公益社団法人全国老人保健施設協会 会長 東さんスペシャルインタビュー 施設リハビリの魅力

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在宅支援に広く関わり、「生活」を支えるやりがい。
老健が取り組むのは“最前線”のリハビリです。

公益社団法人
全国老人保健施設協会会長 東憲太郎さん

1980年、三重大学医学部卒業。三重大学附属病院胸部外科を経て89年、有床診療所を開設し91年医療法人緑の風を設立。97年に介護老人保健施設「いこいの森」を開設、施設長を務める。2014年6月に全国老人保健施設協会会長に就任。同協会が開発した認知症リハビリサービス提供の推進をはじめ積極的に活動している。趣味はゴルフ。

チームリハビリをはじめ
成長できる環境があります

全国におよそ4千施設ある介護老人保健施設のうち、約9割もが加盟する全国老人保健施設協会(略称:全老健)。その会長として「在宅支援」を掲げ、施設の振興と、生活に密着したリハビリの強化を進めるのが会長の東さんです。知っているようで知らない“老健”とはどんな施設?セラピストはそこでどんな風に働いているの?老健を取り巻く環境からセラピストに期待すること、いま注目のリハビリまで、幅広く熱く語っていただきました。

セラピストが働きやすい環境整備が進む

――東会長は医師でいらっしゃいますが、
介護老人保健施設(以下老健)を運営するようになった経緯を教えてください。

1989年に仲間の医師と2人で24時間365日対応の有床診療所を開きました。要介護の方の往診から看取りまで行う、いまで言う在宅療養支援診療所です。救急も含めて入院する患者さんも多く、ベッド数19床と小さいながらもフル稼働でしたが、そこで最も困ったのがリハビリができないことです。治療を受けるとどうしてもADLがダウンしたり、認知症が進行したりして、そのまま家にお帰しするのが難しいケースが多々ありました。患者さんのご家族も「こんな状態で戻されても……」と困惑しきり。そんなとき、在宅介護を支える施設として老健の存在を知り、「こんな便利なものがあるのか」と膝を打ちました(笑)。さっそく準備に取りかかり、1997年に診療所(現医療法人)の隣に老健を立ち上げたのです。

――1997年といえば介護保険制度がまだ施行されておらず(※1)、老健はそれほど認知されていなかったと思いますが。

ええ、最初はリハビリを行うセラピストを集めるのにたいへん苦労しました。学校(セラピスト養成施設)に案内に行っても「新卒で老健に就職する人などいませんよ」と言われた時代です。当時は在宅支援をせず特養の代替として機能する老健が大多数でした。私たちはこうした施設を「従来型」と呼んでいます。

――なぜ老健で「従来型」のような運営がされたのでしょうか。

老健が次々と作られた頃には、いわゆる終生施設で公的なものは特養しかなく、“特養待ち”や特養の代わりに入る方が多かったのです。また、国は確かに老健にリハビリ機能を求めていましたが、当初は制度設計が不十分でした。特に1回20分のリハビリ単価(介護報酬) がとても安く、セラピストを増やしたくてもままならない状況にありました。一つの老健に配置が義務づけられているリハビリ専門職は定員100人につき1人です。これでは利用者一人ひとりに行き届いた対応はできません。こうしたことから「従来型」もやむなしとなっていました。

  私たちは老健団体の代表として詳細な資料を作り、ことあるごとに国に改善を訴えてきました。そのかいあって、2009年の介護報酬改定ではリハビリ単価が4倍に上昇しました。これほどの増額は過去に例がなく、老健を所管する厚生労働省の大英断だったと思います。これにより老健の経営者がセラピストを雇用しやすくなったのはもちろん、働く立場にとっても、それまで病院などでもらっていたお給料と遜色ない額を保証されるようになりました。

――セラピストが老健で力を発揮できる環境が整ってきたのですね。

はい。実際に老健のリハビリ職は右肩上がりで増え続け、2013年度には定員100人当たりの常勤従事者が全国平均で3.6人に達しています(※2)。私が経営する老健にもリハビリ職が16名います。そのうち訪問リハビリの専従者が4名なので、通所リハビリと入所者の方を合わせて約140名に12名のセラピストが対応しています。私としてはこのくらいが適正人数だと思いますので、まだまだ全国的にも増えてほしいですね。

老健が目指すのは「在宅支援」

――本来の目的である在宅復帰に向けた、リハビリ職の働き方を教えてください。

その前に間違ってほしくないのは、老健は決して在宅復帰のみが目的ではないという点です。「老健」イコール「在宅復帰のための施設」という言い方をよくされますが、老健が行っているのは「在宅支援」です。

いま老健はさまざまな形で利用されています。たとえばすでに在宅で介護を受けている方が、月のうち1週間ほどショートステイされる。あるいは通所リハビリに通ってお風呂にも入れてもらう。基本は在宅ですが、老健でのリハビリにより身体機能も維持できますし、ご家族など介護される人にもリフレッシュする時間がもたらされます。

またなぜか男性に多いのですが(笑)、老健に行くのが億劫だという人や、通うのが困難だという人には訪問リハビリがあります。これらはできるだけ長くご自宅で生活するための支援で、在宅復帰には当たりません。在宅復帰は在宅支援の中に含まれるもので、老健は広く在宅支援を行っている施設だとご認識ください。

――わかりました。医療機関との違いもお聞かせください

病院における急性期から回復期までのリハビリは、病気によって引き起こされた何らかの機能障害に対して行うものです。脳卒中であれば麻痺を少しでも回復させること、心筋梗塞であれば循環器のリハビリ、骨折ならその後の歩行訓練と、「疾病」に合わせたリハビリが求められます。一方、老健では、容態は落ち着いているけれど、まだ不自由なことが多かったり、少し認知症が入ったりと、「生活」の面で安定していない人に対して、日々の生活が成り立つリハビリを行います。簡単に言うと病院は「病気」に近く、老健は「実生活」がキーワードになるリハビリということです。

 そして老健で働く人は、この「生活」に関わる部分にとても魅力を感じているようです。私の施設でも面接で医療機関出身の人に志望理由を尋ねたところ、「(病院で)リハビリを担当した患者さんが、後にどんな生活を送っているのか、まったく見えないのがもどかしい。その人の毎日の生活を見ながらリハビリをやってみたい」と言われることが少なくありません。要するに老健のリハビリは、生活に密着した“最前線”なのです。 

 老健を取り巻く社会状況や制度が変わり、現場の様子が知られるにつれ、「老健のリハビリって面白い」と意識するセラピストが増えてきたなと感じています。実際、5年ほど前から私の施設では医療機関からの転職希望者が目立って多くなりました。

【注釈】

  1. ※1老人保健施設は1986 年の老人保健法改正に基づき創設された。2000 年の介護保険制度施行により、新たに介護保険法に基づいた「介護老人保健施設」となった。
  2. ※2「厚生労働省:介護サービス施設・事業所調査」より

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