するもので、目ざましい効果が実感できることは、私にとっても感動的なことでした。

そこで最も印象に残っているのは訪問リハで介入したまだ50代の利用者様です。働きざかりの会社員だったのですが若い頃に脳疾患を患ったため重度の失語症になり、そのまま家に引きこもられていました。最初は理解も表出もままならず、ご家族とのコミュニケーションにも大変な労力が必要でしたが、全体構造法の効果が表れるにつれ、どんどん明るくなっていきました。今ではとてもおしゃべりになって(笑)、ご本人の意識もずいぶん変わりました。あれほど外に出たがらなかったのに、「母親の誕生日プレゼントを買いに行きたい。でも杖をついて外出するのは格好悪いから」と、歩行訓練のリハビリにも意欲的です。現在では、若いスタッフにも全体構造法の伝達講習を行って共有しています。

リハビリ職の役割はますます広がる

近年は、認知症の方へのリハビリ依頼も増えています。全国老人保健施設協会では「認知症短期集中リハビリテーション」と呼ばれる効果的なリハビリプログラムを開発し、私どもの施設でも導入、実施しています。認知症は徘徊や介護拒否など、日常生活を送るうえでの周辺症状が問題となることが多いので、一緒に生活しているご家族や施設内では身近な存在となる介護職との連携が不可欠です。その方が普段はどのように過ごされているか、ご家族や介護職から情報を伝えてもらえるよう、普段から密なコミュニケーションを心がけています

老健のリハビリは日常生活のあらゆる場面で行われますから、セラピストがプランを立てて、介護職や看護師といった多職種協働で介入するケースがますます増えていくでしょう。なかでもST は嚥下障害やコミュニケーション障害の評価がしっかりできるので、今後も頼りにされていくと思います。介護保険法の改正により、私の入職時に比べて老健のリハビリ職の役割もずいぶん変わりました。住み慣れた地域での生活を見すえ、ご本人のやりたい活動を支えていくのが老健リハビリの特色。そういう面では入所はもとより、通所リハビリや訪問リハビリのニーズが今後ますます高まっていくので、私たちも積極的に取り組んでいきたいですね。

医療法人社団 廣風会 介護老人保健施設 ラ・クラルテ

在宅医療や介護、地域リハビリの拠点を展開する医療法人社団 廣風会の介護老人保健施設として2003年に開設。運動マシンを用いたパワーリハビリ、認知症リハビリプログラムの導入などリハビリテーションに力を入れるとともに、介護職をはじめ多職種と協働してさまざまなアプローチを実践している。年間行事も多く、地域に親しまれている。

[所在地] 神奈川県横浜市菅田町656番1

[施設長(理事長)] 広瀬隆史

[所属スタッフ] リハビリテーション部17名、PT7名、OT2名、ST2名、歯科衛生士1名、介護予防運動指導員1名、福祉レクワーカー1名、助手3名

社会福祉法人 章佑会 特別養護老人ホーム やすらぎグランデ
主任 機能訓練指導員森平 哲司さん

作業療法士。専門学校卒業後、個人病院リハビリテーション科勤務。病院勤務を続けながら、現在の勤務先で非常勤の機能訓練指導員を務める。2002 年、病院を退職し常勤職員として勤務。施設におけるリハビリの必要性を運営側に周知し、機能訓練のノウハウを構築。現在、責任者として、全利用者様の機能訓練の指揮を執る。

快適な生活のための機能訓練を提供

私は個人病院のリハビリテーション科で仕事を始めた2年後から、現在勤める社会福祉法人で非常勤職員として週1回の勤務をスタートしました。「福祉の現場ってどんな感じだろう?」という純粋な興味からで、病院側も「経験が積めるなら」と快く送り出してくれました。

 福祉の現場ではリハビリそのものが浸透しておらず、施設運営側に機能訓練の基本から行うことの理解を求めました。施設は利用者様の生活の場ですから、快適な生活のためにどんな機能訓練が必要かを考えます。利用者様からは「歩きたい」「自分でトイレに行きたい」といった希望が多く、作業活動、余暇活動を楽しむよりは実質的な機能回復に時間を割きました。

 のちに施設の常勤を選択したのは、週1回の勤務ではリハビリがままならないことに加え、私しかセラピストがいないこの特養で、リハビリを根づかせようと決めたからです。病院とは異なり、自由に方針を立てて実践できることも魅力でした。「やすらぎの里」と「やすらぎミラージュ」を含めた3 施設、多いときは160名を一人で見ながら、介護スタッフの協力を得てリハビリを実践。寝たきりだった方が徐々にトイレに行けるように、要介護度5の方が2に変更になるなど、実績を積むことができました。

施設の魅力は最期まで関われること

現在、私を含めてセラピストは6名に増え、「やすらぎグランデ」を含めた入所と通所のリハビリをそれぞれが担当し、利用者様ごとに評価、カンファレンスを行って情報共有をしています。週1回は必ずマンツーマンで入り、集団リハでは見えにくい細かい部分を明確にしてリハするよう徹底。私は各セラピストからの相談、リハビリのフォロー、労働環境の改善など調整役として動いています。

施設での勤務を希望する場合、病院経験は必ずしも必要はないと思います。ゴールが治療か生活かという違いがあるので、むしろ初めから施設の機能訓練に従事した方がスムースにリハビリが行えるでしょう。わからないことがあれば勉強すればいいし、研修会への参加も可能です

施設の場合、一人の方に長期間にわたって関われるのが最大の魅力です。特養では、最期まで関わっていくことの満足感に似た想いがあります。施設では多くのセラピストを必要としています。興味のある方にはぜひ施設での勤務を考えてみてほしいですね。

社会福祉法人 章佑会

法人内に特別養護老人ホーム「やすらぎの里」「やすらぎミラージュ」「やすらぎグランデ」、また7つの障害者支援施設などを展開。「やすらぎの里」から始まった森平さんによる機能訓練は、徐々に功を奏し、利用者の身体機能の回復に大きく貢献。現在では、特養の利用者全員がセラピストのケアを受け、生活の質も向上している。

[所在地] 東京都練馬区大泉学園町7-12-30

[理事長] 馬場康雄

[所属セラピスト] PT2名 OT4名

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